10月25日、PCMagが「AI Has Ushered In the Era of Personalized Software, and Honestly? I'm Excited」と題した記事を公開した。著者Ruben Circelliは、AIコーディングツールが非エンジニアにもソフトウェア制作の扉を開いたと主張しつつ、「何をAIに任せてはいけないか」という警告を同時に発している。熱狂的な礼賛でも全否定でもない、実体験に根ざした論考だ。
バイブコーディングで「自分だけのソフト」が現実になった
記事でCircelliが注目するのは、AIチャットボットや画像生成といった目に見えやすい活用ではなく、AIコーディングツールがソフトウェア開発そのものを変えつつあるという変化だ。
彼が「パーソナライズドソフトウェア」と呼ぶのは、AIモデルを使ってアプリを制御・作成・カスタマイズした成果物全般を指す。具体例として挙げられているのは以下のようなものだ。
- Safariで自然言語を使って拡張機能を作成する(コードを書かずに)
- Windowsの10年来のバグを午後一つで修正するためのアプリをバイブコーディングで実装
- AIモデルを使ってゲームをデコンパイルし、UnchartedシリーズのPC版を有志が作成(Sonyは公式PC版を販売していない)
※UnchartedのPC版作成については、ゲームのデコンパイルや改変が著作権法上グレーゾーンとなりうる行為である点に注意が必要だ。元記事はその実現可能性を紹介しているが、読者は法的リスクを十分に理解した上で参照してほしい。
中でも著者が最も効果を実感しているのはゲーミング領域だ。以前なら「不満なゲームの挙動があっても諦めるか、誰かが作ったMODを探すだけだった」が、今は**ChatGPTやClaudeに短いプロンプトを送るだけで、数分で自分好みのMODが完成する**という。著者自身、ValheimのカスタムMODをいくつか自作して実際に使っている。
バイブコーディング(vibe coding)とは、設計図や詳細仕様を書くのではなく、「こういう動きをしてほしい」という雰囲気(vibe)でAIに指示してコードを生成させる手法で、2025年ごろから広まった開発スタイルだ。Andrej Karpathyが提唱したとされるこの概念は、プログラミング未経験者がソフトウェア制作に参入するハードルを大きく下げた。
「自作ソフト」の現実:メンテナンスは自己責任
ただし、カスタムソフトには相応のコストが伴う。著者はこれを「レストランで同じ料理を頼む」のではなく「自分好みに完璧なレシピを調整する」行為に例える。
実際に著者が経験した課題は次の通りだ。
- マルチモニター+サラウンドサウンドの切替を自動化するユーティリティを自作したが、バグが発生するたびに自分でパッチを当て続けなければならない
- ValheimのカスタムMODは、ゲームのアップデートやMOD追加のたびに競合確認が必要
- UnchartedのPC版は「物理ディスクをダンプする」などの手間のかかる手順が必要で、Steamのように「クリックして起動」とはいかない
さらにデータ品質の問題も指摘する。AIが生成したアプリがウェブ上の情報をソースとする場合、その情報の正確性はユーザー自身が検証しなければならない。AIはファクトチェックを代替できない。
任せてはいけない領域がある
著者が最も強く警告するのが、セキュリティ系ツールへのバイブコーディングの適用だ。
「パスワードマネージャーをバイブコーディングで作った人たちがいる。使うべきではない。セキュリティユーティリティは、AIで構築するべき最後のもののはずだ」
リンクは意図的に掲載していないとのことで、著者はこれを「公開処刑ではない」と断りつつも、強く否定している。元記事のトーンとしては「絶対禁止」という断定というより、「強い警告」として位置づけている点は補足しておく。
パーソナライズドソフトウェアの最大の落とし穴は、「何を作るべきか・何をAIに任せるべきでないか」の判断にある、というのが著者の結論だ。セキュリティ分野においては、脆弱性の見落としが直接的な被害につながるため、熟練した専門家によるレビューが不可欠であり、バイブコーディングで生成したコードはその審査を通過できる保証がない。
著者の立場:AIエバンジェリストではない
著者はAIの環境・倫理・法的問題については本記事では扱わないと明言した上で、「ソフトウェアの世界においては、AIのメリットは実質的に無限に近い」と述べる。
一方で「すべての製品にAIを詰め込もうとする企業のトレンドは好きではない」とも語っており、バランスの取れた立場を維持している。推奨するのは、「常にプロの開発者が維持管理するアプリを優先し、自作や改造はそれが本当に必要な場合に限る」という姿勢だ。
また、元記事ではAIによって実現した無料・オープンソースのPhotoshop代替プロジェクトにも言及があり、サブスクリプション費用に疲れたユーザーには追う価値があると述べている。なお、元記事に登場するプロジェクト名については、本紹介記事の執筆時点で正確な名称の確認が取れなかったため、固有名詞の記載を控えた。詳細は元記事で直接確認してほしい。
詳細はAI Has Ushered In the Era of Personalized Software, and Honestly? I'm Excitedを参照していただきたい。