10月21日、IT Brief Newsが「Grafana adds AI agent tools & observability updates」と題した記事を公開した。この記事では、Grafana LabsがAIエージェントによる異常検知・診断・修正提案をひとつのワークフローに統合した新機能群を発表したことを詳しく伝えている。
AIエージェントがアラートの「隙間」を埋める——Assistant Watchers
今回の発表で最も実用的なのが、Assistant Watchersだ。
従来のアラートは「閾値を超えたら通知する」というルールベースが主流だった。しかしこのアプローチでは、あらかじめ想定していない異常——例えばメトリクスが閾値を超えてはいないが、徐々に傾向が変化しているケース——を見逃しやすい。Watchersはその隙間を埋めるために設計された、常時稼働型のAIエージェントだ。
ユーザーは「何が重要か」を自然言語で記述するだけでよい。Watchersがテレメトリデータを継続的に監視し、変化を検出した際にGrafana Alerting経由で通知する。さらに重大な検出はInvestigationを自動トリガーし、より深い自動調査へとつなげることができる。
※編集部の考察:元記事ではWatchersの検知ロジックの詳細は明示されていない。「学習」という表現が使われているが、MLベースの機械学習なのかルールベースの拡張なのかは現時点で確認できない。機能の本質は「閾値を定義しなくてもよい常時監視」という点にある。
閾値アラートとの「代替」ではなく「補完」として位置づけられており、既存の監視体制を崩さずに導入できる設計になっている。
修正案まで出す——Grafana Managed Sandboxes
もうひとつ注目すべき機能が、Grafana Managed Sandboxes(パブリックプレビュー)だ。
Grafana Assistantに対して、リポジトリのコードと本番テレメトリの両方にアクセスできる隔離されたクラウド環境を提供する。エージェントはここで本番の挙動を文脈としてコードを調査し、修正案を準備してプルリクエストを開く。最終的な適用は人間が判断する、という設計だ。
Grafana LabsのAI担当シニアディレクター Mat Ryerは次のように述べている。
「チームはエージェントにより多くの作業を任せたいが、各ステップで根拠とコントロールが必要だ。Watchersが問題の兆候を浮かび上がらせ、Investigationsが診断し、Managed Sandboxesが修正案を準備して人間のレビューに回す。これらが合わさることで、検出・診断・提案アクションがひとつのワークフローになる」
AIエージェント自体を監視する——Agent Observability with OpenTelemetry
AIが運用に関与するようになると、「そのAI自体がちゃんと動いているか」を監視する必要が生じる。Grafanaはここにも手を打った。
Agent ObservabilityがOpenTelemetryサポートを伴い、一般提供(GA)となった。エージェントが何をしているか、コストはいくらか、挙動がどう変化しているかを、既存のOpenTelemetry準拠のオブザーバビリティ基盤と同じ方法で可視化できる。
OpenTelemetryはCNCFが管理するオブザーバビリティのオープン標準で、すでに多くの組織がログ・メトリクス・トレースの収集に採用している。AIエージェントの監視をこの標準に乗せることで、既存ツールとの統合コストを下げられる。Grafana自身もOpenTelemetry Collectorとの統合を既存製品で提供しており、今回の機能はその延長線上に位置づけられる。
採用状況の実態——「読み取り専用なら安心、自律修正はまだ怖い」
Grafanaが実施したITおよびエンジニアリングリーダー300名のサーベイの結果が、現場の温度感をよく示している。
- AIによるオブザーバビリティをパイロット以上の段階まで進めている: 68%
- 読み取り専用の調査には抵抗なし: 85%
- 完全自律での修復に抵抗なし: 52%
「見るだけなら任せる、直すのはまだ人間が判断したい」という空気感は多くのエンジニアが共感できるところだろう。Managed Sandboxesがプルリクエスト止まりの設計にしているのも、この心理に合わせた判断とみられる。
また同サーベイでは、組織の80%がLLMベースの機能を構築・運用していると回答。一方で45%がオープンソースツールの組み合わせでAIオブザーバビリティを構築しており、目的特化のプロダクトを使っているのは25%にとどまる。
ユーザー事例——15〜20分の調査が5分に
ID管理セキュリティ企業SailPointのシニアスタッフDevOpsエンジニア Juan Carlos Ramirezは、Grafana Assistantを使った体験をこう語っている。
「Grafanaに質問を投げてタブを開いたまま他の作業をして、Slackを確認してコーヒーを取りに行って戻ってくると、調査が完了している。以前は15〜20分かかっていたログのスパイク調査が、5分ほどに短縮された。しかも並行して別の作業ができている」
Grafanaが引用するIDCの調査によれば、Grafana CloudのAIツールを使った顧客はMTTR(平均修復時間)を63%削減し、オンコールシフトのうちコンテキスト収集に費やす時間を46%削減したとされる。
そのほかの発表——Grafana Pages
今回の発表には、Grafana Pages(プレビュー)も含まれている。
これは標準ダッシュボードよりもレイアウト制約の少ない可視化機能で、既存のビジュアライゼーションコンポーネントをそのまま利用しながら、より自由なページ構成を実現できる。従来のGrafanaダッシュボードはグリッドベースのレイアウトが前提だったが、Grafana Pagesはその制約を緩和し、レポートや社内向けドキュメントに近い形式での情報提示を可能にする。AIエージェント系機能とは直接連携するものではないが、オブザーバビリティの「伝え方」を拡張するという文脈で位置づけられる発表だ。
詳細はGrafana adds AI agent tools & observability updatesを参照していただきたい。