10月26日、Ars Technicaが「Tesla wants AI and software to be its next profit engine」と題した記事を公開した。TeslaがEV販売から脱却し、AIと自律走行ソフトウェアのサブスクリプションを次の収益源に据えようとしている戦略転換について詳しく紹介されている。
FSDサブスクが「車を売るより儲かる」可能性
Teslaの「Full Self-Driving(FSD)」は、その名称に反して現時点ではドライバーが常時監視を続ける必要がある「監視付き自律走行支援」だ。自動車業界の自動化レベル区分(SAEのレベル0〜5)で言えばレベル2相当に位置づけられ、レベル3以上の「条件付き自動化」とは区別される。それでも収益構造における位置づけは急速に変わりつつある。
米国での月額料金は99ドル。北米で販売される新型Teslaのうち、FSD付きの割合は75%超に達し、グローバルのアクティブFSDサブスクリプション数は170万件と、前年比67%増で伸びている。
テック系アナリストのDan Ives(Wedbush Securities)は、FSDがすでにTeslaの事業セグメントの中で最も高マージンであると指摘する。現状のFSD普及率はグローバル顧客ベースの**10〜15%にとどまるが、これが50%**まで拡大した場合の効果について、こう述べている。
「FSDから1ドルの収益を得ると、市場はそれを実際の車を売って得た1ドルより50〜70%高く評価する。年間5〜10万台を追加販売するより、FSDの展開拡大の方が財務モデルへの貢献は大きい。」
これは「利益」の絶対額の比較ではなく、株式市場がFSDの収益1ドルをどう評価するか(株価への織り込まれ方)の話である点に注意が必要だ。Teslaはセグメント別のFSD売上を開示していないが、Ivesはこの技術が「Teslaの財務モデル全体を変革する可能性がある」と見ている。
EV販売は伸び悩み、目標は大幅修正
Teslaはかつて「2030年までに年間2000万台販売」を掲げていたが、この目標はすでに500万台に下方修正された。2024年の実績は160万台であり、500万台でさえ相当に高いハードルだ。
BYDが年間EV販売台数でTeslaを抜き去った現在、Muskは「自律走行技術では中国勢に先行している」と主張している。競合FSDシステム「XNGP」を持つXpeng(小鵬汽車)はEU当局との認可取得を急いでいるが、Tesla側もオランダなど欧州数カ国では監視付きFSDの承認を得ており、EU全体への展開を求める加盟国投票が12月まで延期されている状況だ。
SpaceXとの合併構想が浮上
今月話題を集めたのが、MuskによるTeslaとSpaceXの合併検討の示唆だ。合併が実現すれば、素材研究・AI・製造の統合加速、チップなどの重要部品調達コストの削減が期待できるとされる。あるTesla大株主(上位15名に入る)は合併を支持し、「SpaceXで起きているAI関連のイノベーションをTeslaが享受できる」と述べている。
一方で懸念も根強い。ある業界観察者はこう指摘する。
「MuskはSpaceXとTeslaで驚異的な成果を上げてきた。だが事業を統合することで、それぞれの未来が彼の最も投機的な賭けに縛られるリスクがある。AIでの躓きがグループ全体に波及し、本来は強固な事業が危険にさらされることが懸念される。」
William Blair(証券会社)のアナリスト、Jed Dorsheimerによれば、合併が株主・規制当局の承認を経て実現した場合、Muskが合併後の企業の50%以上を支配できる可能性があるという。
業界全体への波及
Teslaの動きは競合他社の戦略にも影響を与えている。GMはTesla出身のSterling Andersonを採用して完全自律走行車の開発を主導させており、BMWやMercedes-BenzはQualcommやNvidiaと組んで「レベル2プラス」の運転支援システムを開発中だ。VolvoのCEO、Håkan Samuelssonは「西側での自律走行開発ではTeslaがおそらくリードしている」と認めつつ、NvidiaとのドアツードアAI自動運転を「近い将来の新型Volvoに搭載する」と述べている。
中国・韓国・日本・欧米の主要メーカーがこぞって自律走行とロボティクス、エネルギーストレージといった新収益源に動いている構図は、EV普及が一巡しつつある今、業界の次のフェーズが明確になってきたことを示している。
詳細はTesla wants AI and software to be its next profit engineを参照していただきたい。