10月26日、CSS-Tricksが「CSS-Tricks has a new owner!」と題した記事を公開した。
フロントエンド開発者に長年親しまれてきた情報サイト「CSS-Tricks」が、クラウドインフラ企業DigitalOceanの傘下を離れ、再び独立サイトとして再出発する。新オーナーはなんと、CSS-Tricksで12年間働いてきたスタッフ(名前は公表されていない)だ。外部資本への売却ではなく、サイトをよく知る内部の人間が買い取ったという点で、コミュニティからの関心を集めている。
CSS-Tricksのこれまで
CSS-Tricksは2007年にChris Coyierが創設し、CSSやHTMLに関する実践的な知識を提供するサイトとして成長してきた。MDN Web DocsやSmashing Magazineと並び、フロントエンド開発者が長年参照してきた情報源の一つである。2022年にDigitalOceanがChrisから買収し、以来DigitalOceanの傘下に置かれてきた。しかし買収後はChrisがサイトの運営から離れ、更新頻度の低下や方向性への不安を示す声がXやBlueskyで散見されるようになっていた。
そして今年(2026年)、同サイトは再び個人オーナーの手に渡ることになった。
何が変わるのか
新体制での主な変更点は以下の通りだ。
記事本数は「質重視」に絞る。 週に1〜2本程度を目安にするとしている。ただしゲスト寄稿フォームは復活しており、外部ライターからの投稿を受け付ける。なお、AIで生成した低品質コンテンツ(原文では「slop」=粗悪な自動生成記事を指す俗語)の投稿は受け付けないと明言している。
広告モデルへの回帰。 DigitalOcean傘下以前のモデルに戻り、ディスプレイ広告・スポンサード記事・ニュースレタースポンサーを再開する。収益源は広告だけに限らず、メンバーシップ制度(Discordコミュニティへの参加など特典付き)やグッズショップも立ち上げている。
ニュースレターの復活。 長期間休止していたニュースレターを再開する予定だ。
初心者向けコンテンツの強化。 これが今回の路線変更で最も大きな方向転換だ。CSS-Tricksはこれまで「すでにある程度わかっている人向け」の性格が強かったが、新オーナーはHTML/CSSの入門コースを開発中であり、学習の入り口を広げる姿勢を明確にしている。
元記事によれば、フロントエンド分野でスキルギャップが拡大しつつあるという現状が背景にある。AIの台頭によってエントリーレベルの仕事が変容し基礎を学ぶ重要性が増す一方、フロントエンド系の教育コンテンツ市場は全体的に低迷しているという。CSS-Tricksはそのギャップに応えようとしている。
新オーナーの姿勢
新オーナーは自身の役割を「ライター」ではなく「パブリッシャー(publisher)」と位置付けている。自分がコンテンツを大量に書くのではなく、他のライターが声を持ち、それを発信できるプラットフォームを作ることが最優先だと述べている。
「最も重要な責務は、ライターが声を育て、その声を使えるステージを提供すること。そして彼らが読者の仕事を少しでも良くする手助けをすること。」(筆者訳)
サイトをよく知るスタッフが新オーナーとなり、外部資本から切り離して運営する体制は、コミュニティ主導の独立メディアとして機能できるかどうかの試金石にもなる。技術メディアの独立性をめぐる議論が続く中、CSS-Tricksの再出発は一つの注目すべき事例だ。
詳細はCSS-Tricks has a new owner!を参照していただきたい。