10月25日、The Decoderが「Nvidia open-sources Flora to make robot video labeling 125x cheaper than GPT-6 Astra」と題した記事を公開した。Nvidiaがロボット学習用ビデオのアノテーションコストを大幅に削減するオープンソースツール「Flora」を公開したというニュースで、最大の注目点はそのコスト差だ——OpenAIの最新フラッグシップモデルGPT-6 Astraが1時間あたり約88.50ドルかかる処理を、Floraはわずか72セントで賄う。125倍以上のコスト差でありながら、精度では上回る結果が出ている。
1時間72セント——GPT-6 Astra比125倍の価格差
ロボットAIモデルのトレーニングには、大量のビデオ映像にテキストアノテーション(注釈)を付ける作業が必要だ。Nvidiaの研究ラボ「GEAR」によれば、必要なラベルは3種類ある。
- 動作説明(いつ何が起きたかの記述。トレーニングデータの選別に使用)
- プロセス評価(ロボットが各ステップをどれだけうまく実行しているかの評価。強化学習に使用)
- タスク完了判定(タスクが成功したかどうかの判定。デプロイ時の監視に使用)
既存ツールの多くはこのうち1種類しか対応していない。GPT-6 Astra(OpenAIの最新フラッグシップ推論モデル)のようなLLMは複数をカバーできるが、コストが高すぎて大量のビデオには実用的でなかった。
Floraはこの3種類すべてに対応する。Nvidiaが試算したコストは、ビデオ1時間あたり約72セント。GPT-6 Astraの約88.50ドル、Claude Opus 5(Anthropicの最上位モデル)の約42ドルと比較すると、差は歴然だ。
なお、「約72セント」はGPU時間を1時間10ドルで借りると仮定した試算値であり、実測値ではない点は留意が必要だ。円換算は為替レートによって変動するため割愛する。

Floraはアノテーション品質57.1%を$0.72/時間で達成。GPT-6 Astraは53.7%で$88.49/時間。 | 画像: Nvidia
3つのQwen3.5ファインチューンモデルで構成
Floraの内部は3つのモデルから成る。
- 9Bモデル(セグメンター): 動画を動作単位のセグメントに分割
- 27Bモデル(キャプショナー): 前後の文脈を考慮しながら各セグメントを言語記述
- 27B Flora-Rewarder: プロンプトに応じて3役を担う——エピソード成功度を1〜5でスコアリング、0.5秒単位のステップを「正常/非最適/失敗」に分類、自定義ルーブリック(評価基準)に基づくスコア付け
ベースはAlibaba製のQwen3.5をファインチューニングしたものだ。モデルはHugging Faceで公開されている。
Nvidiaによれば、すでにGR00Tモデルのトレーニングに実投入しており、512枚のGB300 GPUで1日最大20万時間分のビデオをアノテーションしているという。

セグメンテーションモデルとキャプショニングモデルがタイムスタンプ付き記述を生成し、リワードモデルが3種類の評価を出力する。 | 画像: Nvidia
強みと弱みはどこか
50本の動画を使ったNvidiaの評価では、Floraは推論フルモードのGPT-6 Astraをわずかに上回った。一方、公開ベンチマーク「WGO-Bench」では動作区間の検出精度で首位に立つが、総合スコアはAstraに劣り、純粋な記述精度はGemini 3.8 Flash(GoogleのGeminiシリーズの軽量・高速モデル)に負ける。
エピソード途中のエラー検出では差が開く。ロボットがボトルを倒しかけたが完全に倒せなかった場合、Floraは「部分完了」と判断して5点中3点を与えるが、Astraは1点しか付けない。
エピソード内の**失敗ステップの検出率はFloraが53.3%**。他のモデルはどれも11.7%以下で、Astraは1件も検出できなかった。ただし、Floraは正常なステップの約11%を誤って「エラー」と判定するという欠点もある。ルーブリックスコアリングとトラジェクトリ(軌跡)ランキングではAstraが依然リードしている。
定性的な例では、37個の参照動作があるビデオに対し、Floraは34個を検出したのに対しAstraは4個しか検出できなかった。一方、Floraが「布でナプキンを折りたたんでいる」と誤記述したケースもある(実際は「皿を拭いている」)。

あるエピソードではFloraが37中34の動作を検出、Astraは4件のみ。 | 画像: Nvidia
なお、Nvidia自身のベンチマーク「DenseCaptionBench」では、GPT-6 Astraが評価者(ジャッジ)も兼ねている。これはいわゆる「LLM-as-judge」と呼ばれる手法で、LLM自身に他モデルの出力を採点させるものだ。自社モデルや特定モデルの出力スタイルに近い回答を高く評価するバイアスが生じやすいことが知られており、研究者自身もこの問題を認めている。方法論上の限界として留意が必要だ。
戦略的文脈——Scale AIへの対抗とロボティクス垂直統合
NvidiaはFloraを、Scale AIのPhysical AI Data Engineのようなデータラベリング商用サービスへのオープンな対抗軸として位置付けている。
同社は以前から、ロボティクストレーニングデータの不足をシミュレーションと自動データ処理で補う取り組みを進めており、GTC 2026では自動的にトレーニングデータを準備・増幅・スコアリングするパイプラインを発表していた。Floraはそのパイプラインに詳細ラベルとリワードシグナルを追加するものだ。
同じ領域ではGoogleもGemini 4 Argon(ロボット用途向けに特化したGeminiシリーズのモデル)を投入しており、ロボット学習ビデオの作業ステップ検出と失敗検知に取り組んでいる。
詳細はNvidia open-sources Flora to make robot video labeling 125x cheaper than GPT-6 Astraを参照していただきたい。