10月22日、Pew Research Centerが「Men Are Experiencing More Job Growth Than Women in AI-Exposed Occupations」と題した記事を公開した。AIへの露出度が高い職種において男性の雇用成長が女性を大きく上回っており、その格差は学歴の低い女性に集中しているという調査結果だ。
AIが広がるほど、男女の雇用格差が開く
Pew Research Centerは、生成AI普及前(2017〜19年)と普及後(2023〜26年)の雇用データを比較。米労働省の職業情報ネットワーク(O*NET)と現在人口調査(CPS)を用いて480職種にAI露出スコア(0〜3.5)を付与し、スコア別の男女別雇用成長率を分析した。
結果は明確だ。AI露出スコアが1ポイント上がるごとに、男性の雇用は6.3%増加した一方、女性の雇用はほぼ横ばい(+0.2%)だった。
スコアの最低水準(0)と最高水準(3.5)を比較すると、男性の雇用成長は約24%の差が生じたのに対し、女性はスコアにかかわらずほぼ一定だった。逆に、AIへの露出が最も低い職種では女性の雇用成長が男性を上回っており、パターンが逆転している。
AI露出スコアとは何か
このスコアは「生成AIがその職種の主要タスクをどれだけこなせるか・補助できるか」を示す指標だ。Pew Research CenterはO*NETが職種ごとに定義するタスク情報をもとに、各タスクに対して生成AIがどの程度対応可能かを評価し、職種単位で集計・スコア化している。スコアが0だからといってAIと無縁というわけではなく、データ中で最も露出が低いことを意味する。
なお、このスコアはあくまで「技術的な親和性」を測るものであり、実際の雇用への影響を直接示す指標ではない点には留意が必要だ。企業がAIをどう導入するか、経営判断や産業構造の変化といった要素はスコアに反映されていない。
職種別のスコアは以下のとおり:
| AI露出レベル | スコア | 職種例 |
|---|---|---|
| 非常に低い | 0.49〜0.70 | トラック運転手、建設作業員、メイド |
| 低い | 0.80〜1.14 | 大工、小売販売員、訪問介護士 |
| 中程度 | 1.54〜1.66 | 医療助手、銀行窓口係 |
| 高い | 2.14〜2.36 | 裁判所書記、旅行代理店、校正者 |
| 非常に高い | 3.09〜3.20 | 会計士、ソフトウェア開発者、財務管理者 |
ソフトウェア開発者のスコアは3.10と最上位グループに属する。技術職がAIと高い親和性を持つことはある意味自明だが、それが雇用成長にどう転ぶかは、この調査が示すように単純ではない。
格差の本質は「学歴」にある
この調査で特に目を引くのは、学歴別に見ると男女格差の構造がまったく異なる点だ。
- 高卒以下:AI露出スコアが1ポイント上がるごとに、男性の雇用は**+8.8%、女性は−9.5%**。格差は約18ポイント。
- 一部大学教育あり(短大・中退含む):男性+3.6%、女性−6.0%。格差は依然として大きい。
- 学士号以上:男性+0.8%、女性+0.7%。格差はほぼ消える。
つまり、AIによる雇用格差の問題は、大卒者よりも非大卒の女性に集中している。
Pew Research Centerはその構造的な理由を次のように分析している。大卒未満の男性は建設業やトラック運転といったAIスコアの低い職種に集中しているため、高露出職種での成長はごく一部の話に留まる。一方、大卒未満の女性は受付、秘書、カスタマーサービス担当といったAIスコアが中〜高の職種に多く就いており、チャットボットや自動化ツールの影響をより直接的に受ける立場にある、というのが同センターの見立てだ。
因果関係への留保
調査は「AIが直接雇用に影響した」と断言していない。2017〜19年と2023〜26年の比較であり、この期間には生成AI以外の要因(景気変動、産業構造の変化など)も雇用に影響している可能性がある。また、2020〜22年のコロナ禍の期間はデータから除外されている。
ただ、傾向は明確だ。生成AIの普及タイミングと重なる形で、AI露出度の高い職種での男女雇用成長の乖離が拡大している。
Pew Research Centerは同週、関連レポート「The Gender Gap in AI」も公開しており、AIをめぐる男女差の実態を多角的に分析している。
詳細はMen Are Experiencing More Job Growth Than Women in AI-Exposed Occupationsを参照していただきたい。