10月22日、PYMNTSが「Anthropic Could File IPO Paperwork as Soon as Friday」と題した記事を公開した。AIスタートアップAnthropicが、IPO申請書類を最短今週金曜日にも公開提出する見通しであることが明らかになった。評価額は保守的な試算でも1.2兆ドル(約186兆円)、楽観的なシナリオでは2兆ドル(約310兆円)に達する可能性があり、SpaceXを超える史上最大規模のIPOとなるか、AI投資家の視線が集まっている。
Anthropicとは
Anthropicは2021年、OpenAIの元幹部であるDario Amodei・Daniela Amodei兄妹らによって設立されたAI安全性研究企業だ。主力製品はLLM(大規模言語モデル)ベースのAIアシスタント「Claude」で、ChatGPTを擁するOpenAIの最有力競合として知られる。GoogleやAmazonから大規模な戦略的出資を受けており、AI企業の中でも特に注目度の高いプレイヤーの一つだ。
最短10月23日(金)にS-1を公開提出へ
Yahoo Financeが関係者3名の情報として報じたところによると、Anthropicは**S-1目論見書(S-1 prospectus)**を早ければ10月23日(金)に公開提出する予定だ。
S-1とは、米国で株式上場を目指す企業がSEC(米国証券取引委員会)に提出する登録申請書類で、財務状況・リスク要因・事業概要などを開示することが義務付けられている。Anthropicはすでに6月に草案をSECへ機密扱いで提出しており、SEC規則上、公開提出から投資家への営業開始まで最低15日間のインターバルが必要となる。今週中に公開提出が行われれば、11月中の上場が現実的な日程となる。同社はThanksgiving(感謝祭、2026年は11月26日)前の取引開始を目指しているとも報じられている。
評価額の試算幅は1.2兆〜2兆ドル — 数字の読み方に注意
Wall Street Journalの報道によると、Anthropicの2026年上半期の売上高は163億ドル(約1.63億ドル=$16.3B、日本円換算で約2.5兆円)に達した一方、純損失は800億ドル超($80B超)を記録した。なお本記事中の金額はすべて米ドル表記であり、日本円ではない点に注意されたい。
ただし、この損失の大部分(720億ドル)は、転換社債(株式に転換可能な債券)に関連する会計上の評価損であり、実際のキャッシュアウトを伴う営業損失とは性質が異なるとPYMNTSは指摘している。
直近の第3四半期には売上高が168億ドル(前四半期比:115億ドルから増加)となり、調整後ベースでは黒字化を達成したとAnthropicは投資家に伝えている。
ウォール街の予測では、今回のIPOで最大1,000億ドルの調達、評価額は最大2兆ドルに上る可能性があるとされる。一方で、一部の投資家はより保守的な1.2兆ドル前後の評価額を検討しているとも元記事は報じている。タイトルで強調した「2兆ドル」はあくまで楽観シナリオの上限値であり、保守的試算との乖離は約8,000億ドルに及ぶ点は留意が必要だ。
SpaceXを超える「史上最大のIPO」になるか
元記事によると、今回のAnthropicのIPOはSpaceXが2026年6月に実施したIPOを上回る規模になると見込まれており、AI業界への投資家の熱量を測る重要な試金石として広く注目されている。
ただし、IPO市場全体の環境は楽観視できない状況だ。韓国のデータセンター企業Eliceは初値で32%下落し、Nvidia出資のFirmus Gridは上場計画を撤回した。AI関連への重課金に対し、投資家が慎重姿勢を強めつつある局面でのIPO挑戦となる。
OpenAIとの競争、小売向け戦略も加速
PYMNTSの過去の報道によれば、AnthropicはOpenAIとの収益格差を縮めており、2四半期連続で調整後黒字を達成している。また9月には、VisaおよびMastercardと連携してClaudeを活用した小売向けAIショッピングエージェントの構築を支援するブループリントを発表した。
事業面での進展と、依然として大規模な会計上の損失という二面性が、今回のIPOにおける投資家評価の焦点となりそうだ。
詳細はAnthropic Could File IPO Paperwork as Soon as Fridayを参照していただきたい。