10月22日、Search Engine Journalが「Google CEO Sundar Pichai Views Search Absorbed Into Agentic Layer」と題した記事を公開した。GoogleのCEO Sundar PichaiがAIエージェント層をSearchに深く統合するビジョンを語ったインタビューを詳しく紹介した内容だ。Pichaiが語っているのは「検索の終焉」ではなく、エージェント層がSearchやGeminiを透過的に束ねることで生まれる新しい統合体験である。
PichaiのビジョンはSearch×Gemini×エージェントの"一元化"
Pichaiが繰り返し強調したのは、「エージェント層(agentic layer)が、複数のGoogle製品を束ねる統合インターフェースになる」という考え方だ。SearchとGeminiを別々に融合させるのではなく、エージェントがその上に乗ることで自然に一元化が起きる、というのが彼の見立てである。
ここでいう「エージェント層」とは、ユーザーの意図やコンテキストを保持しながら、複数のサービスやAPIをまたいでタスクを自律的に実行するAIの仕組みを指す。単一の質問に答えるだけのチャットボットとは異なり、複数ステップの処理を連続して行える点が特徴だ。
インタビュアーのAlex Heathが「SearchとAI Overviews、Geminiはいつか完全に統合されるのか」と直接問うと、Pichaiはこう答えた。
「エージェントたちが、それらのプロダクトを横断した統一体験を提供することになると思う。エージェント層は、異なるプロダクトを収束させようと考えるより、自然にそれをやり遂げてしまう。エージェントはクラウドで24時間365日動いていて、あなたのコンテキストを持っている。あるところでタスクを始めて、別のところに移っても、エージェントがそのコンテキストを引き継ぐ。」
この発言は、Google内部での製品統合の議論が「プロダクトのマージ」という発想から「エージェント層による透過的な統合」へとシフトしていることを示している。
なお、「AI Overviews」はGoogleの検索結果ページ上部にAIが生成した要約を表示する機能で、従来のブルーリンク型検索結果に代わる新しい情報提供形式として段階的に展開が進んでいる。
検索クエリが「タスク指向」に変化している
Pichaiがこのビジョンの根拠として挙げたのは、実際の利用データだ。Geminiのクエリを分析すると、「質問に答えてもらう」タイプではなく「エージェントに何かを実行してもらう」タイプのクエリが着実に増加(steadily increasing)していると述べた。
「Geminiで人々が何をしているかを経験的に見ると、すでにトレンドが見えている。エージェント的なクエリの割合は継続的に増えている。」
Googleはこの傾向を受け、エージェント機能を「Search上でかなり深い形で」提供する方針を明言した。現時点ではUltraおよびProユーザー向けに限定提供しているが、今後数か月で広く展開するとしている。
エンタープライズと一般ユーザーは「同一基盤」
Pichaiは、エンタープライズ向けと一般消費者向けでモデル・ハーネス・ランタイムは同一だと述べた。違いはコンテキスト(業務か個人か)だけという位置づけだ。
エンタープライズ向けには、タスクごとにマイクロVM(Micro VM)をプロビジョニングしてセキュアに実行する仕組みが採用されている。マイクロVMとは、タスク単位で極めて軽量な仮想マシンを起動し、処理の隔離とセキュリティを確保する技術で、AWSのFirecrackerなどが同種の実装として知られている。これに加え、リアルタイム監視や監査可能性(auditability)も提供しており、同じ水準のセキュリティをコンシューマーにも展開するとしている。
また、Google Spark(CloudベースのパーソナルエージェントでSearchおよびChromeと連携する機能)が、この方向性の具体例として言及された。Google Sparkは2025年のGoogle I/O(2025年5月開催)で発表されたプロダクトだ。Pichaiはこれを「one box」という言葉で表現している。チャットとタスク実行が一つの入力窓に統合されるイメージだ。
Webのトラフィック構造への影響
Pichaiの発言が示す未来では、ユーザーがSearchのリンクをクリックしてWebサイトを訪れるより、エージェントがタスクを代行する形が主流になる可能性がある。SEOやパブリッシャーにとって、この変化の意味は小さくない。
元記事の執筆者は「エージェント層には、人間によるリファラルトラフィックの居場所があるのか」という問いを残している。これはSEO業界全体が直面している問題でもある。
※編集部の考察:Pichaiが強調しているのは検索の「消滅」ではなく、エージェント層を介した「再編」だ。ユーザーの意図を解釈してタスクを実行するエージェントが前面に出ることで、Webサイトへの直接的なアクセスは減少する一方、エージェントが参照するデータソースの質や信頼性がこれまで以上に重要になるとも読める。パブリッシャーにとっては、クリックを獲得する戦略から、エージェントに参照される情報を提供する戦略への転換を迫られる局面かもしれない。
詳細はGoogle CEO Sundar Pichai Views Search Absorbed Into Agentic Layerを参照していただきたい。