10月22日、Tom's GuideがAmanda Caswellの署名記事「Google DeepMind's Demis Hassabis predicts AGI by 2028」を公開した。この記事では、Google DeepMindの共同創業者Demis HassabisがAGI(汎用人工知能)の到来を2028〜2029年と予測し、従来より見通しを大幅に前倒ししたことについて詳しく紹介されている。
タイムラインが急速に縮んでいる
Hassabisの予測は、ここ数年で急速に前倒しされている。
- 2025年12月:AGIまで5〜10年と発言(Axios)
- 2026年5月:2030年ごろ、あるいはそれより早い可能性と示唆(Axios)
- 2026年10月:Wall Street Journal Magazineのインタビューで2〜3年以内、つまり2028〜2029年と明言
「もうすぐだ。どんどん近づけて更新している(It's soon. I'm updating nearer and nearer)」と語った。
Hassabisは2024年にノーベル化学賞を受賞している。タンパク質の立体構造予測AIであるAlphaFoldの開発が受賞理由だ。現在はGeminiをはじめとするGoogleの主要AIモデルの開発を主導する立場にある。
タイムラインを前倒しした背景の一つとして、Hassabisは自律エージェントの進化を挙げている。従来のチャットボットとは異なり、ツールを使いながら複数ステップのタスクを自律的に実行するAIエージェントが急速に実用化されつつある。Google I/O(2026年5月)の後、彼はAxiosに「今日のAIエージェントはAGIに向けた練習台だ」と語っている。
また、自身の発言の一部には、政府や経済界、一般市民に対してAGIの接近を真剣に受け止めさせるという意図もあったと認めている。
何がまだ足りないのか
ではなぜ、AGIが間近とされながら、現在のAIはいまだ単純なタスクでつまずくのか。
Hassabisは2026年4月のY Combinatorとのインタビューで、研究者が解決すべき課題を3つ挙げた。
1. 継続的な学習(Continuous Learning)
人間は新しい経験から学び、それを将来に活かせる。だが現在のAIモデルは、新しい情報に接したからといって自動的に内部知識を更新するわけではない。
2. メモリ(Memory)
コンテキストウィンドウがいくら大きくなっても、長い会話や複雑なタスクの中で重要な情報を見失ったり、複数の文脈をつなぎ合わせることに苦労する。
3. 推論(Reasoning)
高度な数学問題を解いたり洗練されたコードを書いたりできる一方で、基本的な論理の誤りを犯したり、誤答を自信を持って出力したりする。
試験で高スコアを取れるAIが、必ずしも人間レベルの知性を持つわけではない——Hassabisはそう釘を刺している。
なお、AGIの定義自体は研究者・組織によってばらつきがあり、Hassabisが指す「AGI」が具体的にどの水準を指すかは、Google DeepMindが公開しているAGI進捗フレームワークを合わせて参照すると理解が深まる。
AGIが実現したとき、何が変わるのか
現在のAIアシスタントとAGIの最大の違いは柔軟性だ。
今はChatGPTで旅行計画、Geminiでメール要約、Claudeで文書作成、という具合に用途ごとに使い分けている。これらのツールは強力だが、監視が必要で、誤りも起こす。
AGIは訓練時に習得したパターンに頼るだけでなく、未知の問題にも適応できる広範な知的タスクを扱える可能性がある。Hassabisが例示したように、「家族旅行の計画から価格比較、スケジュール調整、予約まで一括で任せられる」AIだ。
医療分野ではドラッグディスカバリーの加速や、有望な新薬候補の発見への貢献も期待されている。
ただし、雇用・プライバシー・セキュリティ、そして自律度の高いAIが誤った判断を下した場合のリスクについても、正当な懸念があるとHassabisは認めている。AGIの到達を判定する普遍的なテストはまだ存在しない。
「2028年」予測の重さ
AGIの到来を数年以内と予測するAIリーダーはHassabisだけではない。OpenAIのSam Altmanも近い時間軸に言及しており、AIをめぐる予測の前倒しは業界全体に広がる傾向だ。だが、Hassabisの発言が持つ意味は、その立場の重さにある。世界で最も高度なAIシステムの一つを実際に開発してきた人物が、具体的な年数を口にした。
2028年まで約1年数ヶ月となった今、その見通しが正しいかどうかは間もなく明らかになる。
詳細はGoogle DeepMind's Demis Hassabis predicts AGI by 2028を参照していただきたい。