10月23日、The Decoderが「Google's Agent Compute Engine gives every Gemini agent its own hardware-isolated micro virtual machine」と題した記事を公開した。Googleが発表した「Agent Compute Engine」は、AIエージェント専用のハードウェア分離型マイクロVM基盤だ。1台のサーバーに従来比10倍のエージェントを収容し、20万エージェント規模のテストでサスペンド・レジュームを500ms未満で完了するという性能を示している。AIエージェントの大規模運用における密度・速度・コストの三つの課題を同時に解こうとする取り組みだ。
エージェントごとにVMを持つ——なぜこれが重要か
AIエージェントをクラウドで大規模に動かす際のボトルネックの一つがVM(仮想マシン)のコストと起動速度だ。従来の仮想化では、多数のエージェントを同時に走らせるとリソース消費が膨らみ、アイドル時の無駄も大きい。GoogleはAgent Compute Engineでこの問題に正面から取り組んでいる。
Agent Compute Engineの核心は、各AIエージェントに専用の「マイクロVM(microVM)」を割り当てる仕組みだ。マイクロVMとは、従来の仮想マシン(KVM/QEMUベースのフルVMなど)と比較してカーネルや周辺機能を最小限に絞った軽量な仮想化単位を指す。代表的な実装としてはAWSが開発しオープンソース公開しているFirecrackerが知られており、同様の思想でコンテナとVMの利点を組み合わせる設計が近年注目を集めている。GoogleのAgent Compute Engineもこうした潮流の上に位置する取り組みだ。
エージェントがアイドル状態になると自動でVMを一時停止してリソースを解放し、VM間で共有メモリを活用することで、1エージェントあたりの運用コストを削減する設計になっている。
Titaniumチップによるハードウェアレベルの分離
セキュリティ面では、各マイクロVMはGoogleのTitaniumチップで保護される。TitaniumはGoogleが独自開発したセキュリティチップで、クラウドインフラの信頼性を担保するために使われている。エージェントが複数の組織やユーザーのタスクを並列処理する環境では、VM間の分離はソフトウェアだけでなくハードウェアレベルで保証されることが求められる。Agent Compute Engineはこの要件をTitaniumチップによって満たす設計だ。
1サーバーに10倍のエージェント、500ms以下でサスペンド/レジューム
Google自身が公開した数値が技術的な実力を示す:
- 1台のサーバーに従来比10倍のエージェントを収容可能
- 20万エージェントを対象にしたテストで、サスペンドとレジュームを500ミリ秒未満で完了
なお、「従来比10倍」の比較対象については元記事において具体的な言及がなく、何と比べた数値かは明示されていない点に留意が必要だ。
この高密度・低レイテンシを実現しているのがAgent Substrateだ。Agent SubstrateはKubernetesランタイムとして実装されており、マイクロVMのライフサイクル管理を担う。Kubernetesをベースにしているため、既存のコンテナ運用の知見が活かせる点も現場には受け入れやすいだろう。元記事ではAgent Substrateについてオープンソース化されているとの記述があるが、公開の範囲や時期については元記事の原文で詳細を確認することを勧める。
監視・ガバナンス機能の整備
インフラ面だけでなく、運用管理の機能も拡充されている。追加される機能は以下の通りだ:
- トークントラッキング:エージェントのAPI利用量を可視化
- モデルルーティング:リクエストを適切なモデルへ振り分け
- サードパーティIDプロバイダーのサポート:Ping IdentityやSailPointとの連携
これらの管理機能はCloud Run、GKE(Google Kubernetes Engine)、マネージドエンドポイントにも展開される予定だ。
現状と提供時期
Agent Compute EngineはすでにGeminiの内部基盤として稼働中だ。外部向けのプレビュー提供は「coming months(数ヶ月以内)」とされており、具体的な日程は未公表である。大規模なAIエージェント運用を検討している開発者・インフラ担当者にとって、正式公開のタイミングは注目に値する。
詳細はGoogle's Agent Compute Engine gives every Gemini agent its own hardware-isolated micro virtual machineを参照していただきたい。