10月23日、PYMNTSが「DeepSeek Raises $15 Billion Ahead of Planned Shanghai IPO」と題した記事を公開した。中国AIスタートアップDeepSeekが150億ドルの資金調達を完了し、2027年初頭の上海IPOに向けた準備を本格化させている。当初目標の約2倍を集め、評価額は740億ドルに達した今、グローバルなAI産業における中国勢の存在感が一段と増している。
当初目標の約2倍を調達、評価額は740億ドル
Wall Street Journalの報道によると、DeepSeekは第2回プライベートファンディングラウンドで150億ドルを調達した。これは当初の調達目標のほぼ2倍に相当し、投資家からの強い需要を反映している。ラウンド完了時点でのバリュエーション(企業評価額)は約740億ドルとされている。
収益面では、創業者の梁文鋒(Liang Wenfeng)氏が9月に投資家へ報告したところによると、年換算の収益ランレート(ARR)は10億ドルに達した。7月時点で報じられていた4〜5億ドルから、わずか数ヶ月で倍以上に拡大した計算だ。収益の大半はフラッグシップモデルへのAPI経由のクラウドアクセスによるものとされている。
収益性についても注目すべき数字がある。DeepSeekはV4フラッグシップモデルのアクセスで**グロスマージン70〜80%**を維持しているとされる。米国の競合サービスより低価格でありながら、この水準の利益率を確保している点は特筆に値する。さらに8月には、フラッグシップモデルにピーク時間帯の価格を導入し、通常時の約4倍の料金を適用した。それでも主要競合より安価だという。
※編集部の考察:ARRはあくまで年換算の収益ペースを示す指標であり、純利益を意味するものではない。DeepSeekが引き続きコンピューティングインフラへの大規模投資を続けていることを踏まえると、持続的な収益性はまだ証明されていない点に留意が必要だ。
投資家の顔ぶれと、半導体の「脱・米国依存」戦略
今回のラウンドに参加した投資家は多様だ。既存投資家のMonolith ManagementとShixiangに加え、テンセントと電池大手のCATL(寧德時代)が参加。新規投資家としては、半導体特化のプライベートエクイティファームStony Creek Capital、レノボ傘下のLegend Capital(君聯資本)、自動車メーカーのGeely(吉利汽車)が名を連ねた。
CATLやGeelyといった製造・自動車業界の大手がAIスタートアップへ出資する背景には、単なる財務的リターンの追求にとどまらない戦略的意図が見える。電動車や次世代製造ラインへのAI統合が加速するなか、DeepSeekのような高性能・低コストなAI基盤を早期に確保することは、各社の競争力に直結する投資判断といえる。テクノロジーだけでなく、自動車・製造業からの資金流入は、中国国内産業全体でのAI活用需要の高まりを広く示すものだ。
インフラ面では、DeepSeekはNvidiaのプロセッサを最も複雑なAIトレーニングに引き続き使用しながら、Huaweiと連携して中国製チップへのトレーニングワークロードの移行を進めている。米国のサプライヤーへの依存を減らす戦略だが、その財務的な効果はまだ定量化されていない。
IPOは2027年初頭の上海市場——上場後に問われる低コスト戦略の持続性
DeepSeekはIPO(新規株式公開)に向けた準備も本格化させている。国有投資銀行のCitic Securities(中信証券)をIPOアドバイザーに起用し、9月にはベンチャーキャピタリスト出身のYan Wentao氏をCFO(最高財務責任者)として採用した。上場先として計画されているのは上海市場、時期は2027年初頭だ。
上場が実現すれば、DeepSeekはIPOを検討中のOpenAIより先に公開市場へ登場することになる。しかし、より重要なのはその後だ。公開企業となることで、売上・利益率・インフラ投資の内訳が外部から継続的に精査される。低コストAI戦略が持続的な利益を生み出せるかどうか、そして740億ドルというバリュエーションを四半期ごとの決算で正当化し続けられるかが、真の試練となる。
DeepSeekは2025年初頭にR1モデルを公開し、低コストで高性能なモデルを開発できることを示して業界に衝撃を与えた経緯がある。今回の資金調達と上場計画は、その後の急速な事業拡大を裏付けるものだ。IPOという節目を経て、DeepSeekがグローバルなAI競争においてどのような存在感を示すか、引き続き注目される。
詳細はDeepSeek Raises $15 Billion Ahead of Planned Shanghai IPOを参照していただきたい。