10月23日、The Decoderが「Only 13 percent of companies see real returns from AI, Gartner survey finds」と題した記事を公開した。この記事では、GartnerのCIO調査においてAI投資から実際のビジネス価値を得られている企業が全体の13%にとどまるという調査結果について詳しく紹介されている。
「コスト削減を命じられながら、コスト増を見込んでいる」——CIOたちが直面する構造的矛盾
Gartnerは毎年、世界最大級のIT系カンファレンスであるITシンポジウム/Xpo(2024年はフロリダ州オーランドで開催)に合わせて、CIO・テクノロジーリーダーを対象とした大規模調査を発表している。今回の調査対象は2,002人のCIOおよびテクノロジーリーダーで、世界各国の企業・組織から回答を集めたものだ。
その結果として明らかになったのは、AIへの期待と現実の大きな乖離だ。AIから「大きな」または「変革的な」リターンを得られていると回答した企業は**わずか13%**にとどまった。AIブームが続くなか、実際に成果を出せている企業がこれほど少ないという数字は、現場の温度感をそのまま映し出しているとも言える。
数字を並べると、現場の矛盾がより鮮明になる。
- 58%のCIOがAIによるコスト削減を経営から求められている
- 一方で51%のCIOが、AI導入によって技術スタック(システム全体を支えるソフトウェア・インフラ・ツールの組み合わせ)の運用コストはむしろ増加すると見込んでいる
- 44%のCEOが、AI投資の財務的な成果をステークホルダーに説明できていない
コスト削減を命じられながら、自分ではコスト増を見込んでいる——この構造的なズレは、記事の明示的な主旨ではないが、調査数値を並べると自ずと浮かび上がってくる(※編集部の解釈)。
「イノベーション競争」と「成果競争」のギャップ
Gartnerのアナリスト、Alicia Mulleryは、ベンダー側が走っている「イノベーション競争」と、企業が本来勝たなければならない「成果競争」の間に、拡大するギャップがあると指摘する。
成果を出している企業に共通するのは、早期に取り組むプロジェクトの優先順位を決め、すでに本番稼働中のものであっても見込みのないプロジェクトは打ち切る判断ができている点だ。また、AIエージェント(自律的にタスクを実行・判断するAIシステム)が職務をどう変えるかを事前に計画していることも、成果企業の特徴として挙げられている。
「とりあえず導入する」フェーズから、「成果を刈り取る」フェーズへの移行が求められているが、多くの企業はまだそこに至っていない。Gartnerがこれまでの年次調査でも繰り返し指摘してきたのは、新技術の導入スピードとビジネス成果の実現スピードの非対称性であり、AIについても同様の構図が繰り返されている。
「測定するには早すぎる」という声も
こうした成果の乏しさに対して、焦りを見せない経営者もいる。Bloomberg Media CEOのVlad Kliatchko(金融情報大手Bloombergのメディア部門トップ)は、AIの経済的な見返りを測定するには時期尚早だとしており、「今が正しいタイミングだ」という信念のもとで投資を続けているとのことだ。
それでも、Gartnerの調査では75%のCEOが今後テクノロジー支出を増やす計画を持っていると回答している。ROI(Return on Investment=投資対効果)が不透明なまま、投資だけが積み上がっていく状況が続いている。
何が問題か——「何を作るか」より「何を止めるか」
AIへの期待は依然として高いが、ROIを実証できている企業は一握りにすぎない。コスト削減の要請とコスト増の現実、CEOのコミットメントと説明できない財務効果——これらの矛盾が、AI導入の現在地を端的に示している。
エンジニアやアーキテクト視点で見れば、「何を作るか」だけでなく「何を止めるか」の判断こそが、AI投資を成果に結びつける鍵だというGartnerの指摘は、プロジェクトの優先順位付けを日々行う立場には刺さる内容だろう。Gartnerが提唱するAIの成熟度モデルや、過去の年次CIO調査と照らし合わせると、今回の結果が単年の一時的な現象ではなく、AI導入における構造的な課題を反映していることがわかる。
詳細はOnly 13 percent of companies see real returns from AI, Gartner survey findsを参照していただきたい。