10月16日、Reflection AIが「reflection/Beam-1.0-501B-A23B · Hugging Face」と題したモデルカードを公開した。同社が開発したオープンウェイト大規模言語モデル「Beam 1.0」の詳細なアーキテクチャと性能評価が明らかにされている。
コーディングエージェントの代表的指標であるSWEBench Verifiedで**81.6%、全米数学招待試験を題材にしたAIME 2026で97.7%**という数字が並ぶ。さらにApache 2.0ライセンスで商用利用・ファインチューニング・蒸留まで完全に開放されており、クローズドモデルへの依存を避けたい開発者・企業にとって有力な選択肢となりそうだ。
Reflection AIとは何者か
Reflection AIは元DeepMindの研究者らが設立したAIスタートアップで、2024年から急速に注目を集めてきた。同社は過去に「Reflection 70B」をリリースした際にベンチマーク不正疑惑が浮上して大きな論争を呼んだ経緯があり、コミュニティからの目が厳しい企業でもある。今回のBeam 1.0はそうした背景を持つ同社が満を持して投入したフラッグシップモデルであり、透明性の高いモデルカードの公開と詳細なベンチマーク開示は、信頼回復を意識した姿勢の表れとも読み取れる。
501Bパラメータ、アクティブは23B——MoEで推論コストを抑える設計
Beamの設計上の最大のポイントは、スパースMoE(Mixture-of-Experts)アーキテクチャの採用だ。総パラメータ数は501.3Bだが、推論時に実際に使われるアクティブパラメータは23.4Bに絞られる。256個のExpertを持ち、各推論ステップで必要なExpertだけを動かす仕組みになっている。
MoEは、Mistral AIのMixtralやGoogleのGemini 1.5、さらにはDeepSeek-V3でも採用されているアーキテクチャで、「総パラメータ数の割に推論コストが低い」という特性を持つ。Beamはこの設計により、モデルカード上では「主要オープンモデルと同等の解答品質を推論トークン数で約3倍少なく達成できる」と主張している(比較対象の詳細は元モデルカードを参照)。長文タスクの実コストに直結するポイントだ。
主なスペックは以下の通りだ。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 総パラメータ数 | 501.3B |
| アクティブパラメータ数 | 23.4B |
| レイヤー数 | 52(Dense 3 + MoE 49) |
| コンテキスト長 | 1Mトークン |
| 語彙サイズ | 152kトークン |
| Expert数 | 256 |
| 数値精度 | BF16 / FP8 / NVFP4 |
| 知識カットオフ | 2026年6月30日 |
コンテキスト長が100万トークンという点も見逃せない。大規模なコードベースや長文ドキュメントをそのまま入力できるスケールだ。ライセンスはApache 2.0で、ファインチューニング、量子化、蒸留、モデルマージ、出力を使った他モデルの訓練もすべて許可されている。
ベンチマーク——コーディング・推論ともに高水準
公開されたベンチマーク結果(評価条件: temperature=0.7、top_p=0.99)から主要な数値を抜粋する。
コーディング・エージェント系
| ベンチマーク | BF16 | FP8 | NVFP4 |
|---|---|---|---|
| SWEBench Verified | 81.6% | 80.2% | 80.7% |
| SWE Bench Pro v2-Hard | 76.5% | 78.4% | 78.6% |
| SWEBench Multilingual | 78.3% | 78.1% | 77.5% |
| Terminal Bench v2.1 | 80.1% | 78.9% | 78.4% |
SWEBench VerifiedはGitHubの実際のissueを解決させるベンチマークで、コーディングエージェントの実力を測る代表的な指標だ。**81.6%**というスコアは現時点でトップクラスの水準にある。
推論系
| ベンチマーク | BF16 | FP8 | NVFP4 |
|---|---|---|---|
| AIME 2026 | 97.7% | 98.0% | 97.5% |
| GPQA Diamond | 90.6% | 90.3% | 89.3% |
| LiveCodeBench | 88.3% | 88.1% | 87.4% |
| HLE(ツールあり) | 51.1% | 51.1% | 51.1% |
AIME 2026(全米数学招待試験)で97%超、GPQA Diamond(大学院レベルの科学問題)で**90.6%**という数値が並ぶ。HLE(Humanity's Last Exam)は人類の知識の最前線を問う極めて難易度の高いベンチマークで、ツールあり条件で51.1%というスコアはこの難度を考えると高水準だ。
特に注目すべきは、FP8・NVFP4に量子化してもスコアがほぼ落ちていない点だ。SWEBench VerifiedはBF16の81.6%に対しNVFP4でも80.7%、GPQA DiamondはBF16の90.6%に対しNVFP4で89.3%と、精度劣化が最小限に抑えられている。NVFP4はNVIDIAのBlackwellアーキテクチャで対応した低精度フォーマットで、メモリ使用量の大幅削減が見込める。精度を犠牲にせずハードウェアコストを下げられるこの特性は、実運用での導入障壁を大きく下げる要素だ。
ユースケースと安全性評価
Reflectionはモデルの主な用途として以下を挙げている。
- ソフトウェアエンジニアリング: GitHub issueの解決、CLI・DevOps環境での操作、エージェント型コーディングハーネスへの統合
- エージェンティックなツール利用: MCPベースのツール統合、ブラウジング、自然言語指示からのマルチステップワークフロー実行
- 数学・科学的推論: 定理証明、応用数学、デバッグ・計画・自己修正への応用
安全性評価(Iris Safety Evaluations)では、有害リクエストに対する拒否・回避率が**BF16で88.9%、無害なリクエストを正しく処理できた割合が81.5%**という結果が出ている。後者は「安全でない要求と誤判定して過剰拒否していないか」を測る指標であり、81.5%という水準は安全性と使いやすさのバランスとして示されているものだ。詳細なレポートはreflection.ai/beam-safety-reportで公開されている。
詳細はreflection/Beam-1.0-501B-A23B · Hugging Faceを参照していただきたい。