10月16日、Olivia Tauberが「JPMorgan Chase joins Amazon in blocking Muse AI assistant」と題した記事を公開した。JPMorgan ChaseがMetaの個人向けAIエージェント「Muse」を含む外部AIエージェントによる顧客口座へのアクセスをブロックした。先月のAmazonに続く動きで、AIエージェントと既存プラットフォームとの主導権争いが金融・EC双方に広がっている。
「外部エージェントを社内に入れるにはリスクが大きすぎる」
JPMorgan ChaseのCEO、Jamie Dimonは10月13日の決算説明会でこう言い切った。
「我々は、外部エージェントが何であれ、社内に入ってくることを許可するつもりはない。クライアントとJPMorganにとってリスクが大きすぎる」
外部AIエージェントによる顧客口座への直接アクセス、そして代理操作を全面ブロックする方針だ。対象はMetaのMuseや、後述するInstinctといったAIアシスタントサービス全般を含む。
Dimonはさらに、「数千もの不正エージェントが存在しうる」と警告しており、金融機関としての警戒感を明確に示した。Chase広報担当者もCNBCに対し、「サードパーティが顧客の銀行認証情報を取得し、代理でログインすることはできない」と明言した。いつ解禁するかの予定も示されていない。
何ができて、何ができないのか
Chaseは外部エージェントを全否定しているわけではなく、オープンバンキング経由での限定的なデータ共有は認めている。オープンバンキングとは、銀行が顧客の同意のもとで口座情報を承認済みの第三者サービスへAPIで提供する仕組みのことで、多くの国で法整備が進んでいる。承認済みの接続を通じて口座残高などの情報を参照することは可能だ。
ただし、そこから先が壁になる。
- 口座残高の確認 → 可能
- 送金・振込 → 不可
- 請求書の支払い → 不可
例えば、より高い金利の普通預金口座を探して資金を移動するようMuseに頼んだ場合、選択肢のリサーチまでは手伝えるが、実際の振替手続きは自分で行う必要がある。Metaが9月のMuseローンチ時に描いた「日常タスクを横断してこなすアシスタント」というビジョンとは、かなり乖離した現実だ。
なお、ブロック対象として名指しされたInstinctは、銀行口座と連携して資金管理や自動送金を代行することを売りにするAIアシスタントサービスで、Museと並んでChaseが接続を遮断したサービスの一つだ。
Amazonに続く2つ目の大きな壁
今回のChaseの動きは単独ではない。先月、AmazonがMuseによる自サイトでの買い物をブロックしたことが大きく報じられた。AmazonはMuseが自分自身を適切に識別しなかった点と、顧客の認証情報やアカウントデータの取り扱いへの懸念を理由に挙げた。
「顧客に代わって他社から購入を行うサードパーティアプリが、透明性を持って運営し、サービスプロバイダーの参加・不参加の判断を尊重すべきことは明白だと考える」(Amazon広報、Mashable取材)
Amazonはすでに自社のショッピングエージェント「Buy for Me」のテストを進めている。JPMorganも、CFOのJeremy Barnumが試験導入を明かした「Smart Cash」を開発中で、キャッシュフロー予測や利回り最大化のための自動送金を目指している。DimonはすでにAI活用について4月の株主書簡でも言及しており、請求書の予測や予算管理支援への活用を想定している。
つまり、AmazonもChaseも、外部AIエージェントを締め出しながら自社製の類似ツールを育てているという構図だ。競争上の思惑と、セキュリティ上の正当な懸念が混在しており、この線引きをどう評価するかは立場によって異なる。
金融業界全体に広がる警戒感
JPMorganだけではない。Bank of Americaをはじめとする主要銀行も、AIエージェントに関連した詐欺リスクについて相次いで警告を出している。金融機関がAIエージェントの「代理アクセス」に対して慎重な姿勢をとるのは、規制対応やコンプライアンスの観点からも自然な流れだ。
Museはリリースからわずかな期間で500万ダウンロードを突破するなど急速に普及しているが、主要プラットフォームとの連携が一つひとつ壁にぶつかっている状況は、エンタープライズ向けAIエージェントが直面する根本的な課題を浮き彫りにしている。どれだけ賢いエージェントでも、接続先が扉を閉めていれば何もできない。
詳細はJPMorgan Chase joins Amazon in blocking Muse AI assistantを参照していただきたい。