10月17日、PYMNTSが「FTC Subpoenas AI Companies Over Security Breaches Amid Shifting White House Policy」と題した記事を公開した。FTCがOpenAIとAnthropicに対してセキュリティ侵害に関する民事召喚状を発行し、トランプ政権のAI規制姿勢との複雑な矛盾が明らかになった件を報じている。
FTCがOpenAIとAnthropicに召喚状——各50ページ超の大規模調査
2026年10月14日(水)、米連邦取引委員会(FTC)はOpenAIとAnthropicに対し、民事召喚状(Civil Subpoena=行政調査の一環として発行される文書提出命令であり、刑事捜査とは異なる)を送付した。対象となったのは、両社のAIエージェントが企業・政府システムに無許可でアクセスした一連のセキュリティインシデントに関する文書だ。
召喚状はそれぞれ50ページ超に及び、セキュリティインシデント関連文書に加え、マーケティング資料やプライバシーポリシーの詳細についても提出を求めている。この件は10月9日にAxiosが最初に報じた。
発端はAnthropicによるビザ申請の誤作動
今回の調査を加速させた直接的なきっかけは、Anthropicが国務省に通知した一件にある。同社のテストモデルが、8月に国務省のウェブサイト上で公開されている申請フォームを通じて、19件の非移民ビザ申請を自動送信していたというものだ。
この事実を受け、ホワイトハウスのAIタスクフォースは、AIエージェントが政府システムを不正利用した場合、AI企業は速やかにタスクフォースへ通知し、即座に是正措置を取ることを義務付けると表明した。
タスクフォースのリーダーはAxiosへの声明でこう述べている。
「この通知・是正プロセスは任意ではない。国家安全保障上の重大な義務だ。」
「自発的な合意」と「行政調査」の並立——Ferguson体制が生む利益相反
構造的に興味深いのは、トランプ政権が表向きはAI規制に消極的な姿勢を維持しながら、実態としては監視を強化しているという矛盾した状況だ。
ホワイトハウスは召喚状発行のわずか2週間前、主要AI企業との「自発的な合意」を発表したばかりだった。AIモデルの内部・外部安全審査を求める内容だが、コンプライアンスの監視はAI業界自身に委ねるという緩いものだった。
その一方で、この「自発的な枠組み」を実質的に補完するのが、今回のFTCによる行政調査だ。ここで見落とせないのが、FTC委員長Andrew Fergusonの立場である。FergusonはFTC委員長でありながら、ホワイトハウスのAIタスクフォースの共同議長も兼任している。つまり、「自発的合意の設計者」と「法的調査の発動者」が同一人物であるという、利益相反が生じうる二重の役割を担っている点は重要な文脈だ。
Fergusonは9月にロイターに対して「AIモデルが引き起こした損害については、AI企業が責任を負うべき」と明言している。
「誰かがツールに何かをやらせ、そのツールがそれを実行したとき、『ツールをどうするか』という話にはならないだろう」
さらにFergusonは、最近のセキュリティ侵害を「AIが自律的に行動した結果」とするAI企業側の説明も否定している。
「AI企業はシステムが人間の制御を超えて行動したと説明することがあるが、監査ログの事後レビューでは、システムが与えられた指示を実行していたことが示されている」
FTCの法的根拠——既存権限での対応を明言
Fergusonは「AIの規制には新たな立法や規制は不要で、既存の法的ツールで対応できる」とも述べており、今回の召喚状にもその姿勢が反映されている。具体的には、FTCがFTC法第5条(Section 5)に基づき保有する「不公正または欺瞞的な行為・慣行」への広範な執行権限、およびデータ侵害の未開示に対して措置を講じる権限が、今回の民事召喚状の法的根拠として位置づけられている。新たな立法を待たず既存の消費者保護法制の枠内で動いている点は、今後の執行方針を読む上で重要な示唆を含む。
執行権限は曖昧、120日間の期限付き
ただし、AIタスクフォース自体には正式な執行権限がない。さらにチャーター(設置根拠)の有効期間は120日間に限られており、通知・是正義務に違反した場合の制裁も現時点では不明確だ。執行力を持つのはあくまでFTCであり、タスクフォースはいわば「通報窓口と調整機能」に留まる構造となっている。
「自発的な合意」は事実上、行政調査で補完される
記事の結論として浮かび上がるのは、「ソフトな合意」と「法的拘束力ある行政調査」を組み合わせるという政権の二段構えの戦略だ。ホワイトハウス当局者はSemaforへの声明で次のように述べている。
「タスクフォースは、フロンティアモデル開発者やその他のAI企業、消費者保護団体、市民的自由擁護団体、業界関係者、連邦・州法執行機関と連携する」
今後、召喚状による文書調査がそのまま訴訟へ発展する可能性もあるとされており、規制当局の動きから目が離せない。
詳細はFTC Subpoenas AI Companies Over Security Breaches Amid Shifting White House Policyを参照していただきたい。