10月16日、Daniel Dominguezが「AWS Introduces Strands Decider 2B and Strands Box for AI Agent Development」と題した記事を公開した。AWSがAIエージェント開発向けに新たに公開した2つのオープンソースプロジェクト「Strands Decider 2B」と「Strands Box」について詳しく紹介している。
AIエージェントの「意思決定」と「実行制御」をオープンソースで
115ミリ秒以内にツール選択を返し、カーネルレベルのポリシーでエージェントの暴走を止める——AWSが公開したStrands Decider 2BとStrands Boxは、AIエージェント開発における2つの根本的な課題に対応するコンポーネントとして設計されている。「何をするか決める」ことと「決めたことを安全に実行する」ことだ。
Strands Decider 2B:「選ぶ」に特化した20億パラメータモデル
汎用LLMは「文章を生成する」ために設計されているが、エージェントワークフローにおいて必要なのは「どのツールを使うか」「どのモデルに振るか」といった判断を素早く返すことだ。Strands Decider 2Bはこの用途に絞って設計されており、長文を生成する代わりに候補の中から選択肢を選んで確信度スコアとともに返す。
モデルのベースはQwen3.5-2Bで、言語モデルヘッドをポインタヘッド(候補をスコアリングする仕組み)に置き換えている。ファインチューニングにはrank-16 LoRAアダプタを採用している。なお、Qwen3.5-2Bの公開状況およびHugging Face上のモデルページについては元記事公開時点での情報に基づいており、最新の状況はQwen公式リポジトリで確認されたい。
AWSが公開したパフォーマンス数値は以下の通りだ:
- NVIDIA RTX 3090:中央値で約115ミリ秒
- Apple M3 MacBook(小規模タスク):約153ミリ秒
- JevBench(231公開タスク):v19チェックポイントで72.3%の精度
モデルの重み、学習データ、スクリプトはすべて公開されており、ローカルでの実行・改変が可能だ。strands-deciderパッケージをインストールすれば、CLIまたはStrands Agentsへの統合として使える。
競合との比較
Strands Decider 2Bと同種のモデルとして、TypeSafe AIのJevがある。分類・ルーティング・ツール選択をサポートし、確信度スコアを返すという設計思想は共通している。大きな差はデプロイ方式で、Strands Decider 2BはOSSでローカル実行可能、JevはマネージドAPIとして提供される。なお、AWSはJevBenchでの評価結果を公開しているが、Jevに対する直接的なパフォーマンス優位性は示されていない。
Strands Box:カーネルレベルでエージェントの実行を制御する
Strands Boxは現在デベロッパープレビュー中のサンドボックス環境であり、GAには至っていない。本番環境への適用にあたっては制約や破壊的変更の可能性を考慮する必要がある。シェルコマンド、Python実行、MCPツール、ファイルシステム操作、ネットワークアクセスといったエージェントの操作を、OSレベルの分離とポリシー層を組み合わせて制御する。
ポリシー定義にはDogwoodというAWSが公開するOSSのポリシー言語を使う。カーネル強制による分離でエージェントのアクションをポリシー層経由でルーティングするため、プロンプト指示に頼らず実行境界を定義できる点が特徴だ。
具体的な使用例として、記事では以下が挙げられている:
- テストをパスした場合のみリポジトリへのコードプッシュを許可する
- 外部APIコールの頻度を制限する
- エージェントが顧客ファイルを読み取った後の外部HTTP通信をブロックする
従来のコンテナサンドボックスやFirecracker microVMは主にファイルシステム・プロセス・ネットワークアクセスを制限するが、Strands Boxはさらにツール引数や過去の実行履歴に基づいたポリシーを適用できる。異なるモデルやエージェントフレームワークと組み合わせて動作し、既存のエージェントアーキテクチャを置き換えずに導入できるとされている。
開発者の反応
コミュニティの反応は実用面での評価が中心だ。AWS Community BuilderのYuuki Yamashitaによるハンズオンチュートリアル(出典は元記事を参照)では、
Strands Decider 2Bは、エージェントがサポートされていない天気ツールを呼び出そうとするのを防ぐことができた。
という報告がある。一方、GitHubのissueスレッド(詳細は元記事記載のリンクを参照)では並列リクエスト処理・Apple Siliconとの互換性・コールドスタートのレイテンシといった問題も報告されており、本番投入前に検証が必要な領域がある。
AI BuilderのDipen VajaはX(2026年10月16日)で次のようにコメントしている:
エージェントが誤ったパスを完走するより、途中で壁にぶつかる方がマシだ。AWSはStrands Boxをオープンソース化した。カーネルサンドボックスがシェル・Python・ツール・ネットワークを一つのポリシー層でルーティングするので、エージェントが顧客ファイルを読んだ後の外部HTTPをルールでブロックできる。
Strands Decider 2BとStrands Boxは、昨年から展開されているStrandsエコシステムをエージェントのオーケストレーションから意思決定・実行制御まで拡張するものだ。両者は独立したコンポーネントとして設計されており、個別に導入することもできる。Strands Boxはデベロッパープレビュー段階であることを踏まえると、エコシステム全体としてはまだ成熟の途上にある。
詳細はAWS Introduces Strands Decider 2B and Strands Box for AI Agent Developmentを参照していただきたい。