10月16日、My Electric Sparksが「Anthropic Holds Investor Day Ahead of November IPO」と題した記事を公開した。AnthropicがIPO前にインベスターデイを開催し、時価総額2兆ドル規模の株式公開に向けた具体的な動きが明らかになったことを伝えている。
四半期売上高16.8億ドル、45%増という数字の意味
Anthropicは10月14日、サンフランシスコ本社で機関投資家を招いた非公開のインベスターデイ(機関投資家向け非公開説明会)を開催した。登壇したのはCEOのDario AmodeiとCFOのKrishna Raoで、両者は財務状況を直接説明し、投資家からの質疑に応じた。
最も注目を集めた数字が、第3四半期の売上高16.8億ドル(約1,680億円、前四半期比45%増)だ。第1四半期が4.7億ドル、第2四半期が11.6億ドルと、わずか9か月で売上高がほぼ4倍に膨らんだ計算になる。Reuters、Bloomberg、CNBCがいずれも同じ数字を報じており、情報の信頼性は比較的高い。
さらに経営陣は、**第3四半期に調整後ベースで黒字化を達成し、調整後粗利益率は85%**に達したと説明した。ただし「調整後」とはストックオプションなど一時的なコストを除いた数字であり、GAAP(米国会計基準)上の利益とは異なる点には注意が必要だ。それでも85%という粗利益率は、コアプロダクトでの収益構造が確立されつつあることを示している。
評価額1.8〜2兆ドル、OpenAIとの上場競争
Bloombergの報道によると、投資家が見込む適正評価額は1.8兆〜2兆ドルの範囲とされる。今年5月のシリーズH調達時の評価額9,650億ドルと比べると、わずか数か月でほぼ倍になる水準だ。ただしこれはIPO前の段階で投資家が語る見込み額であり、正式な公開価格は目論見書の開示後に決まる。
IPOの規模としては、SpaceXの記録的な上場を超える可能性があると伝えられており、実現すれば史上最大規模の株式公開となる。正式なIPOマーケティングは11月9日の週に開始され、感謝祭(11月26日)前の取引開始を目指しているとされる。Anthropicはすでに米国規制当局に機密扱いの目論見書草案を提出しており、公式提出への準備が整っている段階だ。
一方、競合のOpenAIはIPO計画を先送りにしており、現時点では評価額約1.4兆ドルでの大型私募調達を目指していると報じられている。Anthropicが先に公開市場の投資家向け説明を済ませたことで、上場レースで先行する格好となった。
法人顧客が支える収益基盤
一般消費者への認知度ではChatGPTに劣るAnthropicのClaudeだが、法人市場での採用が着実に広がっている。銀行、ヘッジファンド、Salesforceといったソフトウェアプロバイダーが業務に組み込んでいる点が、インベスターデイの訴求ポイントのひとつだった。継続的な法人収益は機関投資家が重視する指標であり、この企業顧客基盤がバリュエーションを支える根拠となっている。
安全性リスクと数字の留保事項
成長を示す数字が並ぶ一方で、留意すべき点もある。
まず、Anthropicはまだ目論見書を公開していない。インベスターデイで示された財務数字はすべて、経営陣が非公開の場で口頭説明したものを関係者が報じたものであり、公式の開示資料ではない。正確な数字は規制当局への正式提出文書が公開されて初めて確認できる。
また、AIの安全性をめぐる外部環境も厳しさを増している。不正AIエージェントに関連したハッキング事案が相次いでおり、今月はClaudeを使った偽の殺人予告がフィラデルフィア警察に届く事案も報じられた。Amodeiはインベスターデイの場でも安全性研究を事業の中核に据えると強調したというが、元Anthropic研究者の一部はAIの制御喪失リスクについて警告を発している。
OpenAIを離れた研究者たちが設立したAnthropicが、9か月で売上高を4倍にしてウォール街に説明する立場になった。次の焦点は、11月に予定される正式な目論見書の公開だ。
詳細はAnthropic Holds Investor Day Ahead of November IPOを参照していただきたい。