10月17日、The Decoderが「China plans to tighten export controls on open-weight models and 23 key AI technologies」と題した記事を公開した。中国の商務省と科学技術省が、大規模AIモデルの重みを含む23のAI技術分野を対象とした輸出規制の強化草案を公表した。米国がBIS(商務省産業安全保障局)による輸出規制でAI関連技術の流出を制限してきた動きと対称的な構図であり、AI覇権を巡る米中の規制競争が新たな段階に入ったといえる。
オープンウェイトモデルの重みが規制対象に
今回の草案で規制対象となるのは、大規模モデル、AIエージェント、計算クラスター、データ処理にまたがる23のAI技術分野だ。
エンジニアにとって最も気になるのは、大規模モデルそのものへの規制だろう。以下の2つの条件のいずれかを満たすモデルが規制対象となる。
条件1: 中国の「重要データ」で学習したモデル
中国のデータセキュリティ法に定義される「重要データ」を用いて学習・サービス提供するモデルが対象。公開データは免除されるが、事前にクリーニングされていても0.1%超の混入があれば規制が適用される。
条件2: モデルアーキテクチャや重みそのもの
以下のいずれかに該当するモデルの、重み(weights)・チェックポイント・ソースコード・アーキテクチャ・学習/推論手法が規制対象となる。
- 学習計算量が 10²⁶ FLOPs 以上
- パラメータ数が 2兆以上
- 国内外の評価機関や業界プラットフォームによる総合ランキングでグローバルトップ10以内
現状でこの閾値を超えるオープンウェイトモデルはまだ少ないが、モデルの能力向上が続く中で、将来的に多くのモデルが該当していく可能性が高い。
「中国版」モデル重み規制——米国の鏡像
Mercatus Centerの研究員であるDean W. Ballは、X(旧Twitter)への投稿でこう指摘している。
「これは『中国がオープンウェイトモデルを閉鎖する』という意味ではないが、中国政府が将来的にオープンウェイトモデルをいつでも遮断できるオプションを確保したということを示している」
BallはさらにこのフレームワークをBeijingが、米国政府が既に導入しているモデル重み輸出規制の「鏡像(mirror image)」と表現している。AI規制において米中が互いに対称的な手を打っている構図だ。
米国側では、BISが先端AI半導体や関連技術の輸出規制を段階的に強化しており、モデルの重みそのものを規制対象とする議論も進んでいる。今回の中国の草案は、こうした米国の動きに正面から呼応する形となっている。
欧州の「AIソブリンティ戦略」への影響
元記事はあくまで中国の規制草案の内容を主軸としているが、その地政学的含意として欧州への影響にも言及している。EUはこれまで、オープンウェイトモデルを国内クラウドで運用することでAIの自律性(ソブリンティ)を確保する戦略をとってきた。しかし最良のオープンモデルが米国か中国から供給されており、どちらも輸出規制でいつでも遮断できるとなれば、この戦略の前提が揺らぐことになる。
一方、すでにオープンソースとして公開済みの技術や研究論文に収録された情報は、今回の規制から除外される。
国内のオープンソースエコシステムは保護
中国国内のオープンソース開発を阻害しないよう、同時にファストトラック(自動ライセンス)制度も導入される。制限対象のAI技術や重みをオープンソースとして公開する場合は「自動ライセンス」が適用され、申請と同時にクリアとなる仕組みだ。
自動ライセンスの対象となるケースは、オープンソース公開にとどまらない。中国企業が海外で自社データセンターを運用する場合、海外でチップを製造(tape-out)する場合、外国パートナーとの共同研究、国際標準化への貢献といったケースも自動ライセンスの対象とされており、中国企業のグローバルな事業展開を阻害しない設計になっている。
利用形態による区分も明確だ。APIコール、アプリ、Webサービス、SaaSツール、エッジデバイス上の軽量モデルを通じた利用は規制対象外となる。一方で、海外の第三者サーバーへのモデルのインストールには標準的な輸出許可が必要になる。規制の「粒度」が細かく設計されており、中国政府が国内産業の競争力を守りつつ、戦略的に遮断できる手段を確保しようとしている意図が読み取れる。
中国が主導する「WAICO」との連動
中国はあわせて、自国が設立した世界人工知能協力機構(WAICO)のメンバー国向けに、能力構築・技術共有・共同ルール策定を目的とした輸出を優遇する方針も示している。WAICOは西側主導のAI国際機関に対抗するために中国が立ち上げたブロックであり、今回の輸出規制と組み合わせることで「味方には開放し、敵対国には遮断する」という二重構造の技術外交を形成しつつある。最終規則の発効前には、対象輸出の登録が商務省のポータルを通じて義務付けられる。
詳細はChina plans to tighten export controls on open-weight models and 23 key AI technologiesを参照していただきたい。