10月15日、Help Net Securityが「AI-generated changes create review bottlenecks in software delivery」と題した記事を公開した。AIコーディングツールの普及でコード生成量が増える一方、それをレビューする人間の処理速度は変わらない——JetBrainsの「The State of CI/CD in 2026」レポートが浮き彫りにしたのは、「AIが書いたコードが多すぎてレビューが追いつかない」という、加速する開発現場の構造的矛盾だ。
AI活用が進むほど「レビューが追いつかない」問題が顕在化
AIコーディングツールの普及で開発速度が上がる一方、組織の中で新たな課題が浮上している。JetBrainsのレポートによると、AIを活用しているチームが共通して挙げる問題が「生成されるコード変更の量が多すぎてレビューが追いつかない」ことだ。コードを書くコストが下がっても、それを読んで承認する人間側のコストは下がっていない。この非対称性が、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインのボトルネックとして表出している。
具体的には以下の懸念が報告されている:
- AI生成コードの変更量が多く、レビュープロセスが滞る
- 信頼性の評価が難しくなっている
- どの変更がAIによるものかの追跡が困難
- AIが引き起こす問題のデバッグが煩雑
「AIが書いたコードかどうか」を意識せずにレビューできる段階には、まだ達していないのが現状だ。AI生成コードの品質を人間がどう担保するか、という問いはCI/CDパイプラインの設計にも直撃している。
CI/CDパイプラインは依然として開発の中核
レポートの基礎データとして、DevOps実践者の83.4%がCI/CDパイプラインを運用している。これはコンテナ化・オーケストレーション、Infrastructure as Code、GitOps(Gitリポジトリを信頼できる唯一の情報源としてインフラ・デプロイを管理する手法)、プラットフォームエンジニアリングといった他の手法よりも高い採用率であり、CI/CDがDevOps実践の事実上の共通基盤であることを改めて示している。
ツール別ではGitHub Actionsが組織採用トップ、続いてGitLab CI、Jenkinsの順。Azure DevOps ServerがTeamCityの前に位置し、AWS CodePipelineやBitbucket Pipelines、独自システムなどが続く。
複数ツールを併用する組織が多い背景には、顧客要件・技術スタックの違い・レガシーシステムの引き継ぎがある。顧客ごとに指定ツールが異なるケースも珍しくない。一つの組織内で複数のCI/CDツールが並走する状況は、パイプライン管理の複雑さをさらに高める要因ともなっている。
セルフホスティングが増加傾向——5年間で最高値
ホスティング環境では、72.8%が自社オンプレミスまたはセルフマネージドのクラウドインフラで主要CI/CDシステムを運用している。レポートによればオンプレミス比率はこの設問が始まって以来5年間で最高値を記録した。クラウドネイティブへの移行が進むと思われがちなCI/CD領域で、あえてセルフホスティングを選ぶ組織が増えている点は注目に値する。
ハードウェア・ネットワーク・データ・ビルド環境・セキュリティ・コストの制御ニーズが、この傾向を支えている。特にAI活用が広がる文脈では、学習データや生成コードに関わる知的財産の管理をクラウドベンダーに委ねたくないという意識も働いていると考えられる。TeamCityのプロダクトマーケティングマネージャーであるOlga Bedrina氏はこう述べている。
「AIの活用は現在、主にパイプラインの周辺で行われている。コードレビュー、テストの作成・修正、ビルド失敗の診断などだ。同時に、インフラ・データ・セキュリティ・コストの管理を重視する組織にとって、セルフホスティングはCI/CDの重要な選択肢であり続けている。」
AIのCI/CD活用は「パイプラインの中」よりも「周辺」
48.8%の組織がCI/CD関連タスクの少なくとも1つにAIを活用しているが、ビルドやテスト内にAI駆動のステップを直接組み込んでいるのはわずか**8%**にとどまる。AIの活用は「パイプラインそのものの自動化」ではなく、あくまで「開発者の作業補助」に留まっているのが現状だ。
主な活用領域はパイプラインの「外側」だ:
- コードレビュー支援
- テストの作成・修正
- ビルド失敗の診断
- パイプライン設定のメンテナンス
- 品質・セキュリティチェック(ビルドブロック型)
- デプロイ・リリース支援
- デプロイ後のインシデント対応
開発者はMCP(Model Context Protocol)サーバーやエージェントスキルを通じてCI/CDツールにアクセスしており、既存のAIアシスタントを開発ワークフローに接続する形が広がっている。MCPとはAIエージェントと外部ツール・データソースを標準化された方法で接続するためのオープンな規格で、Anthropicが策定しCursorやClaude Desktopなどで採用が進んでいる。ただし、Webインターフェースが依然として最も一般的な操作手段であり、エージェント型の操作はまだ少数派だ。
AIを使わない理由も明確
AIをCI/CDに導入していない組織が挙げる理由は、「優先度が低い」「データプライバシー・知的財産への懸念」「既存の仕組みへの満足」「コスト」など。特に小規模企業では「現状で十分」という回答が多い傾向がある。
AI導入の効果と課題が同時に可視化されてきたことで、組織がどこにAIを投入するかの判断がより精緻になりつつある段階と言える。レビューボトルネックという具体的な副作用が数字として示されたことで、「AIを使えば開発が速くなる」という単純な期待値は修正を迫られている。
詳細はAI-generated changes create review bottlenecks in software deliveryを参照していただきたい。