10月12日、Wolf Richterが「The CEO's of Broadcom and Intel Say the Quiet Part out Loud about AI and ROI」と題した記事を公開した。BroadcomとIntelのCEOが同一パネルで「AI投資のROIはまだ誰も証明していない」と率直に認めた——半導体業界の頂点に立つ2人がここまで明言したことは、AIの誇大宣伝が続く現在において異例の出来事だ。
「おそらく、すべてにおいて間違えていた」
DBS Asia Future Forward Conferenceのパネルディスカッションで、BroadcomのCEO Hock TanとIntelのCEO Lip-Bu Tanが、AIバブルを巡る議論の中で業界内では口にしにくいとされてきた本音を語った。
Wolf Richterは米テキサス州サンアントニオを拠点とするWolf Streetの著者・編集長であり、金融・不動産・マクロ経済を主な取材領域とする独立系経済ブログとして知られる。本記事はその立場から、半導体CEOの発言が持つ金融・資本市場的な含意を読み解いたものだ。
Broadcom CEOのHock Tanは将来を振り返ったとき何を間違えたかと問われた際、こう答えた。
「おそらく、すべてにおいて間違えていたと思う。自分たちが作っている技術について、実際にはいかに何も知らないかを謙虚に認める良い機会だ。」
Intel CEOのLip-Bu Tanは、70%正解できれば「相当優秀なCEO」だと述べた。
両トップが同一のパネルでこれほど率直に不確実性を認めたのは、AIの財務的な誇大宣伝が続く中で異例の発言だ。
「投資家はカジノにいるようなもの」
Hock Tanは、AI投資家の多くについて手厳しい評価を下した。
「多くの投資家は、自分が何に投資しているのか全くわかっていない。非常に極端な期待を持ち、気がつけばカジノにいるような状態だ。」
OpenAIの年換算売上高は9月末時点で500億ドルに達するとされるが、Hock Tanはそれが持続可能な収益モデルを示すものではないと指摘する。AI運用コストや設備投資が重くのしかかり、依然として大きな赤字を生んでいるためだ。「フロンティアの生成AIモデルを提供することで大きな売上成長の潜在性がある、ということ以外、現時点では何も示していない」と述べた。
企業がAIを使って実際に価値を生み出せるかどうかが、モデル開発者の収益モデルの核心にある。Hock Tanはこう表現した。
「子供がゲームセンターに行き、親から10ドルのトークンをもらって10分で使い切り、何も学ばない。今の企業はまさにそれをやっている。」
企業がトークンを消費しながらAIを「試している」だけの段階では、AI開発者側に持続的な収益は生まれないという指摘だ。
最大の制約は「資本コスト」
AIインフラの爆発的な増強については、2029年から2030年にかけて需要超過の状態が続く可能性があるとHock Tanは見通す。
ここで登場する「ウェハー不足」とは、半導体チップの製造基板となるシリコンウェハーの供給不足を指す。AIアクセラレータやカスタムチップの需要急増により、TSMCなど主要ファウンドリの製造キャパシティが逼迫している状況だ。メモリ不足は1年後に解消されているかもしれないが、ウェハー不足は2028〜2029年まで続く可能性があり、電力供給も課題のままだという。
しかし両CEOが最大のボトルネックとして挙げたのは、サプライチェーンではなく資金調達コストだ。
- Hock Tan:「AIインフラへの資金調達が最大の制約になるかもしれない」
- Lip-Bu Tan:「課題があるとすれば、資本とその調達コストだ。長期的には、人々はROIを見たがっている」
記事では、その具体的な指標として債券市場の動向が取り上げられている。ここで使われる「投資適格社債」とは、格付け機関からBBB(Baa)以上の信用格付けを受けた企業が発行する社債を指し、相対的にデフォルトリスクが低いとされる。また「スプレッド」とは、社債利回りと同期間の国債利回りの差分のことで、企業の信用リスクの高まりを反映して拡大する。
SpaceXが今回の事例として取り上げられている背景には、同社がAIデータセンター・衛星通信インフラ(Starlink)双方で巨額の設備投資を続けており、大規模AIインフラ投資企業の債券調達コストを示す現実的なベンチマークとして機能しているためだ。SpaceXが6月に発行した10年物の投資適格社債(クーポン5.875%)は、直近で利回り7.20%で取引されており、今後のAI関連債券発行の参照値になるとされる。米国債利回りの急上昇とスプレッドの拡大が重なる形で、インフラ整備に必要な巨額の資金調達コストが上昇しており、ROI実現への道筋はより不確かになっている。
AI需要の持続は「企業がどれだけROIを出せるか」次第
Hock Tanは、AI需要の持続条件についても明確に述べた。先進AIモデルの展開が期待外れに終わるか、性能向上が頭打ちになれば、コンピューティングインフラへの需要は鈍化するという。Lip-Bu Tanも「企業は効率改善と新しいビジネスモデルを通じて、AI投資から意味のあるROIを示す必要がある」と同調した。
AIインフラ投資の継続可能性が、技術的なブレークスルーではなく企業のROI実証にかかっているという認識は、半導体業界のトップ2人が公の場で共有した重要なシグナルだ。金融・経済の視点からAI産業の持続可能性を問い続けてきたWolf Streetがこの発言を取り上げた意味は、技術的な話題としてではなく、資本市場・投資判断における警鐘として読む必要がある。
詳細はThe CEO's of Broadcom and Intel Say the Quiet Part out Loud about AI and ROIを参照していただきたい。