10月13日、latent.spaceが「How Anthropic's Dynamic Workflows Coordinate Claude Agents」と題した記事を公開した。AnthropicがUnix/Linuxの設計思想を援用しながら、Claudeエージェントが自律的にマルチエージェントのトポロジーを決定する新機能「Dynamic Workflows(flows)」について紹介している。
「自分がボトルネックになる」問題をClaudeに解かせる
AI Engineer New York 2026カンファレンスのワークショップで、AnthropicのMember of Technical StaffであるCJ AvillaとHarrison Stallが発表した新機能がDynamic Workflows、通称「flows」だ。金曜日に発表されたこの機能は、「最も野心的なワークロードのために作られた、新しいタイプのマルチエージェントオーケストレーション」と定義されている。
発表はKen ThompsonによるUnix開発、そしてLinus Torvaldsから層状の信頼できるメンテナー構造へと進化したLinuxの話から始まった。Unixが「小さなプログラムを組み合わせて複雑なことを成し遂げる」というパイプライン思想を持つように、エージェントシステムも階層的な信頼構造と役割分担が必要だという論旨だ。Avillaはこう語った。
「多数のエージェントを管理していると、自分がボトルネックになっている感覚を覚え始めると思う。エージェントが大量のPRを送ってきて、自分がGitHubに張り付いて承認作業をしているような状況だ。」
以前との違い:トポロジーをClaudeが自分で決める
従来のClaude Managed Agents(開発者がコーディネーターとサブエージェントの役割・構成を手動で設計・設定する方式)では、エージェントの数や連携パターンを人間が逐一決める必要があった。Dynamic Workflowsでは、Claudeが自らオーケストレーションプログラムを書き、エージェントを起動し、結果を収集し、情報フローを管理する。ここで言う「オーケストレーション」とは、複数のエージェントに対してタスクの割り振り・実行順序の制御・結果の統合を行うプロセス全体を指す。
Stallの説明:
「Flowsはマルチエージェントオーケストレーションの次世代版で、Claudeがマルチエージェントのトポロジー全体を完全にオーケストレートできる。」
ただし、開発者が特定用途のサブエージェントを事前設定して渡すことも可能だ。エージェント設定でpre-configured sub-agentsを指定できる。
この機能はAPIでClaudeにアクセスする開発者向けインターフェースClaude Consoleで利用できる。

Managed Agentsが配置されているClaude Console
デモ:株価ウォッチリストスキャナー
デモで示されたのは株価ウォッチリストのスキャナーだ。スキャンフェーズで個々のティッカーシンボルを独立したコンテキストを持つエージェントに分散し、レビューフェーズで結果をまとめてレポートを生成する、という基本パターンを示した。
コストについては、単一エージェントのアプローチより「はるかに高い」が、「細部を網羅する精度もはるかに高い」とAvillaは述べた。
Q&Aで浮かび上がった実運用上の論点
聴衆からのQ&Aはいくつかの実践的な問題を掘り起こした。各論点はいずれも、Dynamic Workflowsを本番運用に持ち込む際の設計判断に直結する内容だ。
エージェント数の制御:単純なティッカースキャンでも数百のサブエージェントが起動するのかという質問に対し、Stallは「評価(evals)とデフォルト値の低め設定」が答えだと回答。積極的な並列化は明示的に指示する必要がある。
トークンバジェットの管理:リードエージェントは自分のコスト予算を把握できるか、という質問も出た。Stallによると、モデルは実行中に自分のバジェットを知らないが、開発者はセッション予算を設定できる。なお、モデルに予算を教えると「エージェントが少し不安になる(a little bit anxious)」可能性があるとStallが述べ、聴衆の笑いを誘った。
サブエージェント間通信:サブエージェント同士は直接メッセージを送り合えないが、ファイルシステムを共有して情報交換は可能だ。
「Dreaming」でフローを自己改善させる
繰り返し実行するフローを安価かつ効率的にするための手段として、AvillaはAnthropicの別の新機能「dreaming(ドリーミング)」を紹介した。公式ドキュメントによれば、これはresearch preview段階の機能で、「既存のメモリストアと過去のセッショントランスクリプトを読み込み、新たに再編成されたメモリストアを生成する」ものだ。重複エントリのマージ、古い情報の置き換え、新たな知見の抽出が行われる。
Avillaはこれを「セッションに関連するメモリストアを結晶化・改善できる」機能と表現した。フローが繰り返し実行される中で、自身の判断基準を洗練させることが狙いだ。dreaming機能はflowsと組み合わせることで、実行のたびにエージェントの振る舞いが精緻化されていく自己改善サイクルを実現する。
科学研究への応用という大きな野望
聴衆からは、OpenAIが最近発表したNavier–Stokes方程式のミレニアム懸賞問題に関する証明を引き合いに、大規模な科学研究にflowsを使えるかという質問も出た。Navier–Stokes方程式は流体の運動を記述する偏微分方程式で、その解の存在と滑らかさの証明はClay数学研究所が懸賞金を設定している未解決問題のひとつだ。AIがそうした難問の証明に貢献し得るかという問いは、会場の関心を集めた。Stallはこう答えた。
「Flowsは基本的に、難しい問題にテスト時計算(test-time compute)を投入して、モデルから速く高い能力を引き出す手段だ。APIサービスとして、この力を解放することが、一般の人々がこうした発見や科学的進歩をできるようにする第一歩だと考えている。」
ここで言う「test-time compute」とは、モデルの学習後の推論ステップに追加の計算リソースを割り当てることで精度を高める手法を指す。flowsはこのアプローチをマルチエージェント構成で実現する仕組みといえる。
詳細はHow Anthropic's Dynamic Workflows Coordinate Claude Agentsを参照していただきたい。

