10月13日、Sourav Rudraが「Linus Torvalds Says He Likes Using AI, While His New Kernel Branch Credits Claude Code」と題した記事を公開した。この記事では、Linux創設者Linus TorvaldsがClaude Codeをカーネル開発に実際に活用し、新しいブランチのコミットメッセージにその旨を明記したことについて詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
Linusのカーネルリポジトリに「with-llm」ブランチが出現
Linus Torvaldsのカーネルリポジトリに、**noref-filemap-read-with-llm** という名前のブランチが登場した。Linux 7.3-rc6をベースにした8パッチのシリーズで、コミットメッセージにはClaude Codeの貢献が明記されている。
パッチの内容自体はファイル読み込みの並列性能に関するものだ。多数のスレッドが同一ファイルを読む際、カーネルはページキャッシュ(最近読んだデータのメモリ上のコピー)からデータを提供する。従来の実装では各スレッドがキャッシュデータを取得・解放するたびに同一のカウンターを更新するため、スレッド間の競合が発生していた。この問題は2024年にMatthew Wilcoxが顧客のワークロードで指摘したものだ。
Linusのパッチはこのステップを省略する。安全性を確保するため、キャッシュから外れたメモリは短い待機期間を経るまで再利用に回さない設計とし、読み取り側がロックなしにデータを直接コピーできるようにした。代償としてメモリが一時的にアイドル状態になるが、パフォーマンスの改善幅は大きい。
Linus自身がラップトップ上で計測した結果(一部セキュリティ保護を無効化した条件)では、8スレッドでの1ファイル読み込みが約1000万回/秒から3000〜3300万回/秒へと向上した。
コミットメッセージによれば、計測はLinus本人が実施したが、コミットメッセージの草稿、コード、テストプログラム、既知の問題リストのレビューはClaude Codeが担当した。ブランチ名にそのまま「llm」と入っているのは、AIの関与を隠すどころか積極的に記録しているという点で、コミュニティへのメッセージとも受け取れる。
なお、これが初の事例ではない。2024年8月にはIntel Xeグラフィックスドライバーのバグ修正にもAIを活用している。
「AIが本当に好きになった」——プラハでの発言
Linusは先週末、チェコのプラハで開催されたOpen Source Summit Europeに登壇し、旧友でエリクソン・ソフトウェアテクノロジー代表のDirk Hohndel氏と対談した。ZDNetのSteven Vaughan-Nichols記者が現地で取材した内容によると、Linusは次のように述べた。
「AIを使うのが本当に好きになった(I actually really like using AI)」
以前はAIの実用性に懐疑的だったと認めつつ、「ツールとして扱う限りにおいてはうまく機能する」という立場に変わったと語った。
具体例として挙げたのは、個人プロジェクトであるギタープロジェクトだ。Cで書いていたインターフェースを現代的な見た目にしたかったときにAIを試用したといい、「自分が苦手なことをAIにやらせている」と表現した。
また、いわゆる「バイブコーディング」(明確な仕様を決めずにAIと対話しながら開発を進めるスタイル)については「プログラミングに喜びを見出す素晴らしい方法だ」と擁護し、特に初学者に向いていると述べた。
一方で課題も指摘している。AIがコードベースを改善する一方で、メンテナーへの負荷が現実の問題になっているとした。AIが生成したコードのレビュー・マージ作業は人間が担う必要があるため、カーネルメンテナーへの負担増につながっているという構図だ。
2024年の発言からの転換
この姿勢の変化は顕著だ。2024年にLinusはAI業界を「90パーセントがマーケティングで、10パーセントが現実」と切り捨てていた。それが今や自らのカーネル開発に組み込み、ブランチ名にまでAI活用を明記するに至った。
世界で最も影響力のあるOSカーネルの開発者が実用ツールとして評価を示したことは、AIコーディングツールの普及を考える上でひとつの指標になる。
詳細はLinus Torvalds Says He Likes Using AI, While His New Kernel Branch Credits Claude Codeを参照していただきたい。