10月5日、O'Reillyが「Zero to Agent in 30 Minutes: Build Your First Agent with MCP」と題した記事を公開した。既存のREST APIをModel Context Protocol(MCP)サーバーでラップし、コードを書き直さずにAIエージェントから呼び出せるようにする手順を、実際のデモを通じて解説している。
「既存APIをAI対応にする」——MCPサーバーの実用的な使い道
AIエージェントの台頭で「既存アプリケーションをどうAIと連携させるか」が開発現場の急務になっている。一からAI対応の新システムを構築すれば移行コストは膨大になるが、既存のビジネスロジックやAPIをそのまま活かすラッパーアプローチをとれば、その負担を大幅に圧縮できる。そこで注目されているのがModel Context Protocol(MCP)だ。
MCPはAnthropicが2024年11月に策定・公開したオープンプロトコルで、AIクライアントが外部ツールやデータソースを標準的な方法で発見・呼び出すための仕様である。従来、AIと外部システムを連携させるにはクライアントごとに独自のアダプターを実装する必要があったが、MCPはその通信仕様を統一することで、一度実装すれば複数のAIクライアントから利用できる状態を実現する。公式のMCP SDK(Python・TypeScript等)も整備されており、実装の敷居は低い。
この記事で紹介されているのは、AIデベロッパー・教育者のBruce Hopkins氏による動画セッションの内容だ。ポイントはシンプルで、既存のアプリケーションロジックを作り直す必要はないという点にある。MCPのインターフェース層を被せるだけで、既存のAPIをそのままAIクライアントに公開できる。
FastMCPとは何か
デモの実装に使われているのが、PythonライブラリのFastMCPだ。MCP公式SDKをベースに、ボイラープレートを大幅に削減したラッパーライブラリで、@mcp.tool()のようなデコレーターを関数に付与するだけでMCPツールとして登録できる設計になっている。FastAPIがWeb APIの実装を簡略化したように、FastMCPはMCPサーバーの実装を簡略化する位置づけのライブラリだ。なお、FastMCPはその有用性が認められ、2025年にMCP公式SDKへ統合されている。
デモの構成:株価APIをMCPツール化する
デモではTwelve Data API(現在・過去の株価を取得するREST API)を題材に、MCPサーバーを構築している。FastMCPを使い、MCP部分とビジネスロジック部分を明確に分離した構成をとる点が特徴だ。
手順は以下の5ステップだ。
- 既存APIの整理 — AIクライアントに公開したい操作・データを特定する
- MCPサーバーの作成 — MCPのSDKを使い、AIクライアントとアプリ間の橋渡し層を構築する
- ツール・リソースとして公開 — クライアントが発見・呼び出しできるよう、操作を登録する
- 利用方法の記述 — 名前・入力・説明・プロンプトを明示し、クライアントが何をどう使うかを理解できるようにする(株価シンボルの書式、日付フォーマットなども含む)
- クライアントと接続 — 対応トランスポート経由でサーバーを起動し、クライアントから利用可能な状態にする
デモのコードはBruce氏のGitHubリポジトリで公開されており、自分のAPIに合わせて流用できる。
「作り直し不要」が実装者にとって大きい
このアプローチの核心は、既存のAPIやビジネスロジックに手を入れずにAI対応できる点だ。FastMCPがMCP側のインターフェースを担い、株価取得ロジックはそのまま独立して存在する。AIクライアントはMCPのプロトコルを通じてツールを発見し、必要な引数を推論して呼び出す。
MCPは2024年後半から急速に採用が進んでおり、Claudeをはじめ、GitHub Copilot、Cursorなど複数のAIクライアントがすでに対応している。既存システムへの影響を最小限に抑えながらエージェント連携を追加したい現場には、このラッパー的な使い方が現実的な選択肢になる。
なお、この動画セッションはシリーズ形式で公開されており、YouTube・Spotify・Apple Podcastsで視聴可能だ。O'Reillyメンバーはライブ参加もできる。
詳細はZero to Agent in 30 Minutes: Build Your First Agent with MCPを参照していただきたい。