10月4日、Keumars Afifi-Sabetが「Quote of the day by ARC Prize co-founder François Chollet: 'OpenAI basically set back progress to AGI by five to 10 years'」と題した記事を公開した。TechRadarの『Quote of the day』形式のコラムとして、2024年6月にDwarkesh Podcastで収録されたFrançois Cholletの発言を紹介するものだ。Cholletは、LLM偏重の業界姿勢を批判し、OpenAIがAGI実現を5〜10年遅らせたと指摘している。
「LLMはAGIへの行き止まり」——Cholletの主張
François Cholletは、Googleでの研究者としての経歴を持ち、深層学習フレームワークKerasの作者としてエンジニアに広く知られる人物だ。そのCholletが、2024年6月のDwarkesh Podcastでのインタビューにおいて明確な見解を示した。
「OpenAIは基本的に、AGIへの進歩を5〜10年遅らせた」
— François Chollet
Cholletの論点は明快だ。LLM(大規模言語モデル)はニューラルネットワークを基盤とするアーキテクチャであり、AGI実現の観点からは行き止まりであるというものだ。LLMを改良すれば、より強力で自律的なシステムを構築し、ビジネス用途での実用性を高めることはできる。しかしそれは、人間と同様に推論し、訓練データの外で新しい能力を習得できる「AGI」とは本質的に異なる。
業界が巨額の資金をLLMに集中投下し続けた結果、別のアーキテクチャや研究アプローチが資源を奪われてきた。Cholletはこれを、AGI研究の「機会損失」と位置づけている。
ARC-AGIベンチマークとは何か
ARC Prizeは、「AGIに到達したかどうかをどう判定するか」という問いに答えるために2024年に設立されたコンペティションであり、その中核にあるのがARC-AGIベンチマークだ。Cholletがこのポッドキャストに出演したのは、ちょうどARC Prize設立と同じ2024年のことである。
AGI評価の指標はさまざまなものが乱立しているが、ARC-AGIは特に難易度が高く設計されている。現時点ではLLMがこのベンチマークで改善傾向を示しているものの、合格ラインには程遠い状態だという。
なお、Cholletはこの2024年6月の対談の中で、AGI自体のリスクについても言及している。
「もし安全に作る方法を見つけられなければ、それが私たちを滅ぼす可能性は十分にある。その確率を見積もる方法を誰も知らない——要は、私たちはこんな状況に置かれたことが一度もないのだ。自分たちより賢いものを作ったことなど、これまでになかった」
OpenAI・Anthropicの状況との対比
一方、OpenAIやAnthropicは直近でも積極的にAGI追求を公言している。元記事では、両社が相次いでサイバーセキュリティ侵害を含む懸念案件を開示していることも指摘されている。Cholletの視点から見れば、こうした動きは既存技術の能力をマーケティング目的で誇張しているに過ぎない、という見方もある。
AGIを本当に追いかけているのか、それとも高度なLLMをAGIと呼び替えているだけなのか——この問いは、業界全体が突きつけられている構造的な問題だ。
エンジニアへの含意
※編集部の考察
Cholletの主張が正しいとすれば、現在の主流であるTransformerベースのLLMアーキテクチャへの全面依存は、研究開発の方向性として再検討が必要になる。彼が示唆する「別の道」が何かについて、元記事では具体的なアーキテクチャ名は挙げられていないが、ARC-AGIベンチマーク自体が「訓練データに依存しない汎化能力」を測定対象としている点は、今後の研究の方向性を示唆している。
詳細はQuote of the day by ARC Prize co-founder François Chollet: 'OpenAI basically set back progress to AGI by five to 10 years'を参照していただきたい。