10月4日、Mark Tysonが「ChatGPT-6 Astra cracks 217-year-old Napoleonic code in just six hours」と題した記事を公開した。この記事では、OpenAIのGPT-6 AstraがナポレオンのフランS軍に宛てた217年前の未解読暗号を、画像1枚と単一プロンプトのみで約6時間で解読したことについて詳しく紹介されている。
単一プロンプトで217年ぶりの解読
サイバーセキュリティ企業SentinelOneのエンジニア、Carter Churchは、歴史的未解読暗号をまとめたデータベース「Cryptiana's Unsolved Historical Ciphers」に長年掲載されていたナポレオン時代の暗号をGPT-6 Astraに読ませた。入力したのは画像1枚とゴールを示す単一プロンプトのみ。Astraはそこから約6時間で解読を完了した。
解読結果と再現スクリプトを含む「full solution package」はChurchのブログから直接ダウンロードできる。
暗号の中身と歴史的文脈
解読された文書は、ナポレオンの義理の息子でイタリア副王のウジェーヌ・ド・ボアルネの司令部から、フランス将軍オーギュスト・ド・マルモンに宛てた1809年の通達だ。ナポレオンの作戦命令を中継した一種の部隊ブリーフィングであり、受信者のマルモンは当時の軍公式コードブックを使って解読するはずだった。それ以来、217年間誰にも読まれていなかった。
Churchが指摘する興味深い点は、この解読文がナポレオンの回顧録(没後に出版されたとされる文書)の欠落部分を補完することだ。当該文書にはオーストリア侵攻準備に関する命令が記されているが、「マルモンは"一握りの……"に足止めされてはならない」という箇所が途中で途切れている。今回の解読でその空白が「rabble(烏合の衆)」という単語で埋まった。
※なお、元記事では当該文書を「1865年の回顧録」と記述しているが、ナポレオンは1821年に没しており、1865年刊行であれば没後出版の可能性がある。元記事の表現を正確に踏襲しつつ、読者は留意されたい。
技術的なアプローチ:マルチモーダル処理と焼きなまし法
暗号文の構成はシンプルではない。文書の冒頭にはフランス語で記された序文的なフレーズ(暗号化されていない導入部)があり、続いて数字・アルファベット・独自記号が混在した24行の暗号本文が並ぶ構造だ。この導入部は平文として読めるが、暗号本文との橋渡しとなる文脈情報を含んでおり、解読の手がかりの一つとなった。
Astraが解読の糸口としたのは、この手紙とは別の場所に存在した部分的な鍵(partial key)だった。これを起点に、マルチモーダル処理と「simulated-annealing solver(焼きなまし法ソルバー)」——解の探索空間を確率的に反復探索する最適化アルゴリズムで、暗号解析や組合せ最適化問題に広く用いられる手法——を組み合わせて残りの暗号を解いたとChurchは説明している。
特筆すべきは、Astraがこの一連のワークフロー——画像の読み取り、部分鍵の活用、ソルバーの実装・実行、結果の照合——を人間の介入なしに単一セッションで完遂した点だ。従来、こうした歴史的暗号の解析には暗号史の専門家と計算機科学者の協働が必要とされてきたが、今回はそのプロセス全体をAIが代替した形となる。
この解読結果は「機械的にciphertextと照合可能(mechanically testable)」であり、公開されたソリューションパッケージで誰でも検証できる。Cryptianaのデータベースを管理するSatoshi Tomokiyoも当該エントリを「解決済み」にマークした。
Astraの「前歴」と今回の位置づけ
Tom's Hardwareの関連記事によれば、Astraは今回以前にも歴史的暗号の解読実績を持つ。同記事では、1941年のエニグマ暗号(85年前)を2日で解読し、第一次世界大戦時代のドイツ暗号(108年前)を初解読したとされている。ただしこれらはTom's Hardwareの関連記事における言及であり、一次ソースの確認が推奨される。
今回の解読は、そうした文脈の中でさらに古い時代(219世紀初頭)の文書に踏み込んだ事例として位置づけられる。
Churchが自身のXへの投稿で述べているように、「印象的なのは暗号解読そのものではなく、Astraがマルチモーダルなワークフロー全体を単一の画像とゴール指定だけで完遂したこと」だ。
"What makes this impressive isn't actually the codebreaking, but that Astra completed the entire multi-modal workflow in ~6 hours from a single image and goal."
— Carter Church(X、2026年9月30日)
つまり今回の成果の本質は「AIが歴史的暗号を解いた」という事実以上に、専門知識・複数ツールの連携・試行錯誤を要するワークフロー全体を、非専門家が自然言語だけで起動できる時代に入ったことを示している点にある。
詳細はChatGPT-6 Astra cracks 217-year-old Napoleonic code in just six hoursを参照していただきたい。