10月4日、CBS Newsが「Trump announces formation of AI "Super Intelligence Force"」と題した記事を公開した。トランプ大統領が「超知能フォース(SIF)」の設立を発表し、連邦政府として今後「AI」という呼称に代えて「超知能(Super Intelligence)」を使用するよう指示したと報じている。
「AI」から「超知能」へ——呼称変更が象徴するもの
まず目を引くのが呼称の変更だ。トランプ政権は連邦政府として「人工知能(AI)」という表現を使わず、今後は「超知能(Super Intelligence)」という言葉を使うよう指示している。単なる言い換えにとどまらず、規制主導だったバイデン前政権との路線断絶を象徴する政治的メッセージとして受け取るべき動きだ。
この方針変更と同時に、トランプ大統領は2025年10月5日、Truth Socialへの投稿で「超知能フォース(Super Intelligence Force、SIF)」の設立を正式に発表した。米国内の主要AI企業トップとのホワイトハウス会合(先週実施)を経ての決定となる。
投稿の中でトランプ大統領は「ホワイトハウス超知能協定に続き、世界で最も重要なテクノロジー企業が集まり、アメリカ国民への責任を確認した」と述べ、SIFが連邦政府と連携して「アメリカが世界の超知能リーダーシップを維持する」ことを目的とすると説明した。
トップにはジェイ・クレイトン情報長官
SIFのトップに就くのはジェイ・クレイトン(Jay Clayton)国家情報長官だ。CBS Newsはこの人事を先週の段階で「有力」と報じていた。
クレイトン氏はもともと弁護士・投資家出身で、トランプ第一次政権時(2017〜2020年)には証券取引委員会(SEC)委員長を務めた人物である。現在は国家情報長官として安全保障の統括に当たっており、そのポストのままSIFのトップも兼任する形となる。
クレイトン氏に加え、以下の3名もSIFの主要メンバーに任命されている:
- アンドリュー・ファーガソン(Andrew Ferguson):連邦取引委員会(FTC)委員長
- エミル・マイケル(Emil Michael):国防総省・研究工学次官兼最高技術責任者(CTO)
- スコット・クポール(Scott Kupor):人事管理局(OPM)長官
これら4名はトランプ大統領およびホワイトハウス首席補佐官のスージー・ワイルズ(Susie Wiles)に直接報告する体制となる。
任意の安全基準と「道徳的拘束力」
SIF発足の前週、ホワイトハウスではOpenAI、Anthropic、Google、Meta、Nvidia、イーロン・マスク氏が率いるxAIのトップが集まり、**任意の安全基準**に署名した。
トランプ大統領はこの合意を「道徳的拘束力を持つ(morally binding)」と表現した。公開された1ページの合意文書によると、各社は以下の4層の管理・監査体制の整備を約束している:
- 内部評価
- 外部審査機関によるオーディット
- 各社取締役会によるレビュー
- 4層目については元記事の文書に明記されておらず、詳細不明
また、各社は定期的に会合を開き、システムの安全性向上に向けた標準・ベストプラクティスの策定に取り組むことでも合意した。
ただし、あくまで「任意(voluntary)」の枠組みであり、法的拘束力を持たない。トランプ大統領は「大きなセルフポリシングが見られており、彼らは自主規制しなければならないことを理解している」と述べており、政府主導の規制よりも業界の自律性を重視する姿勢が明確に出ている。
政策としての位置づけ——バイデン政権との対比
バイデン前政権は2023年10月、大統領令14110を発動し、高リスクAIシステムに対する安全評価の義務付け、連邦機関へのガイドライン整備、NISTによる基準策定支援など、政府が主導する規制的アプローチを採っていた。トランプ政権は就任直後にこの大統領令を撤回しており、SIFの設立はその延長線上にある。
規制よりも競争優位を前面に押し出す姿勢は一貫しており、SIFはその象徴的な組織と位置づけられる。一方で、任意の安全基準への署名という形で業界との協調関係も維持しており、「規制なき放任」とも異なる独自路線を模索していると言えるだろう。
詳細はTrump announces formation of AI "Super Intelligence Force"を参照していただきたい。