10月4日、Ryan Merketが「Aleph Alpha releases German AI model with 78 GB of FP8 weights」と題した記事を公開した。ドイツのAI企業Aleph AlphaがApache 2.0ライセンスのオープンウェイトLLM「Kolibri」をリリースした。欧州のAI主権確立を掲げ続けてきた同社が、その理念を初めてダウンロード可能なオープンウェイト形式で具体化した点が注目される。
「主権AI」をダウンロード可能な形にした781億パラメータモデル
Aleph Alphaは2026年10月3日、ドイツ統一記念日に合わせてKolibriをリリースした。Hugging Faceのモデルカードでウェイトが公開されており、ライセンスはApache 2.0だ。
モデルの主要スペックは以下の通り:
- 総パラメータ数: 781億(78.1 billion)
- トークンあたりのアクティブパラメータ数: 34.6億(3.46 billion)
- ウェイトサイズ: FP8で約78GB
- 最低動作環境: A100 80GB GPU × 2枚
- コンテキストウィンドウ: ネイティブ262,144トークン、最大1,048,576トークンまで検証済み
なお、元記事タイトルの "78 GB of FP8 weights" はウェイトファイルのサイズを指す表現であり、パラメータ数とは別の概念だ。総パラメータ数は781億(78.1B)、推論時に実際に使われるアクティブパラメータ数は34.6億(3.46B)と、それぞれ区別して理解する必要がある。
アーキテクチャは**Mixture of Experts(MoE)**を採用している。50層構成で、元記事の記述によれば各トークンの処理には6個のルーティングエキスパートのみが使われる設計となっており、1トークンあたりの計算量を抑えている。一方でフルモデルをメモリに展開する必要があるため、最低でも2枚のA100 80GBが必要となる。
ドイツ語処理のための専用設計——トークナイザーが面白い
Kolibriの訴求点の核心はドイツ語への特化だ。
事前学習の20兆トークンのうち、5分の1以上(約4.3兆トークン)がドイツ語データ。さらに中間学習・長文コンテキスト拡張を合わせると総学習トークン数は24兆に達する。加えて、ドイツ語の複合名詞(例: Kraftfahrzeughaftpflichtversicherung)を効率的に処理するために12万8000トークンのバイリンガルトークナイザーを独自開発している。
このトークナイザーの効率がどれほどかは、AIエンジニアのTejas Kumarが行った比較テストが参考になる。ドイツ連邦基本法のテキストを各モデルのトークナイザーで処理したところ:
- Kolibri: 35,190トークン
- GPT-4o / GPT-5: 41,482トークン
Aleph Alphaの技術レポートでは、自社評価においてGPT-5比で11.2%少ないトークン数だったとしている。トークン数の削減は、そのまま推論コストの削減につながる。ただしこの数値はAleph Alpha自身による評価であり、独立した第三者機関による検証ではない。またKumarのテストも1つの法律文書のみを対象としており、ドイツ語全般の性能を示すものではない点は留意が必要だ。
「主権AI」の実態——どこまでオープンか
Aleph Alphaは「主権AI(Sovereign AI)」という言葉を全面に押し出しているが、その意味を正確に理解しておく必要がある。
オープンな部分: ウェイトと設定ファイルはApache 2.0で公開されており、顧客は自社インフラ上で自由にデプロイできる。
クローズな部分: 学習コードや手法はAleph Alphaが権利を保持している。また、学習パイプラインではGoogle Gemma 4やMistral-NemoをWebテキストのリフレーズに、Qwen3-32Bをデータ品質フィルタリングのラベリングに使用している。
ここでの「主権」とは法的管轄権・運用上のコントロール・ローカル実行能力を指すものであり、外部AIを一切使わない完全独立したサプライチェーンを意味するわけではない。
性能についてはAleph Alphaが「同規模モデルの中で英語・ドイツ語評価ともに最高スコア」と主張しているが、繰り返しになるがこれは自社評価であり、独立した第三者ベンチマークによる裏付けは現時点では確認されていない。
想定ユーザー層は明確
最低2枚のA100 80GBが必要という要件は、ターゲット層を絞り込む。記事が示す主な対象は、機密文書を外部推論プロバイダーに送りたくない政府機関、銀行、製造業だ。オンプレミスのデータセンターGPUを調達できる組織であれば、その投資を正当化できる可能性がある。
Aleph Alphaは2019年にJonas AndrulisとSamuel Weinbachが共同創業した企業だ。「欧州の機関が機密システムの制御を少数の海外プロバイダーに委ねることなく先端AIを構築できる」という創業時の主張を、Kolibriで実装形式に落とし込んだ形といえる。
詳細はAleph Alpha releases German AI model with 78 GB of FP8 weightsを参照していただきたい。