10月3日、Leanne Maxwellが「Newsom Sticks It to Trump, Signs 'No Robo Bosses Act' and Several Other AI Bills」と題した記事を公開した。カリフォルニア州知事ニューサムが「No Robo Bosses Act」をはじめとする複数のAI関連法案に署名し、AIのみによる解雇・懲戒を法律で禁じる州として全米初の事例となった。職場・医療・法律の各分野に広がる規制の全容と、トランプ政権との対立構図を整理する。
AI上司による解雇を全米初で禁止
今回の法案群の核心はSB 947「No Robo Bosses Act」だ。カリフォルニア州の雇用主が、AIによる自動化された意思決定システムだけを根拠に従業員を解雇・懲戒することを禁じる、全米初の法律となる。
「全米初」という表現は元記事の記述に基づく。同種の立法は他州では確認されておらず、全米州議会議員連盟(NCSL)のAI立法動向でも雇用分野のAI規制は散発的にとどまっている。(※編集部の考察)
具体的には、AIが解雇・懲戒の判断に「主として関与した」場合、人間がその決定を見直し、管理職の評価・業務実績・人事記録といった別の情報で裏付けなければならない。また、雇用主は従業員に対し、
- AIが主として使用された旨の書面通知
- システムが使用したデータの内容
- 決定を説明できる人間の担当窓口
を提供することが義務付けられる。施行は2027年7月。
法案を提出した州上院議員Jerry McNerneyは「AIであろうとなかろうと、機械に解雇や懲戒をされる労働者がいてはならない」と述べた。
なお、ニューサムは昨年、同名の前身法案に拒否権を行使している。前バージョンには「AIが労働条件に影響を及ぼし得る場合の事前通知義務」が含まれており、ニューサムはこれを「過度に広範」と批判した。McNerneyは今年の再提出にあたり、この事前通知条項を削除した。
さらに、UberやLyftが強く反発していたギグワーカーへの保護規定も最終的に外された形で通過した。ギグワーカーはカリフォルニア州でも独立契約者として扱われるケースが多く、雇用法上の保護の対象外となりやすい。今回の適用除外により、ライドシェア・フードデリバリー等のプラットフォームで働く労働者はSB 947の恩恵を受けられない。業界ロビー活動が立法の射程を狭めた典型例といえる。
職場監視・医療・法律分野にも波及
同日署名された他の法案も、AIの職場利用に広範な制限を加える。
- 従業員の感情状態の推定や神経データの収集を試みるシステムの制限
- トイレへの職場監視ツールの設置禁止
- 技術的変化(テクノロジカル・ディスプレイスメント)による人員削減の際、レイオフ通知への追加情報の記載義務
医療分野ではAB 1979が成立し、医療機関がAIを使って有資格の医療専門職の臨床的判断を代替することを禁止する。AIは補助的に用いることができるが、最終判断は医療提供者が下す。医療用チャットボットへの守秘義務の適用拡大も盛り込まれた。カリフォルニア看護師協会会長のSandy Reding氏は「AIは医療従事者の臨床判断を支援するものであり、置き換えるものではないと主張し続けてきた」と述べた。
さらに弁護士などの法律専門家が中核的な法律業務を全面的にAIへ委託することを制限する法律、公立高等教育機関に対するAIのトレーニングおよび調達基準の策定義務も同日署名された。
AIが生成したディープフェイク・デジタルレプリカ・なりすましへの新たな保護規定、デジタルウォーターマークや来歴データに関する要件強化も含まれている。
トランプ政権との対立を鮮明に
署名の翌日、ニューサムはトランプ政権のAI政策を正面から批判した。トランプ大統領は前日にGoogle・Meta・Anthropic・OpenAI・xAI・NVIDIAのトップを集めたホワイトハウス昼食会を開き、AIの安全対策に関する「道義的拘束力を持つ(morally binding)」と自ら表現した自発的合意を取り付けていた。
「昨日ワシントンDCで聞いたことはでたらめだ。誰もが怖れるべきことだ」とニューサムは動画で述べた。
加えてニューサムは、カリフォルニア州政府機関がこの技術を指す際、トランプが連邦政府に使用を命じた「Super Intelligence(超知性)」という呼称ではなく、引き続き「artificial intelligence(人工知能)」と呼ぶよう命じる大統領令を発した。
現実への影響:サンフランシスコのAI運営店舗にも直撃
今回の法律は、サンフランシスコのCow Hollowで運営されているAI管理型コンビニAndon Marketにも影響を及ぼす可能性がある。元記事によれば、同店のAIエージェント「Luna」は今年8月に初めて人間の従業員を解雇しており、運営スタートアップの人間スタッフの関与のもとで行われたとされている。2027年7月以降はこうした判断プロセスに人間のレビューと書面通知が必須となる。Andon MarketおよびLunaの詳細については元記事内での言及にとどまるため、実態の確認は元記事および同社の公式情報を参照されたい。
今回の一連の法律はニューサムが構築してきたAI規制フレームワークの最新の積み重ねだ。先月には独立機関によるAIモデルの安全性・リスク評価システムの設立、州のAI監査人登録制度・基準策定を定める法律にも署名している。
詳細はNewsom Sticks It to Trump, Signs 'No Robo Bosses Act' and Several Other AI Billsを参照していただきたい。