10月2日、The Next Webが「Tencent leases 100,000 Oracle AI chips abroad in a $7bn deal」と題した記事を公開した。Tencentが米国の輸出規制のもとで合法的に認められた海外リースの仕組みを活用し、Oracleと70億ドル規模・10万枚のAIチップを確保したことが明らかになった。Financial Times(FT)が関係者への取材をもとに報じた内容であり、中国テック企業による海外コンピューティング調達の規模と戦略が改めて注目を集めている。
中国外で10万枚のAIチップを確保
Tencentは今年、Oracleと5年間のリース契約を締結した。対象は約10万枚の高性能AIチップで、これらは中国国内では入手できないものだ。チップは東南アジアの複数のOracleデータセンターに置かれている。
契約総額は約70億ドルで、Tencentは約30%を前払いしている。FTが関係者への取材をもとに報じた内容であり、The Next Webが独自に確認したものではない。
重要な点は、この取引が現行の米国輸出規制の枠組みのもとで合法的に成立していることだ。米国の規制はAIチップの中国への直接輸出を制限しているが、海外クラウドを経由したリース利用は認められている。Tencentにとってはこれが米国クラウドプロバイダーとの最大の海外リース契約となる。
同様の戦略は業界全体に広がる
こうした海外でのコンピューティングリソース調達はTencentだけの動きではない。ByteDanceは英国のクラウド企業Nscaleの2025年売上の約**75%**を占めており、ノルウェーのデータセンターを活用してNVIDIA B200チップを大量に確保している。米国の輸出規制が強化される中、中国の大手テック企業が海外リースを通じてAIインフラを積み上げる流れが業界全体で定着しつつある。
Tencentのキャッシュフローが10年超ぶりのマイナスに
この大型投資の財務的な影響は決算にも表れている。Tencentのフリーキャッシュフローは2024年第2四半期に約138億元(約20.6億ドル)のマイナスに転じた。FTによれば、これは10年以上ぶりの赤字転落だ。
CFOのJohn Lo氏は、AIインフラへの大規模支出とコンピューティングの前払いが主因だと説明している。
Tencent社長のMartin Lau氏は次のように述べている。
「AIへの大規模投資を行うことに我々は抵抗がない。大きなアップサイドが見込めるだけでなく、明確なダウンサイド保護も存在するからだ。」
調達したコンピューティングリソースの用途については、まず大規模なHunyuan(混元)モデルのトレーニングに使い、その後の推論(実行)フェーズに回す計画だ。将来的にはTencent Cloudを通じて外部に貸し出すことも検討している。
なお、Tencentは中国の半導体メーカーEnflame(燧原科技)にも出資しており、同社は9月の上海市場デビューで株価が約3倍に跳ね上がった。海外リースによる短期的なチップ確保と並行して、国産チップへの長期的な投資も着実に進めている。
Oracleへの影響
今回の契約はOracleにとっても大きな意味を持つ。Oracleは現在、AIデータセンターへの投資が収益を上回る状況が続いており、フリーキャッシュフローは複数四半期にわたってマイナスとなっている。同社はデータセンター拡張に収益以上の資金を投じており、Tencentとの長期・大型契約はそうした先行投資の回収に向けた足がかりとなりうる。
ただし、株式市場の反応は限定的だった。報道が出た木曜日もOracleの株価はほぼ動かず、年初来では29.5%下落した水準にとどまっている。この下落はAIデータセンター投資の先行コスト拡大に対する市場の懸念を反映したものであり、Tencentとの契約単体が直接の要因ではない点に留意が必要だ。
米国の輸出規制という制約の中で、中国の大手テック企業が海外リースという合法的なルートを通じてAIインフラを積み上げる構図が、今回の契約でくっきりと浮かび上がった。
詳細はTencent leases 100,000 Oracle AI chips abroad in a $7bn dealを参照していただきたい。