10月3日、MacStoriesが「OpenAI's Dots: A First Look」と題した記事を公開した。OpenAIが発表したパーソナルエージェント「Dots」の実使用レポートであり、「AIに仕事を頼む」体験がどう変わるかを具体的に示す内容となっている。AIアシスタントの最大の欠点の一つは「昨日話したことを覚えていない」ことだったが、Dotsはその前提を覆す設計を持つ。
ChatGPT内に常駐するパーソナルエージェント「Dots」とは
OpenAIは年次開発者向けカンファレンス「DevDay」にて、ChatGPTアプリ内で動作するパーソナルエージェント「Dots」を発表した。MacStoriesはDevDayに参加し、早速Dotsを設定して実運用に入った。その名は「Puck」——シェイクスピアの『夏の夜の夢』に登場するいたずら好きの妖精にちなんだものだ。
Dotsの本質は「永続エージェント」にある。従来のChatGPTでは、セッションをまたぐたびに文脈がリセットされ、「前回の続き」を再現するにはユーザー側で工夫が必要だった。Dotsはこの問題を構造的に解消する設計を持つ。
Dotsの基本的な仕組みは以下のとおりである。
- クラウドベースの永続エージェント:会話スレッドがモバイル・デスクトップ間で常に同期される
- 専用の仮想Linuxマシンを持ち、タスク実行の基盤として機能する
- ChatGPTに接続済みのプラグインやツールを、ユーザーの許可を得たうえで利用できる
- ベースモデルはAstra(※元記事では「OpenAIの汎用性の高いマルチモーダルモデル」と表記されているが、AstraはGoogle DeepMindのプロジェクト名としても知られており、読者は注意されたい。本稿は元記事の表記に従う)
- モデルの選択や推論レベルの指定は不要——「何かやっておいて」と頼むだけで動き出す
初期セットアップでは、Dotsは最小限の権限からスタートし、タスクに応じて追加の権限を段階的に要求する設計になっている。この「許可を求めるペース配分が自然で、煩わしさを感じなかった」とMacStoriesは評価している。
実運用で見えた強みと限界
CodexのProjectsとの使い分けが鍵
ここで言う「Codex」とは、OpenAIが提供するコード生成・タスク実行系のAIエージェント機能(ChatGPT内の「Codex」)を指す。MacStoriesはこれまで、CodexのProjectsプロジェクトで日々の作業スレッドを管理していた。新規スレッドを立てるたびに前回の文脈を失うという問題があり、常に最新スレッドをピン留めして対処していた。
Dotsはこの問題を解消する。単一スレッドが常に同期され、ツールへのアクセスを維持したまま翌日以降も文脈が引き継がれる。サイドバーの「New Chat」の直下に固定表示されるため、見失うこともない。モデル選択の手間もなく、「Max effortで足し算をさせてしまった」という類のミスも起きない。
実際の運用として、小さなタスクはDotsに任せ、本格的なプロジェクトに育ったものはCodexのスレッドに切り出す、という使い分けが機能しているという。
Macとの連携に制約あり
クラウドベースゆえの制約として、接続できるMacは同時に1台のみという仕様がある。MacStoriesの環境では、Mac Studioで作業しながら2台のMac miniをサーバーとして運用しているが、Mac miniにDotsを接続するには、そのMac miniに直接アクセスして権限を付与する必要がある。外出先のWi-Fi環境が悪いときには、この手順は現実的でない。
記事では、この制約の解決策としてTailscaleのMeta Muse対応事例に言及している。TailscaleはVPNベースのネットワーク管理ツールであり、AIエージェントをネットワーク上の「エンティティ」として登録・管理することで、複数マシンへの安全なアクセスを仲介する仕組みを持つ。DotsがこのTailscaleエンティティとして扱われれば、物理的に離れたMacへの接続も煩雑な権限操作なしに実現できる、という趣旨だ。
「Dotsは1つだけ」問題
現時点ではDotsは1つしか作れない。並行プロジェクトが増えると1スレッドに全会話が集積し、検索もきかないため目的の会話を探し出すのが困難になる。
OpenAIはこの制限について、哲学的な理由ではなくサーバーキャパシティの保守的な管理が主因だと説明しているという。また、「Astraは汎用モデルだから1つで十分」という立場も示しているが、用途の分離(個人と仕事、プロジェクトAとB)という観点では不十分だ。
マルチDotsの将来的な提供は計画されており、OpenAIもGrokのマルチエージェントアプローチの人気を把握していると記事は伝えている。
現時点での評価
現状、Dotsのサブスクリプション消費への計上は行われていない(DotsがCodexやWorkセッションを開始した場合を除く)。この点は、日常的な軽タスクを気軽に任せるうえでの利点となっている。
MacStoriesが描く理想像は、Dotsが複数のCodexプロジェクトを横断的にオーケストレートし、複数のMacに介在なしにアクセスできる形だ。RPGのパーティー編成になぞらえ、役割の異なるDotsチームを組む将来像も示している。
現時点では単一Dotsの制約が大きいものの、Codexとの使い分けを前提とした運用では十分な実用性があるという評価である。
詳細はOpenAI's Dots: A First Lookを参照していただきたい。