10月2日、Inside AI Newsが「Cloudflare AI Search Goes GA with Multimodal Embeddings and New Pricing」と題した記事を公開した。CloudflareのマネージドAI検索サービス「AI Search」が正式版(GA)に移行し、マルチモーダル埋め込み対応と新料金体系を発表した内容だ。
画像をテキストに変換せず、ピクセルのまま検索する
今回のGAリリースで最もエンジニアの関心を引くのが、マルチモーダル埋め込みへの対応だ。
従来のAI検索では、画像を検索対象にするにはキャプション(説明文)に変換してからテキスト埋め込みを行う手順が一般的だった。しかしこの方法では、商品のテクスチャ、スクリーンショットのUI状態、グラフの視覚的な関係、ドキュメントのレイアウトといった視覚的な細部が失われてしまう。
Cloudflareはこの問題に対し、Qwen3-VL-Embeddingモデルを用いて画像ピクセルを直接埋め込むアプローチを採用した。Qwen3-VL-Embeddingは、Alibaba Cloudが開発するQwenシリーズのビジョン言語モデルをベースにした埋め込み専用モデルで、テキストと画像を同一のベクトル空間に変換できる点が特徴だ。
「画像は、それを説明する一文以上のものだ。商品のテクスチャ、スクリーンショットの状態、チャートの関係性、ドキュメントのレイアウト、微細な視覚的詳細——これらはすべて、ピクセルをキャプションに圧縮した時点で消える」
— Cloudflare公式アナウンスより
埋め込みの効率化にはMatryoshka Representation Learning(MRL)を採用している。MRLとは、埋め込みベクトルを入れ子構造(ロシア人形のように)で表現する手法で、精度とストレージ効率のトレードオフを柔軟に調整できる。これにより、視覚的に類似した商品の検索やスクリーンショットのマッチングのような、言葉だけでは表現しにくいクエリに対応できるという。
Workers AI・Vectorize・R2を束ねるマネージドパイプライン
AI SearchはCloudflareの既存サービスを組み合わせたマネージド検索パイプラインとして動作する。具体的にはWorkers AI、Vectorize(ベクトルDB)、R2(オブジェクトストレージ)、Browser Runを統合した構成だ。
パーシング、チャンキング、埋め込み、キーワードインデックス作成、リランキングといった中間処理は、課金対象にならない。
今回のアップデートで、ファイルサイズ上限がテキストファイル・PDFともに10 MiB(従来の4 MiBから引き上げ)となり、スキャンした書類向けのOCR(光学文字認識)にも対応した。OCRは全アカウントで利用可能で、新料金体系では画像処理インジェストトークンとして課金される。
課金は11月1日から。フリーティアの内容も変更
課金開始は2026年11月1日。プレビュー期間は1年以上にわたって提供されていた。
料金体系は次の3要素で構成される:
- コンテンツのインジェスト
- データストレージ
- クエリ
フリーティアは月間セマンティック検索クエリ1,000回+全文検索クエリ1,000回。以前発表されていた「2,000クエリの共有プール」から変更されている点に注意が必要だ。
Cloudflareは課金開始前にリマインダーメールを送信するとしている。
今後のロードマップ
Cloudflareは今後、以下の機能拡張を予告している:
- 動画・音声ファイルのインジェストパイプライン対応
- キーワード検索エンジンのスケーラビリティ向上に向けたリファクタリング
- Cloudflare上のウェブサイト向けのインデックス作成の簡素化
これらの拡張はいずれも、AIエージェントがコンテンツを自律的に発見・取得するユースケースを意識した方向性だ。LLMを組み込んだエージェントが外部情報を検索・参照する場面が増える中、検索インフラ側も画像や動画を含む多様なコンテンツを低レイテンシで扱える必要があり、Cloudflareはその受け皿としてAI Searchを位置付けていると読み取れる。なお同サービスはすでにCloudflare自身のブログや開発者向けドキュメントの検索にも使われており、実績がある。
詳細はCloudflare AI Search Goes GA with Multimodal Embeddings and New Pricingを参照していただきたい。