10月1日、Eric Gellerが「SOC staffers generally pleased with AI's impact, but worries remain」と題した記事を公開した。AIがSOCアナリストのキャリアと業務にどのような影響を与えているかについて、500人規模の調査をもとに詳しく論じている。
AIはSOCの仕事を「楽にしているが、不安も残る」
セキュリティ運用センター(SOC: Security Operations Center)でAIが急速に普及する中、働く側はAIをどう受け止めているのか。エージェンティックAI(自律的に複数ステップのタスクを実行するAI)を手がける企業Swimlaneが、米国・英国のセキュリティ従事者500人を対象に実施した調査(2025年8〜9月)がその実態を示している。調査対象にはCISOや経営層から現場のSOCアナリストまで幅広い職種・役職が含まれており、業界横断的な傾向を把握する上での一定の参考値となっている。
結論から言えば、満足度は高い。しかしキャリアへの不安も根強い、という二面的な状況だ。
満足度は上がっている、スキル習得は二分
- 62% がAIによってサイバーセキュリティのスキル習得が促進されたと回答。そのうち 92% が職務満足度の向上を報告した。
- 一方、24% はAIがスキル開発の妨げになっていると回答。それでも、その層の 91% が「AIの導入で仕事への満足度が上がった」と答えている。
満足度が高い理由の一つは、単純作業の削減だ。既知の脅威パターンの調査時間を削減できたと答えた割合は 4割超。アラートのトリアージや修正推奨の作成でも、約 3分の1 が時間短縮を実感している。
バーンアウト(燃え尽き症候群)によってセキュリティ職を離れることを検討する人が増えているという調査もある中、こうした負荷軽減の効果は現場にとって無視できない。
「SOCアナリストの仕事は今後取りにくくなる」——47%が予測
職務満足度は高くても、キャリアの将来像には警戒感が漂う。回答者の47%が、SOCアナリスト職は将来的に就きにくくなると予測している。AIが繰り返し作業を代替し、企業がコスト削減を進める中、エントリーレベルのポジションが縮小するという懸念だ。
ただし、AIに全てを任せられるわけではない。約半数の回答者が、AIの推奨が証拠と矛盾する場合には自分の判断を優先すると回答。また 5人に1人 が「チームがAIに過度に依存することが最大の懸念」と答えており、AIへの過信リスクは現場でも意識されている。
Swimlaneはレポートの中でこう述べている。
「AIが調査業務をより多く担うようになるにつれ、アナリストは証拠の検証、例外処理、より影響度の高い意思決定に責任を持つようになる」
経営層と現場のギャップも浮き彫りに
調査では、AIへの認識に経営層と現場の乖離も確認された。
- 「AIの活用が広範囲に及んでいる」と答えた割合:経営層74% vs 現場49%
- 「AIによってより多くのセキュリティ業務を管理できるようになった」と答えた割合:経営層52% vs 現場36%
Swimlaneはこの差について「同じ組織内でのペアリング調査ではないため、同一環境についての意見の相違を示すものではない」としつつも、「経営層は投資の優先順位を設定し、成功を定義し、結果を外部に伝える立場にあるため、このパターンは重要だ」と指摘している。
まとめ:構造変化が迫るSOCキャリアの転換点
AIはSOCの現場でルーティン作業を確かに削減しており、スタッフの満足度向上に寄与している。その半面、エントリーレベルの雇用が減少し、戦略的判断を要するハイレベルな業務への移行が進むという構造変化が起きつつある。
こうした傾向はSwimlaneの調査に限らない。セキュリティ人材の需給ギャップはグローバルで深刻化しており、ISC²の調査では世界的なサイバーセキュリティ人材不足が数百万人規模に達すると指摘されている。AIによる自動化がその不足を補う一方で、初級職が減少すれば次世代人材の育成パスが細るという逆説も生まれかねない。今回の調査が示す「現場の不安」は、単なる心理的なものではなく、業界構造そのものの変化を映したものとも読める。
「AIに使われる」のではなく「AIを監督する」側に回れるかどうかが、今後のSOCキャリアの分かれ目になりそうだ。
詳細はSOC staffers generally pleased with AI's impact, but worries remainを参照していただきたい。