10月1日、Java Code Geeksが「Design Patterns for AI Agents」と題した記事を公開した。この記事では、AIエージェントを本番環境で信頼性高く動作させるための設計パターンを体系的に整理している。
LLMを使ったプロトタイプはすぐ動く。しかし「本番で壊れる」のも早い。複数ステップにまたがるタスクで、エージェントが無限ループに陥ったり、不要なツールを呼び続けたりする失敗は、モデルの能力不足よりも制御構造の設計ミスに起因することが多い。AIエージェント設計の核心は、モデルの賢さよりも制御構造の選択にある、というのが記事の基本的な立場だ。
AIエージェントの基本構造
記事では、AIエージェントを「モデルがゴールを解釈し、意思決定を行い、ツールやサービスを呼び出して結果を返すシステム」と定義している。典型的な実行フローは以下のとおりだ。
goal → reason → act → observe → evaluate → finish or continue
重要なのは「このサイクルをすべてのタスクに適用する必要はない」という点だ。単純なタスクはモデル呼び出し1回で完結し、複雑なワークフローだけが複数ステップを繰り返す。
5つの設計パターン——最も使い分けが問われるのはこれ
記事の中核は5つのパターンの整理だ。全部を同列に扱うより、「どこで使い分けるか」が実装者には刺さる。
最も基本:Single Shot Agent(シングルショットエージェント)
1つの明確なリクエストを受け取り、限定的な推論またはツール呼び出しを実行して応答する。分類、抽出、文章ドラフト、シンプルな検索といった用途に向く。速く、安価で、テストしやすい。
ただし、曖昧さや依存するステップへの対応力は低い。入出力の契約を厳密に定義することが前提となる。
※元記事では「Single Short Agent」と表記されているが、文脈および一般的な用語に照らすと「Single Shot Agent」の誤記または表記揺れの可能性がある。本記事では「Single Shot Agent」に統一した。
最も汎用的:Iterative ReAct Agent
「推論して行動し、結果を観察して次を考える」サイクルを繰り返す。調査、トラブルシューティング、ツール活用タスクに適しており、実行トレースが監査可能な点が強みだ。
一方でループが止まらなくなったり、不必要にツールを呼び続けるリスクがある。イテレーション上限、コスト予算、完了条件を必ず設定することが推奨されている。
ReActパターンはGoogle Researchが2022年に発表した手法で、LLMエージェント研究の出発点として広く参照されている。LangChainやAutoGenといった主要フレームワークも、このReActループを実装の基盤として採用している。
その他の3パターン
| パターン | 一言まとめ |
|---|---|
| Planner–Execute Agent | ゴールをまず計画に分解し、各ステップを順次実行。長いワークフロー向け。計画が古くなるリスクに注意 |
| Reflexive Agent | ドラフトを生成→自己批評→修正のサイクルで品質を高める。コード生成や文章タスク向け。ただし自己批評は独立した検証ではない |
| Verifier-Gated Agent | 生成結果を別の検証ステップにかけ、合格したもののみ出力。ポリシーチェックやコンプライアンスが絡む高リスク業務向け |
Reflexive Agentは自己批評によって品質を高められる反面、同一モデルが生成と批評の両方を担う構造上、同じ誤りを繰り返すリスクがある。「いつ繰り返しを止めるか」の終了条件設計が実装上の肝になる。
Verifier-Gated Agentは検証ステップを別に設けることで独立性を確保できるが、「何をもって合格とするか」の検証ロジック自体の品質がシステム全体の信頼性を左右する。検証器の誤検知率・見逃し率を事前に評価しておくことが重要だ。
記事は「これらは相互排他ではない」と明示している。本番システムでは、プランナーでタスクを分解し、ReActスタイルで各ステップを実行し、最後にベリファイアで結果を確認する、という組み合わせが現実的だ。
パターン選択の判断軸
記事が提示する判断基準は明快だ。
- タスクの複雑さ:依存ステップが多ければ計画・反復実行が有効
- 不確実性:途中で得た情報が次の行動を変えるならReActが合う
- リスク:重要・取り消し不能なアクションには検証や人間の承認が必要
- コストとレイテンシ:推論・ツール呼び出し・検証のステップが増えるほど時間とコストが増加
- 観測可能性:ログやツール実行結果が、障害や判断の追跡を可能にする状態を保つ
まず最もシンプルなパターンから始め、タスクの複雑さとリスクが正当化する場合にのみ計画・反省・検証を加える、というのが記事の推奨方針だ。
信頼性とガードレール
モデルの精度だけではエージェントの信頼性は担保できない。記事が挙げる主なガードレールは以下のとおり。
- 最大イテレーション上限
- ツール権限の制限
- 時間・コスト予算
- 構造化出力
- 入力バリデーション
- リトライポリシー
- 明示的な完了条件
センシティブまたは取り消し不能なアクションには、実行前に人間の承認を必須とすることも推奨されている。エージェントはタスクを完了できない場合、無限に継続したり推測したりするのではなく、停止・報告・情報要求・エスカレーションができるように設計すべきとされている。
評価は最終出力だけを見てはいけない
エージェント評価で陥りやすいのが、最終応答の品質だけを確認するパターンだ。記事では、最終答案が正しく見えても「不要なツールを使った」「制約を無視した」「安全でない行動をとった」ケースが存在することを指摘している。
評価すべき指標として挙げられているのは、タスク成功率、ファクト精度、ツール呼び出しの正確性、ステップ数、レイテンシ、コスト、ポリシー準拠、障害からの回復能力だ。テストにはエッジケース——ツール不在、不完全な入力、矛盾した情報、予期しないツール応答——も含めるべきとされている。
詳細はDesign Patterns for AI Agentsを参照していただきたい。