10月1日、Tom's HardwareのEtiido Ukoが「DeepSeek and Huawei release open-source Ascend AI programming tools to reduce reliance on Nvidia CUDA ecosystem」と題した記事を公開した。DeepSeekとHuaweiがNvidiaのCUDAエコシステムへの依存を低減するため、Huawei製AIチップ「Ascend」向けのオープンソースプログラミングツール群を共同リリースしたことを報じている。
CUDAの牙城に挑む、DeepSeek+Huawei連合
NvidiaのAI覇権を支えてきたのは、チップの性能だけでなくCUDAという成熟したソフトウェアエコシステムだ。開発者がNvidiaのGPUを使い続ける最大の理由の一つが、このエコシステムへの依存である。今回のリリースは、その構造に真正面から切り込もうとする試みだ。
DeepSeekは9月30日、HuaweiのAscendチップ向けのオープンソースライブラリおよびプログラミング言語サポートを公開した。Huaweiが開発全般にわたり全面的な支援を提供しており、実質的な共同開発である。
リリースの中身:3つのコンポーネント
DeepGEMM-Ascend
行列積演算(GEMM)をはじめ、DeepSeekのモデルで使われる各種計算を担うライブラリ。BF16、FP8、FP4の演算をサポートする。既存のDeepGEMMライブラリと同じAPIインターフェースを採用しており、NvidiaのGPUで開発してきた開発者がAscendに移行する際のコード変更コストを最小化する設計になっている。
DeepEP-Ascend
学習・推論時のチップ間通信を担うライブラリ。MoE(Mixture-of-Experts)モデルにおいて、各エキスパートへのデータルーティングとその出力の集約処理を行う。DeepSeek自身がMoEアーキテクチャを採用したモデル(DeepSeek-V3等)を開発していることもあり、実践的な動機から生まれたライブラリといえる。
両ライブラリはAscend 950ハードウェア上で開発・テスト済みだ。また両社は、128枚のAscend 950チップで構成されるスーパーノードシステム上での演算・通信最適化にも共同で取り組んでいる。
TileLang のAscend 950ネイティブ対応
TileLangは、最適化されたカーネルを記述するための高水準プログラミング言語だ。DeepSeekはこれを「CUDAよりシンプルなプログラミングモデル」と位置づけており、開発効率の向上とコードの簡素化を狙いとしている。
TileLang自体はすでにNvidiaや他のハードウェアをサポートしており、Ascend向けのアダプターも以前から存在していた。今回の更新ではAscend 950のネイティブサポートが追加され、コード生成・自動スケジューリング・同期処理が利用可能になった。なお、Nvidia GPU向けのサポートは引き続き維持されている。
背景:なぜ今このタイミングか
このリリースは、Huaweiが次世代AIプロセッサとスーパーノードシステムを発表してから約2週間後のタイミングだ。HuaweiはAscend 950スーパーノードがDeepSeek V4モデルを完全サポートすると表明しており、V4-Flashモデルの軽量版の学習にもAscendチップが使用されたとしている。
両社はすでに、2025年4月にプレビュー公開されたDeepSeek V4およびV4-Flashモデルでも協力関係にあった。Huaweiは自社のAIシステムが2027年にはモデル学習用途で広く普及すると見込んでいる。
米国の輸出規制によりNvidiaの最新チップが中国市場から締め出されている状況下で、中国国内のAIエコシステムを自律的に構築しようとする動きは加速しており、今回のリリースはその文脈で理解される。
CUDAの対抗軸として機能するか
ソフトウェアスタックの整備は、ハードウェア普及の鍵を握る。HuaweiはすでにCANN(Compute Architecture for Neural Networks)と呼ばれる独自のAI向けソフトウェアプラットフォームを持っており、今回のライブラリはその上に構築されている。DeepSeekのAPIをそのまま流用できる設計や、TileLangのマルチプラットフォーム対応は、開発者の移行コストを下げることを明確に意識した設計判断だ。
ただし、CUDAが長年かけて積み上げてきたエコシステムの厚みとの差は依然として大きい。今回のツール群が実際にどこまでAscend上のワークロード最適化に貢献できるかは、コミュニティの検証を待つ必要がある。
※編集部の考察:上記「CUDAの対抗軸として機能するか」の評価は元記事の直接の記述ではなく、編集部が文脈を踏まえて補足したものである。
詳細はDeepSeek and Huawei release open-source Ascend AI programming tools to reduce reliance on Nvidia CUDA ecosystemを参照していただきたい。