10月1日、PYMNTSが「Barclays Accelerates AI Rollout With Anthropic's Claude Code」と題した記事を公開した。英国の大手銀行BarclaysがAnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」を全開発者へ展開する計画を発表したというものだ。すでに本番運用中のシステムでは1日12万件のメールをAIで処理しており、金融機関のコアオペレーションへのAI統合が単なるPoC(概念実証)の段階を超えていることを示している。
開発者の約半数にClaude Codeを展開、2027年末には全社へ
Barclaysは今年末までに全開発者の約半数にClaude Codeを導入し、2027年末までにほぼ全開発者への展開を目指すとAnthropicが発表した。
Claude Codeは、Anthropicが提供するエージェント型AIコーディングツールで、コードの生成・テスト・レビューといった開発工程を自律的に処理できる。単なるコード補完にとどまらず、複数のタスクを連鎖的に実行するエージェント機能を持つ点が特徴だ。2025年に正式リリースされて以降、エンタープライズ向けの導入事例が急速に積み上がっており、今回のBarclaysとの提携はAnthropicにとって金融業界における大型案件の一つとなる。
Barclaysのグループ共同最高執行責任者Craig Brightは次のように述べている。
「BarclaysではClaudeを活用して、レガシープラットフォームの近代化、ソフトウェア品質の向上、そして技術専門家が最も複雑な課題に集中できる環境づくりを進めている。熟練エンジニア、セキュリティ専門家、そして信頼できるAI機能の組み合わせは、大規模エンタープライズにおけるテクノロジーの開発・管理のあり方を根本から変えうる。」
すでに動いている既存の導入事例
今回の発表は「これから導入する」という話だけではない。Barclaysはすでに複数のAIシステムを本番運用している。
- Colleague Knowledge Assistant:英国の従業員1万6,000人以上が利用する社内ナレッジ検索ツール。2025年以降、累計100万件以上の検索を処理している。
- グローバルマーケット部門のメール処理:Claudeを使って顧客からの1日12万件のメールを処理し、担当者の対応を支援している。
1日12万件という数字は、AIが金融機関のコアオペレーションに深く組み込まれていることを端的に示す。大量の顧客接点を持つ金融機関にとって、メール処理の自動化・高速化は応答品質と業務効率の両面に直結する。
金融機関のAI導入率は9割を超えている
今回の動きはBarclays単独の話ではなく、業界全体のトレンドとして捉える必要がある。PYMNTSの調査レポート「The Enterprise AI Payback Curve」(2025年8月)によれば、**銀行・保険会社の95%がバックオフィスのデータ・テクノロジー機能においてAIツールを本格展開または集中的に組み込んでいると回答している。同調査では、同じく95%**が新しい形態のAIを「非常に効果的」または「極めて効果的」と評価している。
AnthropicのChief Commercial OfficerであるPaul Smithは今回の提携について「英国における重要なマイルストーン」と位置づけつつ、「BarclaysはAIに対して高い基準を持っている。だからこそ、強固なセキュリティと監視体制のもとでClaudeを展開している」とコメントした。金融規制が厳格な英国市場でこの規模の展開が実現すれば、他の欧州金融機関にとっても導入判断の参考事例となる可能性がある。
エンジニア組織への影響
もう一人の共同最高執行責任者Ann Marie Darlingは、Claude展開の目的を「ルーティン作業の削減」と「意思決定の効率化」に置いている。つまり、既存エンジニアを代替するのではなく、より高度な問題解決に集中させるという方向性だ。
ソフトウェアエンジニアリングとサイバーセキュリティという、金融機関にとって両輪となる領域でAIエージェントを活用する体制を整備している点は、大規模金融機関がAIをどう組織に組み込むかという観点で注目に値する。コード生成・レビューの自動化によって開発サイクルが短縮されれば、レガシーシステムの近代化という長年の課題に対してもアプローチが変わりうる。
詳細はBarclays Accelerates AI Rollout With Anthropic's Claude Codeを参照していただきたい。