9月29日、The Decoderが「ElevenLabs' new v4 speech model makes AI voices more expressive and consistent」と題した記事を公開した。ElevenLabsの新しい音声合成モデル「Eleven v4」は、<nervous laugh> や <long pause> といったタグ一行で笑い声・沈黙・効果音を制御できる感情表現の精緻化、そして初音声出力まで150ミリ秒という低レイテンシを最大の売りとする。スマートスピーカーや電話応答ボットなど、遅延が致命的なリアルタイム用途を強く意識したアップデートとなっている。
笑い・ウィスパー・効果音をタグで制御
Eleven v4の最大の特徴は、感情表現と音響イベントの制御精度が向上した点だ。スクリプト中に <warm>、<nervous laugh>、<long pause> のようなタグを挿入することで、ナレーターの感情・間・効果音(ドアを閉める音など)を指定できる。この仕組み自体は昨年リリースされたEleven v3から存在していたが、v3では指示通りに動作しないケースが多かった。v4ではアーキテクチャを刷新し、スクリプト全体のトーン・テンポ・文脈を解析する設計に変わった。
タグ形式に加え、平文の指示文(例:「ここで緊張した声で話す」)でも制御可能になっており、技術用語や固有名詞の発音はフォネティック表記で指定できる。発音ベンチマークのスコアはv3の85.6%からv4で**91.7%**に向上している。

長尺コンテンツでの一貫性
オーディオブック制作など長尺コンテンツへの対応も強化された。1リクエストあたり最大10,000文字(約10分の音声)を処理でき、複数セグメントにまたがる作品でもペーシングと声質が一貫して維持されるという。セリフを個別に何度再生成しても、ナレーターとキャラクターの声が安定して保たれる設計だ。
対応言語はv3の約70言語から90言語以上に拡張。クローン音声が他言語を話す際、元のアクセントに引っ張られる問題も改善されたとされる。v3で非対応となっていた「Professional Voice Clone」も復活し、「Instant Voice Clone」はわずか10秒の音声でクローンを生成できる。
声優との収益分配モデルも継続されており、Michael Caineをはじめとする著名人の音声は専用マーケットプレイスで利用できる。
リアルタイム用途向けのTurboバリアント
音声エージェント向けにはEleven v4 Turboが同時リリースされた。ElevenLabsの計測では、最初の音声出力までの時間(TTFA: Time to First Audible)が150ミリ秒。競合との比較は以下の通り:
| モデル | TTFA(中央値) |
|---|---|
| Eleven v4 Turbo | 150ms |
| Cartesia Sonic 3.6 | 262ms |
| xAI TTS | 362ms |
| Gemini 3.8 Flash-Lite TTS | 685ms |
| OpenAI GPT-4o mini TTS | 814ms |

このベンチマークはElevenLabs自身が実施したものであり、数値の解釈には留意が必要だ。また、比較対象のOpenAI GPT-4o mini TTSはテキスト・画像・音声を統合処理するマルチモーダルモデルであり、単純なTTS専用モデルとの速度比較は条件が揃っているとは言いにくい側面もある。一方、第三者機関のArtificial Analysisが運営するProvider Voice Arenaリーダーボードでも、Eleven v4はCartesia Sonic 3.6やGemini 3.8 Flash TTSを上回るスコアを記録しており、独立した評価においても競争力は示されている。
ブラインドテストでは、リスナーの**65〜81%**(競合モデルにより異なる)がv4の表現力を上位に評価した。

価格と提供形態
APIの通常価格はv4が100万文字あたり$80、Turboが$40。10月12日までの期間限定で、それぞれ**$22・$11**に引き下げられている。比較として、Cartesia Sonic 3.6は$49、Gemini 3.8 Flash TTSは$16.49(Artificial Analysis調べ)。
音声合成APIの価格帯は各社で単位や課金体系が異なるため単純比較は難しいが、期間限定価格の$11〜$22はプロトタイプや小規模プロダクトで試しやすい水準といえる。なお、ElevenLabsの公式APIドキュメントでは各モデルのエンドポイントや対応パラメータの詳細を確認できる。
月額$22以上のCreatorプランユーザーは、2週間はElevenCreativeでv4を追加費用なしで利用できる(クレジット上限は月次クレジットの2倍)。
データの保存先はデフォルトで米国。エンタープライズ向けにはEU・インド・シンガポールでの隔離環境が選択可能で、EUではデータを保持しないモードを使用することでAPI処理をEU内に留めることができる。個人情報保護規制(GDPRなど)への対応を求められるビジネス用途では、このデータ所在地の選択肢は重要な検討ポイントになる。
両モデルはElevenAgents、ElevenCreative、APIで現在利用可能だ。
詳細はElevenLabs' new v4 speech model makes AI voices more expressive and consistentを参照していただきたい。