9月27日、The Next Webが「McDonald's tests Archy, its AI drive-thru voice」と題した記事を公開した。2024年6月、IBMとの共同AIプロジェクトを打ち切ったマクドナルドが、今度は自社開発の音声AIシステム「Archy」をドライブスルーでテストしている。競合のタコベルが米国内の大規模展開を進めるなか、大きな失敗を経て再挑戦する同社の動向は、外食産業におけるAI導入競争の行方を占うものとして注目される。
IBMとの失敗を経て、自社開発のAI注文システムへ
マクドナルドがAI音声注文に挑むのは今回が初めてではない。2024年6月、IBMと共同で進めていたドライブスルーAIのテストを打ち切った経緯がある。その後、競合他社は着々と展開を進めており、タコベルはすでに米国890店舗以上で音声AIによる注文(The Next Web内関連記事)を導入済みだ。
マクドナルドが今回発表した「Archy」は、同社独自の生成AIシステム「ArchIQ」の一機能として開発された。9月23日、シカゴ本社で開催された投資家向けイベントで披露された。
Archyとは何か
Archyは、ドライブスルーで顧客の音声注文を受け付けるAIアシスタントで、英語とスペイン語のバイリンガルに対応している点が特徴だ。初期テストでの正答率は90%超と報告されている。現時点でテスト店舗数は非公表だが、Fox Newsの6月時点の報道では米国5店舗での試験導入が確認されている。
ArchIQ全体像——注文だけではない
Archyはあくまでも入り口に過ぎない。ArchIQはレストラン運営全体を対象とした生成AIプラットフォームであり、以下の機能を備える。
- 在庫管理の自動追跡
- キッチン機器のカメラ監視
- スケールを使った注文内容の完全性チェック(顧客に届く前に確認)
マクドナルドが示す数字は具体的で、週あたり50時間以上のスタッフ工数削減と、食品廃棄15%削減を見込む。
Googleクラウドのエッジコンピューティングで動作
ArchIQは**Google Cloudのエッジコンピュータ**上で動作する。エッジ処理とは、クラウドにデータを送らず店舗内で処理を完結させる方式で、レイテンシ(遅延)を抑えた即時判断を可能にする。マクドナルドのグローバルCIO、Brian Rice氏は次のように述べている。
"This allows our AI models to make accurate split-second decisions"
(このシステムにより、AIモデルが瞬時に正確な判断を下せるようになる)
このエッジコンピュータはすでに数千店舗に設置済みであり、米国内への展開完了は2027年を予定している。
展開スケジュールと投資規模
ArchIQツールの本格展開は2027年以降、段階的に行われる予定だ。Archy単体のフル展開日程はまだ公表されていない。
今回の取り組みはマクドナルドが掲げる「Next戦略」(原語:'Better Together' 戦略)の一環だ。ただし、同社が2036年までに投じる計画として発表した約85億ドルは、AI開発そのものへの投資額ではなく、フランチャイズオーナー向け支援(家賃軽減措置や店舗設備への投資)に充てられるものである点に注意が必要だ。
IBMとの失敗を経て、Google Cloudを基盤とした自社プラットフォームへの転換という構図は、外食産業におけるAI導入の難しさを示すとともに、インフラ選定が成否を分ける可能性を示す事例でもある。
詳細はMcDonald's tests Archy, its AI drive-thru voiceを参照していただきたい。