9月26日、PYMNTS.comが「Block Joins x402 Foundation to Drive Agentic Commerce Standards」と題した記事を公開した。SquareやCash Appを擁するBlock社がAIエージェント間決済の標準化団体「x402 Foundation」に参加し、Bitcoin Lightning NetworkのサポートをHTTPレベルの決済規格に持ち込むという、エージェントコマースの基盤争いに直結する動きだ。
AIエージェントが「自律的に決済する」世界の標準を誰が作るか
AIエージェントが人間に代わってサービスを購入し、別のエージェントへの報酬を支払う——いわゆる「エージェントコマース」が現実の議論になりつつある中、その決済インフラをどの規格で統一するかという争いが始まっている。
x402プロトコルは、Coinbaseが2025年5月に公開したオープン規格だ。HTTP規格に元々定義されていた「402 Payment Required」ステータスコードを活用し、ウェブのやり取りにステーブルコイン決済を直接埋め込む設計になっている。APIリクエストに対して支払いを要求・完了するフローをHTTPレベルで標準化する、という発想は技術的にシンプルかつ筋が良い。
2026年4月にはCoinbaseとLinux Foundationが連携し、x402をLinux Foundation傘下に移管。同年7月には40の企業・団体が参加するオープンガバナンス団体「x402 Foundation」として正式に発足した。プロトコルの仕様や実装例はx402の公式サイト(x402.org)で公開されている。
BlockがBitcoin Lightningを持ち込む意味
今回Blockが参加を表明したのは2026年9月24日。Block Financial PlatformのProduct責任者であるSteve Reisがブログポストで発表した。
Blockの参加で注目されるのは、Bitcoin Lightning NetworkのサポートをX402プロトコルに持ち込むという貢献だ。x402 Foundationの技術運営委員会メンバーであるErik Reppelは次のようにコメントしている。
「BlockがBitcoin LightningをX402プロトコルに持ち込むことは、オープン標準をより強固にする貢献だ。エージェントコマースを構築するすべての人にとって可能性が広がる。」
ステーブルコイン決済に加えてBitcoin Lightningを選択肢に加える意図について、Reisはこう説明する。エージェントエコノミーが生み出す「高頻度・少額」の決済フローにこそ、Lightningの特性が合致するというのがBlockの見立てだ。AIエージェントが秒単位で大量のマイクロペイメントを処理するシナリオを想定すれば、この判断は技術的に合理性がある。
なお、Bitcoin Lightning NetworkはBitcoinのレイヤー2決済プロトコルであり、オフチェーンでの即時・低手数料送金を実現する技術だ。高頻度な少額決済との親和性が高く、エージェントコマースの文脈で注目が集まりつつある。
Blockがこの領域で積み上げてきた動き
今回のx402 Foundation参加は、Blockにとって単発の施策ではない。同社はすでに以下の活動を通じてエージェントコマース基盤の整備に関与してきた。
- オープンソースAIエージェント「goose」の開発・公開
- エージェントAIの業界団体「Agentic AI Foundation(AAIF)」の立ち上げ支援
- 決済プロトコル「Universal Commerce Protocol(UCP)」への参加
Reisは今回の参加に際し、x402 Foundationが「特定の企業がコントロールしない、誰でも実装できる標準の下にニュートラルな支払いレイヤーを置く」役割を担うと説明した。オープン標準への関与を複数の領域で積み重ねているBlock社の姿勢は、エージェントコマースにおける同社のポジショニング戦略として一貫している。
エコシステムへの実際の影響
Blockが描く具体的なシナリオは以下の通りだ。
- 販売者がオープンな標準レールを通じて、新たな買い手とそのエージェントにリーチできる
- エージェントが顧客に代わってシームレスに支払い、またエージェント同士の取引にも対応できる
- Bitcoinが少額・高頻度の決済手段として日常的な役割を担える
現時点ではx402のユースケースはまだ黎明期にあるが、40の大手企業・団体が参加するガバナンス体制が整い、Linux Foundationという中立的な運営母体のもとで仕様策定が進む体制になった点は、規格の普及において重要な条件が揃いつつあることを示している。さらにBlockのようなBitcoin決済インフラの担い手が加わることで、ステーブルコイン一辺倒ではない多層的な決済レイヤーが形成される可能性がある。x402プロトコルが「AIエージェント時代のHTTP」として定着するかどうか、今後の実装事例と採用企業の動向が試金石になる。
詳細はBlock Joins x402 Foundation to Drive Agentic Commerce Standardsを参照していただきたい。