9月27日、Futurismが「Workers Are Spending An Astonishing Amount of Their Own Money On AI for Their Jobs」と題した記事を公開した。この記事では、英国の労働者が職場でのAI活用に年間約10億ポンド(約1900億円)を自腹で支出しているという実態について詳しく紹介されている。
企業が整備しないなら自分で払う——年間約10億ポンドの自腹AI費用
デロイトが英国で実施した職場調査(回答者数25,000人、「単一国家で実施された職場GenAI利用調査としては最大規模」と同社は位置付ける)によれば、英国の労働者は生成AIサービスに年間約10億ポンド(約1900億円)を自費で支出している。しかも、その多くは経費精算すらしていない。
調査では、英国の就労者の**63%が仕事に生成AIを積極的に活用していると回答した。比較対象として、ギャラップが同時期に米国で実施した調査では、AIを何らかの形で利用している米国人労働者は52%、毎日使うのはわずか15%**にとどまる。英国の普及率の高さが際立つ。
内訳を見ると、約半数が無料ツールを利用し、34%は雇用主が提供するツールを使っている。一方、6人に1人(約17%)が少なくとも1種類のAIツールを自費で契約しており、この層が合計で年間約10億ポンドを支出している計算になる。
使い方は「基本的」——メール下書きと検索代わり
熱量とは裏腹に、実際の活用は浅い。デロイトUKのパートナーでインダストリーインサイト責任者のPaul Leeは報告書の中でこう述べている。
「GenAIが日常の仕事に定着するスピードは特筆に値する。しかしほとんどの労働者にとって、その役割はまだ基本的なものにとどまっている——情報検索とコンテンツ草稿作成が中心で、複雑な業務支援には至っていない」
具体的には、メールの文章生成や、かつての検索エンジンの代替として使われるケースが多い。自律型AIエージェントのような高度な活用はまだ一般的でなく、Lee氏はこの調査の核心をこう総括している。
「ここで重要なのは、労働者がGenAIを使っているという事実ではない。限られたトレーニング、断片的なガイダンス、そして場合によっては雇用主の知らないところで使っているという点だ」
「雇用主が知らない」問題の根深さ
企業がAIツールの整備や方針策定を怠る中、従業員が自主的にサービスを契約し、業務に持ち込んでいる構図は、いわゆる「シャドーIT」の生成AI版と言える。シャドーITとは、企業の公式な承認を得ずに従業員が個人的に導入・利用するITツールやサービス全般を指す概念であり、情報漏洩や利用規約違反のリスクが生じやすい点が従来から問題視されてきた。生成AIの文脈でも同様の懸念が当てはまり、企業側にとっては看過しがたい実態だ。
一方、労働者の立場からすれば、ツールが支給されないなら自分で調達するという合理的な判断でもある。コスト負担だけでなく、トレーニングや使い方のガイドも自己流になるため、活用レベルの底上げが進みにくい悪循環も生じている。
なお、職場でのAI導入に対しては否定的な見方も根強い。元記事によれば、職場AIに対してネガティブな態度を示す労働者が増加傾向にあることも別の調査で報告されており、今回のデロイト調査で見られた「自腹派」はむしろAIに積極的な少数層と見るべきだろう。企業が方針・教育・ツールの三点を整備しない限り、自腹負担と野放しリスクが同時進行する状況は解消されそうにない。
詳細はWorkers Are Spending An Astonishing Amount of Their Own Money On AI for Their Jobsを参照していただきたい。