9月27日、AIメディアThe DecoderのMatthias Bastianが「OpenAI says 80 to 90 percent of its research already targets GPT 7 and beyond」と題した記事を公開した。OpenAIの研究リソースの80〜90%がすでにGPT-7以降の次世代モデル開発に向けられているという、同社幹部の発言を報告した内容だ。GPT-5が一般公開されて数ヶ月、GPT-6がリリース済みとなった2026年9月時点において、同社の内部では視線がすでに二世代先以降に向いているという事実は、OpenAIの長期戦略を読み解くうえで注目に値する。
研究の80〜90%がGPT-7以降を対象
OpenAIの応用研究部門トップ(Head of Applied Research)であるBoris Powerは、同社の研究リソースの80〜90%がすでにGPT-7、GPT-8、そしてそれ以降のモデルを対象としていると述べた。その理由は明快で、「価値の大部分はそこから生まれるから」だという。
GPT-5.1からGPT-5.2への改善のような、同一世代内のインクリメンタルな更新は、特定用途向けの学習データを活用することで実現できる。しかしPowerはこれを「意図的な短期的な賭け」と位置づけており、社内では「極めて近視眼的なもの」として見なされているという。
一方、新しいモデル世代への移行では「あらゆるものが大幅に改善される」ため、各世代のジャンプの後にOpenAIは「どこに投資すれば素早い成果が得られるか」を改めて学び直す必要があるとPowerは説明した。インクリメンタル更新は今日の開発速度を高めるために有効だが、長期戦略としては正しくないとも言及している。
この方針は、競合他社の動向とも対照的に映る。AnthropicがClaude 3系列で細かいバリアントを積み重ねる戦略を取り、GoogleがGeminiファミリーの段階的展開を続けるなか、OpenAIは内部リソースの大半を次世代以降に一極集中させる構えを鮮明にしている。表向きはGPT-4o miniのような細かいバリアントが次々リリースされているように見えても、内部の研究投資は別の方向を向いているというわけだ。
GPT世代ごとの「使い勝手」の変化
Powerは各モデル世代のユーザー体験の変化についても言及した。
- GPT-4:丁寧なプロンプト設計が必要だった
- GPT-5:使いやすくなったが、依然として多くのフィードバックが求められる
- GPT-6:目標を渡すだけでよい「有能な同僚」に近い動作になった
GPT-4からGPT-5へのジャンプでユーザーの操作負荷が大きく下がったように、世代をまたぐたびにモデルとのインタラクションの質は不連続に変化する。GPT-7以降ではさらに自律性が高まる方向性が示唆されており、単なる性能向上にとどまらず、AIとの関わり方そのものが変わる可能性がある。この「世代ジャンプ」の非連続性こそが、OpenAIがインクリメンタル改善に大きく張らない理由の核心といえる。
ボトルネックはモデルの質ではなくオンボーディング
Powerが指摘する現在のAIアシスタントの最大の課題は、モデルの性能ではなくオンボーディングにある。ChatGPTユーザーの多くは、AIで何ができるかを十分に把握していない。そのため、将来のモデルには「何が可能かをユーザーに伝え、必要なことを先読みする」能力が求められるとしている。
言い換えれば、次世代モデルの競争軸はベンチマーク上の精度だけでなく、ユーザーが価値を引き出しやすいかどうかという「使われ方の設計」にも移りつつある。この観点は、モデルの能力評価が難しくなりつつある現状において、業界全体に共通する課題でもある。
研究の集中が示すもの
研究の80〜90%を次世代以降に振り向けるという方針は、OpenAIが短期的な競合との差別化よりも、世代を超えたジャンプに経営資源を集中させる姿勢を示している。The Decoderは欧州を拠点とするAI専門メディアで、OpenAIをはじめとする主要AI企業の内部動向を独自取材で伝えることで知られており、今回の報道も同メディアが直接取材した幹部発言に基づいている。
表面上はGPT-4oやGPT-4o miniのような細かいバリアントが次々リリースされているように見えるOpenAIだが、内部では明確に「次の世代」に照準が合わされている。研究投資の配分という内部の意思決定を公言することは珍しく、この発言はOpenAIが長期的な技術的優位の確保を最優先にしているという経営姿勢の表れとも読める。AIモデルの世代交代サイクルが加速するなか、どこに研究資本を張るかという判断が、数年後の競争地図を大きく左右する可能性がある。
詳細はOpenAI says 80 to 90 percent of its research already targets GPT 7 and beyondを参照していただきたい。