9月26日、The Next Webが「Hollywood studios hunt for AI-trained film graduates」と題した記事を公開した。ハリウッドスタジオが自社でAI人材を育成する代わりに、AIツールをすでに使いこなせる映画学校卒業生を積極的に採用しようとしている——RunwayとNYU・USCの連携が、その「人材パイプライン」として機能し始めている。
「使える人を採れ」——スタジオが教育機関に目を向ける理由
ハリウッドスタジオの採用戦略が変わりつつある。AI動画生成・編集ツールを提供するRunwayのCEO、Cristóbal Valenzuela氏がSemaforに語ったところによれば、スタジオは今や「このツールをすでに使える人材はどこにいるのか?」と問うようになっているという。
自社でゼロから研修するコストと時間を避け、即戦力のAIネイティブ人材を外部に求めるという発想だ。その調達先として浮上しているのが、映画学校との提携プログラムである。
RunwayとNYU、USCが先行——大学でAI映像制作を教える動き
Runwayは2024年12月、NYU(ニューヨーク大学)のTisch School of the Artsとの初の大学連携コースを発表した。授業は2025年1月、映画監督マーティン・スコセッシの名を冠した「Martin Scorsese Virtual Production Center」でスタートしている。
このNYU Tischのコースに加え、USC(南カリフォルニア大学)のSchool of Cinematic Artsでも大学院レベルのAI映像制作コースがRunwayのツールを使って運営されている。さらにSemaforの報道によれば、Rhode Island School of Design(RISD)、MIT、ハーバード大学、そして欧州・ラテンアメリカの複数大学でもRunwayを使ったコースが開講されているという。
GoogleとOpenAIも独自プログラムを展開
大学連携にとどまらず、テック企業側も独自の人材パイプライン構築に動いている。
Google Labsは2025年9月、Flow Sessionsを立ち上げた。 選抜された映像作家にAI映像制作ツール「Flow」へのアクセス権とメンタリング・トレーニングを提供するプログラムだ。
OpenAIはTribeca Studiosと1年間のプログラムを組み、独立系映像作家がOpenAIのツールを使った短編映画を制作するプロジェクトに資金を提供している。完成作品はTribecaフェスティバルでのプレミア公開が計画されている。
Flow Sessionsに参加した映像作家のBrad Tangonan氏は、AIスキルが業界の必須要件になると見ている。
「映画業界で仕事をしたいなら、これらのツールの使い方を覚えなければならなくなる」(Tangonan氏、Semaforへのコメント)
背景にあるNetflixとGoogleの動き
こうした採用シフトの背景には、制作現場でのAI活用が急速に広がっている現実がある。Netflixは今年、約300タイトルで生成AIを活用したと発表しており、全スタッフに対して「AI fluency」——AIツールを業務に使いこなす実践的なリテラシー——の習得を求めている。単なる「AIを知っている」レベルではなく、制作現場で即応用できる能力を標準スキルとして位置づけている点が注目される。
Googleはさらに踏み込んだ形でフィルム業界との距離を縮めている。2025年6月にはインディペンデント映画スタジオA24に7,500万ドルを出資し、A24とGoogle DeepMindによるAI映像制作の研究パートナーシップを設立したと報じられている。
映画制作という「職人的な技術」が求められてきた領域でも、AIツールの習熟が採用条件に組み込まれ始めた。RunwayやGoogleが教育機関との連携を先手で押さえているのは、将来の採用市場における人材の「入口」を確保しようとする意図が見える。
詳細はHollywood studios hunt for AI-trained film graduatesを参照していただきたい。