9月26日、SiliconAngleが「AI data center builder Nscale raises $3.36B ahead of IPO」と題した記事を公開した。この記事では、AIデータセンター建設会社のNscaleがIPO直前に総額33億6000万ドルの資金調達を完了したことについて詳しく紹介されている。
Nscaleとは——欧州発・急成長のAIインフラ企業
Nscaleはノルウェーを拠点に設立されたAIインフラ企業で、GPUクラスターを活用したAIコンピューティング基盤の構築・運営を手がける。設立当初は欧州向けにGPUクラウドサービスを提供していたが、近年は米国市場に軸足を移し、大手テック企業・AIラボとの大型契約を積み上げることで急成長を遂げてきた。同様のAIインフラ事業を展開するCoreWeaveが2025年にIPOを果たしたことで注目を集めたセグメントであり、Nscaleはその後継馬として市場から期待を集めている。
2段階で調達、NvidiaとThird Point・Apolloが名を連ねる
調達資金は2つのトランシェ(tranche:資金調達における分割された各部分)に分けて拠出される。22億6000万ドルはThird Point、Apollo、Citadelをはじめとする十数社の機関投資家コンソーシアムから近日中に受領予定で、残る10億ドルはNvidiaが11月中旬に拠出する。
調達手段は転換社債(convertible notes)だ。投資家が将来的に株式に転換できる短期債務証書で、IPO完了直後に自動的に株式へ転換される。Nscaleは企業評価額350億ドルでの30億ドル規模のIPOを目指していると報じられている。
「契約済みの将来収益」が投資家への訴求軸
Wall Streetへの売り込みの核心は、TCV(Total Contracted Value、契約総額)1030億ドル超という数字だ。TCVはデータセンターからの将来収益の見込みを示す指標であり、現時点で確定した売上ではなく契約に基づく将来の受取予定額の累計を指す点には留意が必要だ。その大半はMicrosoftとAnthropicとの契約から得られる見込みだとしている。
IPOの時点でこれだけの大口顧客を抱えているという構図は、投資家から見て説得力がある。
垂直統合型のインフラ構築——電力まで自前で
Nscaleが強調するのは「垂直統合(vertically integrated)」アプローチだ。データセンターの建屋だけでなく、電力インフラまで自社で設計・建設する点が特徴となる。
その象徴がウェストバージニア州のキャンパスだ。オンサイトのマイクログリッド(局所的な電力網)を整備し、2028年初頭の稼働時には2ギガワットの発電能力を持つ計画だ。エネルギー貯蔵設備も併設し、発電量の変動を吸収する。Nscaleによれば、このキャンパスは公共電力網から一切電力を引かない設計になっている。
このウェストバージニアを含む合計17サイトのネットワークを保有・運営しており、そのうち5サイトをNscale自身が所有、残りはパートナーが運営する。立地選定にあたっては「主要な米国電力市場より電気代が約70%安い」ロケーションを優先するとIPO目論見書に明記されている。電力コストの抑制は、GPUクラスター運用において収益性を左右する最重要変数のひとつであり、この点がCoreWeaveをはじめとする競合との差別化軸のひとつとなっている。
GPUクラスターを自己修復するAIツールも開発済み
ハードウェア運用面でも技術的な取り組みが進んでいる。先月、NscaleはGPUクラスター内の障害を自動でトラブルシューティングするAIツールを発表した。物理的な修理が必要な場合、ソフトウェアがどの部品を修理すべきかを特定し、手順まで提示する仕組みだ。
また、ソフトウェア能力の強化を目的に、今年6月にはAnyscaleを16億5000万ドルで買収している(リンク先はNscaleによるAnyscale買収を報じたSiliconAngleの別記事)。AnyscaleはAIクラスターの効率性と信頼性を改善するプラットフォームを提供するスタートアップだ。今回の調達資金の一部が追加買収に充てられる可能性も示唆されている。
IPO申請からわずか1週間で巨額調達
Nscaleは9月18日にIPOを申請したばかりであり、申請から1週間足らずでこの規模の資金調達を完了したことになる。AIインフラへの投資熱が依然として高水準にあることを示す動きだ。
詳細はAI data center builder Nscale raises $3.36B ahead of IPOを参照していただきたい。