9月26日、Futurismが「Trump's Stargate AI Project in Huge Trouble As $18 Billion Data Center Shrivels Toward Oblivion」と題した記事を公開した。トランプ政権肝いりのAIインフラ計画「Stargate」の中核を担うニューメキシコ州のデータセンター建設が頓挫しかけており、Oracleが巨額の財務リスクを抱えている実態が詳しく報じられている。
OracleがBlue Owl Capitalに不可抗力条項を発動
Bloombergの報道によると、Oracleは9月25日、Project Jupiter(プロジェクト・ジュピター)と呼ばれる巨大データセンターへの融資者であるBlue Owl Capitalに対し、「不可抗力(force majeure)」の通知を送付した。
不可抗力条項とは、戦争・自然災害・大規模な社会的混乱など、当事者の制御が及ばない事態が発生した場合に、契約上の義務や損害賠償責任を免除するための条項だ。Oracleが今回この条項を発動したのは、開発に必要な許認可を取得できなかったことを理由に、2028年までにデータセンターが完成しない場合の支払い義務を回避するためとみられている。
金融アナリストの間では、この通知はOracleがプロジェクトの失敗リスクに備えて責任を切り離そうとする動きだと受け取られており、「AIブル(強気派)を震え上がらせている」と報じられている。
180億ドル規模のプロジェクトが抱える構造的問題
Project Jupiterは、総額1,650億ドル規模のAIキャンパス計画の一部とされており(Bloomberg報道による)、さらにその上位に位置するのが、トランプ政権が掲げる総額5,000億ドルのAIインフラ計画「Stargate」だ。Stargateは、Oracleがインフラ担当、OpenAIがソフトウェア担当、SoftBankが資金管理を担う体制で組成されている。
ニューメキシコ州のデータセンターは、当初2.45ギガワットの計算能力を持つ施設として計画され、Oracleが主要テナントとして入居する予定だった。
しかし計画は当初から難航している。今年5月には、施設の電力源として想定していた大規模天然ガス発電所の建設が中止に追い込まれた。州・連邦の両当局から土地利用許可を取得できなかったためだ。
代替案としてOracleが打ち出したのが、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)の活用だ。SOFCは水素や天然ガスを燃料として高効率で発電できる技術であり、送電網への接続が困難な立地でも独立した電源として機能するという特性から、データセンターの分散電源として注目されている。ただし大規模実装の実績はほとんどなく、現時点で世界最大のSOFC導入事例は韓国の80メガワット規模のプロジェクトとされており、必要とされる2.45ギガワットと比べると約30分の1に過ぎない。太陽光・風力といった再生可能エネルギーが許認可や系統連系の問題で現実的でない立地条件において、SOFCが「次善策」として浮上したとみられるが、未実証の技術でこれほどの規模の電力をまかなう計画に、現実的な裏付けは乏しい。
Oracleはすでに痛手を受けている
Oracleにとってこのデータセンター問題は、今年に入ってから続くトラブルの一つに過ぎない。
融資者がProject Jupiterの財務的な見通しに不安を示し始めたのは今年1月と早く、その後Oracleは緊急コスト削減策として数千人規模の人員削減を実施している。それでも経営の立て直しには至らず、今回の不可抗力条項の発動という事態に至った。
問題のデータセンターはProject Jupiterというより大きな計画の「第一段階」に過ぎず、Project Jupiter自体もStargate全体の一部に過ぎない。最初のピースがここまで苦戦しているとすれば、残りの計画への影響は避けられない。
AI投資バブルの「具体的な亀裂」として注視される
今回の件が市場関係者に注目される理由は、単なるプロジェクトの遅延にとどまらない。StargateはAI向け大型インフラ投資の象徴として扱われてきたプロジェクトであり、トランプ政権が2025年1月の発表時に大々的に打ち出した「米国のAI覇権を取り戻す」という政治的文脈とも密接に結びついている。その旗艦案件が許認可取得の失敗・電力確保の見通し不透明・融資者の不安という三重苦に陥っている事実は、OpenAIやSoftBankを含むStargate参加各社の計画全体に対しても疑問符を投げかけており、AI投資全般の過熱ぶりへの警戒感を強める材料として機能している。巨額の約束が具体的な建設フェーズで壁にぶつかるケースが相次ぐようであれば、インフラ投資の実現可能性に対する市場の評価が変わる転換点になりかねない。
詳細はTrump's Stargate AI Project in Huge Trouble As $18 Billion Data Center Shrivels Toward Oblivionを参照していただきたい。