9月26日、The Next Webが「'Pledged to donate 80% of our wealth': Anthropic founders seek control」と題した記事を公開した。AnthropicがIPO後も創業者7名で議決権の過半数を維持するための特別株式クラスを設ける計画について詳しく紹介されている。
創業者7名で議決権50.1%を確保
The Informationの報道によれば、AnthropicはIPOに先立ち、CEO Dario Amodeiを含む7名の共同創業者が主要な経営事項に関して合計50.1%の議決権を保持できるよう、株主に特別な株式クラスの承認を求めている。株主投票は「数日以内」に行われる見通しだ。
この構造で重要なのは、新たな株式には経済的な価値が付与されない点である。配当も希薄化防止も関係なく、純粋に「経営支配権の維持」だけを目的とした設計だ。現時点で各創業者の持ち株比率はAmodeiを含め約2%ずつにとどまっている。
支配権の維持には条件がある。7名のうち少なくとも3名が最低限の持ち株比率を維持し続けることが求められ、その条件を下回った時点で効力を失う。なお、具体的な最低持ち株比率については元記事およびThe Informationの報道でも明示されていない。
「財産の80%を寄付する」と誓った創業者たちが支配権を求める理由
一見矛盾するようにも映るこの動きには、Amodeiが2025年1月に公開したAIリスクに関するエッセイが背景にある。
「Anthropicの共同創業者全員が、財産の80%を寄付することを誓約している」
「懸念すべきは、社会を壊すほどの富の集中だ」
— Dario Amodei
富の集中を問題視しながら議決権の集中を求める——この逆説は意図的なものだ。AIが経済力を一部のプレイヤーに集中させるリスクを自ら認識しているからこそ、その開発主体であるAnthropicの方向性を外部の短期的な株主論理に委ねたくない、という判断と読める。
なお、取締役会の過半数はAnthropicが独自に設立した独立機関「Long-Term Benefit Trust(長期便益信託)」が引き続き選任する。同信託は2026年7月に元FRB議長のBen Bernankeを加えており、経営の独立性を担保する仕組みとして機能する。創業者の取締役枠は現在の2席から3席に増える。また、一部の問題において賛否が同数となった際の決定権として従業員向けの株式クラスも設けられる。これは創業者グループと外部株主の意見が拮抗した場合に従業員側が最終的な可否を決する仕組みで、創業者による完全な独断を抑制する設計ともいえる。
「Palantirモデル」との比較
The Informationはこの株式構造を「Palantir型」と表現している。Palantirは2020年に上場した際、共同創業者のAlex Karp、Stephen Cohen、Peter Thielが「Class F株式」を議決権信託に集約することで、最大49.999999%の議決権を維持する仕組みを採用した。この「49.999999%」という数字は偶然ではなく、創業者グループが単独で過半数を握らないよう意図的に50%未満に設定したものであり、外部株主への一定の配慮を示す設計上の工夫といえる。Anthropicが50.1%を目指すのとは対照的な発想だ。また、最低持ち株比率の維持が条件となっている点はPalantirと共通する。
テック企業の創業者が超議決権株式(スーパーボーティング株式)で支配権を維持する手法自体は珍しくない。Meta(Mark Zuckerberg)、Snap(Evan Spiegel)、SpaceX(Elon Musk)なども同様の構造を持つ。ただしTechCrunchが指摘するように、1人ではなく7名のグループで過半数を共同保有するという点がAnthropicの設計を際立たせている。
IPOの概況
AnthropicはIPOの上場先としてNasdaqを選択済みだ。2026年5月の資金調達ラウンドでは評価額が9,650億ドルに達した。また、2四半期連続での調整後営業黒字も見込んでいる。
株主投票の結果次第で、この議決権構造がIPO後のAnthropicのガバナンスを規定することになる。Anthropic自身はこの報道に対してまだ公式のコメントを出していない。
詳細は'Pledged to donate 80% of our wealth': Anthropic founders seek controlを参照していただきたい。