9月27日、CBS Newsが「Trump and Xi agree to set up AI safety channel as military and trade talks continue」と題した記事を公開した。ワシントンで3日間にわたって行われた米中首脳会談では、AIインシデント対応のための専用通信チャンネル設置という実務的な合意が成立した一方、トランプ大統領が「AIという言葉は偽物を意味する。SIと呼ぶべきだ」と主張し、外交合意の中で技術用語の呼称統一が議題に上がるという異例の展開も見られた。軍事・貿易分野での複数の合意とあわせ、米中関係の現状を示す会談となった。
AI安全チャンネルの設置合意が最大の焦点
米中首脳会談の結果として、両国はAIインシデント対応のための専用通信チャンネルを設置することで合意した。AI特有の対話は11月に実施される予定だ。
AIガバナンスの国際的な枠組み整備が各国で議論される中、世界最大のAI開発国同士が「安全チャンネル」という形で制度化された対話の場を設けることは、実務的な意味を持つ。米国では国家AI安全研究所(AISI)がAIリスク評価の標準化を進め、英国主導のAI Safety Summitでは国際的な協調の枠組みが模索されてきた。こうした多国間の動きと並行して、米中という二大勢力が二国間チャンネルを持つことは、AIガバナンスの地政学的な側面を強化するものと言える。具体的な内容の取り決めは今後の対話に委ねられているが、リスクと利点についての議論の場が制度として設けられること自体が一歩だ。
「AI」ではなく「SI(スーパーインテリジェンス)」という名称問題
会談では、両首脳が「人工知能(AI)」ではなく「超知性(super intelligence / SI)」という呼称を使うことで合意した点も話題になっている。これはトランプ大統領が以前から主張してきた立場だ。
トランプ氏はホワイトハウス南側の芝生で記者団に対し、次のように述べた。
「私はSIと呼んでいる。その方がずっといい名前だ。ずっと正確だ。"artificial(人工)"という言葉は偽物を意味する。これは偽物じゃない。」
技術コミュニティでは、現在の延長線上に位置する汎用人工知能をAGI(Artificial General Intelligence)、さらに人間の能力を全領域で超える段階をASI(Artificial Superintelligence)と区別して呼ぶことが多い。トランプ氏の言う「SI」はASIに近い概念と思われるが、「artificial」を排した呼称を外交の場で採用することが、今後の政策文書や外交文書に実際に反映されるかどうかは現時点では不明だ。
※編集部の考察:呼称の変更が政策の実態を変えるわけではないが、外交合意の中で技術用語の統一が議題に上がること自体がやや異例であり、トランプ政権のAIブランディング志向を示す一幕とも読める。
協力に上限あり——「米国はブレーキを踏まない」
合意の一方で、トランプ氏はAI分野での対中共有には明確な限界を設けると強調した。
「米国は歩みを止めない。彼らは我々の進歩を止めたいだろうが、我々は中国に対して大きくリードしており、そのままにする。リードしているときに相手に開放しない。少なくとも1年、おそらく1年半はリードしている。2年という見方もある。」
米国側の立場は、対話の窓口を開きつつも技術的な優位性は維持するというものだ。
軍事・貿易分野の合意も
AI以外の分野でも複数の合意が成立した。
- 軍事危機通信:両国は軍間の危機通信強化と危機回避に関する覚書(MOU)の署名に合意した
- 貿易休戦の延長:約300億ドル相当の品目に対する関税引き下げ作業を継続し、貿易休戦を2カ月延長することで合意。農産品やホリデーデコレーションなど非機密品が主な対象だ
- 石炭輸出:中国は2027年・2028年に米国から少なくとも1000万メトリックトンの石炭を輸入することに合意
- レアアース:中国は2025年4月、米国の関税措置への報復としてサマリウムやガドリニウムを含むレアアース7品目の輸出規制を発動した。今回の会談では、この規制を「適切な水準へ回復」させることを目標に協議を継続することで合意した。レアアースは半導体・防衛産業の部品製造に不可欠であり、米国にとって供給安定は安全保障上の優先課題となっている
- フェンタニル対策:米国は、中国がフェンタニルの原料となる前駆体化学物質2種への輸出規制を追加することを歓迎した。フェンタニル問題は2023年のサンフランシスコ首脳会談でも主要議題となった経緯があり、今回も引き続き両国間の重要な交渉テーマとなっている
「大きな突破口」はなし——それでも評価される意味
アナリストらは、今回の会談が根本的な対立の解消には至らなかったと指摘しつつも、段階的な前進を評価している。
北京に拠点を置くCenter for China and Globalizationの副事務局長、Wang Zichen氏はこう述べている。
「両首脳間の個人外交は重要だが、実務レベルの関与、軍同士の対話、危機管理メカニズムへの重点は、その安定性をより持続的・制度的なものにしようとする努力を示している。」
次回の両国首脳会合は、11月に開催されるAPEC(元記事では開催地として記載された都市名について、正確な情報は元記事を参照されたい)、その後フロリダのトランプ・ナショナル・ドラール・マイアミゴルフクラブで行われるG20が予定されている。
詳細はTrump and Xi agree to set up AI safety channel as military and trade talks continueを参照していただきたい。