9月24日、PYMNTS.comが「Verizon Targets AI Skills Gap With $70 Million Training Initiative」と題した記事を公開した。「AIで仕事が奪われる」という言説が広がる一方、Verizonは総額7,000万ドルを投じてAIスキルトレーニングを無償開放するプログラムを発表した。時給制労働者向けマッチングプラットフォームWorkWhileのデータは「AIに起因する雇用喪失など存在しない」と真っ向から反論し、むしろ労働需要が22%増で推移していると示す。雇用消滅論と現場データとが真っ向からぶつかる構図だ。
Verizonが7,000万ドルのAIスキル教育プログラムを発表
米通信大手Verizonは9月23日(水)、「AI Skills for America」と題したAIスキル教育プログラムを発表した。対象は求職者、中小企業、キャリア初期の専門家、そして職を失った労働者だ。
資金の内訳は、既存の「Reskilling and Career Transition Fund(再スキル習得・キャリア転換基金)」からの2,000万ドルに、新たな5,000万ドルを加えた合計7,000万ドル。学習者への提供は無償とされている。
VerizonのCEOであるHans Vestberg氏は次のように述べている。
「企業は、テクノロジーへの投資と同じ緊迫感をもって、人への投資に取り組む責任がある」
無償で提供されるAIトレーニングポータル
Verizonは、主要なAI企業・教育プラットフォームと連携し、学習リソースを集約したポータルサイトを構築・提供する。参加パートナーは以下の通りだ。
プレスリリースによれば、「こうしたプレミアムAIトレーニングは、1人あたり年間700ドル以上の費用がかかる」とされており、これを無償化することでスキルギャップの解消を目指す。学生、求職者、中小企業、教育者、キャリア転換中の専門家など、あらゆるキャリアステージの人材を対象とする。
AIスキルの格差(スキルギャップ)は近年、企業・政府双方で喫緊の課題として認識されており、Verizonの取り組みはこうした文脈に位置づけられる。なお、同様の大規模スキルアップ投資としては、IBMの「SkillsBuild」やMicrosoftの「AI Skills Initiative」なども知られており、テック大手が相次いで教育コストの無償化に動いている潮流の一環といえる。
「AIで仕事が奪われる」論への反論も
記事では、関連情報としてWorkWhile CEOのSimon Khalaf氏へのインタビューも紹介されている。WorkWhileは時給制(hourly)労働者と企業をつなぐマッチングプラットフォームであり、小売・物流・製造など現場職の求人動向をリアルタイムで把握する立場にある。Verizonのプログラムが「AIスキルを持つ人材の供給拡大」を目指す取り組みである一方、Khalaf氏のデータは「現場の労働需要そのものが拡大している」という需要側の実態を示すものとして、同記事内で対比的に取り上げられている。
Khalaf氏は、AIによる「雇用消滅論」に対して真っ向から異論を唱える立場を取っている。
「この『仕事の大量消滅』はまったくのデタラメだ。AIに起因する雇用喪失など存在しない」
同氏のプラットフォームでは、7月から8月にかけて労働者需要が22%増、9月下旬時点でさらに14%増となっており、求人数が登録労働者数を上回る状態にあるという。
Khalaf氏が指摘するのは、AIインフラ整備に伴う労働需要の連鎖だ。データセンターの建設・運用にはトレード職(設備工、電気工など)を含む多くの人手が必要となる。たとえばフォークリフトオペレーターがデータセンタープロジェクトに吸収されれば、eコマースや物流企業が同じ労働力を奪い合う構図になる。Khalaf氏はこの流れから「米国は大規模な労働力不足の時代に入りつつある」と予測する。
AIスキルの「供給側」を強化するVerizonの取り組みと、「需要側」の逼迫を示すWorkWhileのデータは、AIと雇用をめぐる議論に別の角度からの視点を加えるものだ。
詳細はVerizon Targets AI Skills Gap With $70 Million Training Initiativeを参照していただきたい。