9月23日、PYMNTSが「Anthropic Alumni Startup Sees Valuation Jump Fivefold」と題した記事を公開した。Anthropic出身の研究者たちが設立したAIスタートアップ「Mirendil」が、わずか1四半期で評価額を10億ドルから50億ドルへ、5倍に膨らませ、新たな資金調達交渉に入ったというものだ。収益実績のない20人規模のチームに対し、なぜ投資家はここまでの評価を与えるのか。
3ヶ月で評価額が10億ドル→50億ドルへ
Mirendilは、元Anthropicの研究者たちが今年設立したAIスタートアップだ。Bloombergの報道によると、同社は現在50億ドルの評価額で新たな資金調達を交渉中である。
注目すべきはそのスピードだ。わずか3ヶ月前、Kleiner PerkinsとAndreessen Horowitzが主導した2億ドルのシードラウンドでの評価額は10億ドルだった。今回の交渉が成立すれば、1四半期で評価額が5倍になる計算となる。
今回のラウンドもKleiner Perkins が主導する方向で交渉が進んでおり、Andreessen Horowitzも出資を検討中だという。新たに調達する資金は最大10億ドルに上る可能性がある。現時点での累計調達額に対する評価額の倍率は25倍に達しており、これは同じ「ネオラボ」カテゴリの競合スタートアップと同水準だ(「ネオラボ」については後述)。
「再帰的自己改善」を目指す20人規模の研究集団
Mirendilが掲げるテーマは「再帰的自己改善(recursive self-improvement)」だ。人間の介入をほとんど必要とせず、AIが自らのモデルを改善し続ける能力の実現を目指している。現在のスタッフは20人超とまだ小規模だが、来年初頭にはエンジニアリングおよび研究業務を支援するフロンティアモデルのリリースを計画している。
同社のウェブサイトには以下のように記されている:
「今日、創薬・化学・生物学・ロボティクスにAIを活用しようとするラボは、自らフロンティアAIラボになることを強いられている。私たちの目標は、その能力を広くアクセス可能にすることだ。」
調達した資金は自社モデルの開発と将来のトレーニングランに充てられる予定だ。
「ネオラボ」ブームの背景
Mirendilの資金調達交渉は、短期的な収益よりも研究の野心を優先する新世代AIスタートアップへの投資ブームの一環だ。この種のスタートアップは業界内で「ネオラボ(neo-lab)」と総称されており、大手AIラボ出身の研究者が少人数で立ち上げ、高い技術的野心と創業チームの実績を武器に多額の評価を得るという共通点を持つ。
同カテゴリの代表例として、元OpenAI CTOのMira Murati氏が創業したThinking Machines Labが挙げられる。PYMNTSの別報道によると、同社は400億ドル以上の評価額で10億ドル超の資金調達を交渉中だ。また、元OpenAI研究者のLiam Fedus氏が創業した科学的発見特化スタートアップPeriodic Labsには約13億ドルの評価額がついている(両社の評価額数字はいずれもPYMNTSの報道に基づく)。
投資家がこれらのスタートアップを高く評価する理由の一端は、大手AIラボ自身の動向にある。AnthropicはすでにClaudeが自社AI研究開発の4分の1以上を担っていると明かしており、OpenAIも自社のCodexを使ってモデル開発の一部を自動化している。AIが自己改善を加速させるという前提への期待が、投資判断を後押ししている構図だ。
収益実績のないスタートアップが25倍の評価倍率で資金を集めるという現象に対しては、過熱を懸念する見方もある。ただし今回の主役は研究実績を持つ元Anthropic・元OpenAIの人材であり、投資家の判断軸が「チームの質」と「研究の方向性」に集中している点は、過去の投資ブームとは性格が異なると元記事は示唆している。
※編集部の考察:評価倍率25倍という数字は、短期的な収益期待というよりも「AGIに向けた研究ポジションの確保」という投資家の戦略的意図を反映している可能性が高い。
詳細はAnthropic Alumni Startup Sees Valuation Jump Fivefoldを参照していただきたい。