9月23日、PYMNTSが「Heidi Lands $340 Million to Push Healthcare AI Beyond Notetaking to Action」と題した記事を公開した。医療AIスタートアップのHeidiが総額3億4,000万ドルの資金調達を完了し、診療記録の自動生成にとどまらず臨床アクションの支援へと機能を拡張する計画について詳しく紹介されている。
「メモ取りAI」から「臨床行動を支援するAI」へ
医療AIの文脈で「スクライブ(Scribe)」と呼ばれる診察内容の自動文字起こし・記録ツールは、ここ数年で急速に普及した。HeidiはそのScribeを中核製品として展開してきたが、今回の資金調達はその次のフェーズを明確に宣言するものだ。
CEOのThomas Kelly氏は今回のリリースでこう述べている。
「Heidiを立ち上げた日から、目標はドクターズノートを書くことよりもずっと大きかった。AIが臨床医の隣に座り、その監督のもとで実際の業務をこなす——それが私が描いていた姿だ。今まさに、ケアを記録することから、臨床医がそれに基づいて行動することを支援する段階へとシフトしている。」
この「記録から行動へ」という転換が、今回の調達の核心にある。具体的には、診察後の処方提案、専門医への紹介状作成、検査オーダー入力の補助、フォローアップリマインダーの送信といった、これまで医師や医療スタッフが手作業で担ってきた臨床ワークフローをAIが能動的に支援することを指している。記録は「過去の出来事の文書化」にすぎないが、これらのアクション支援は診療の質と効率に直結する領域だ。
調達の規模と評価額
資金調達の内訳は以下の通りだ。
- シリーズC:1億ドル(Blackbird主導)
- グロース投資:2億4,000万ドル(General CatalystのCustomer Value Fund主導)
合計3億4,000万ドルのこの調達により、Heidiの評価額は9億ドルに達した。2025年10月のシリーズBで6,500万ドルを調達した際の評価額が4億6,500万ドルだったため、約1年で評価額がほぼ倍増した計算になる。
General CatalystのCustomer Value Fundは、従来のベンチャー投資とは異なり、投資先の収益成長に連動したリターン設計を特徴とする医療・社会インフラ領域特化型のファンドだ。同ファンドはすでに複数の医療テック企業に出資しており、Heidiへの参画はその医療AI戦略の一環と位置づけられる。ARR5,000万ドルに対して評価額9億ドルは株価収益倍率(PSR)換算で約18倍に相当し、医療AIスタートアップとしては高水準の評価といえる。
プラットフォームの現状
Heidiは現在、以下の4つのプロダクトを提供している。
- Scribe:診察内容をリアルタイムで文字起こし・記録
- Evidence:診療の場で医学研究・文献にアクセスできる機能
- Remote:音声キャプチャ用のハードウェア
- Dictate:音声テキスト変換機能
プラットフォーム開始から2年で、1億7,500万件以上の患者訪問、6,700万時間以上の臨床業務を支援。190か国・110言語で利用されており、年間経常収益(ARR)は5,000万ドルに達している。
今回の調達資金は、グローバルな医療機関への展開拡大、エージェント型AI機能の追加、および規制・臨床安全基盤の整備に充てられる予定だ。エージェント型AI機能とは、医師の指示を待つだけでなく、患者訪問前後の業務を自律的に検知・実行する仕組みを指す。たとえば診察内容から必要な検査オーダーを自動提案したり、次回来院のリマインダーをトリガーしたり、紹介状のドラフトを生成したりといった、一連の臨床ワークフローを医師の監督下でAIが能動的に処理するものだ。
競合が激化する医療AI市場——Heidiの差別化ポイント
医療現場へのAI導入は今や複数のプレイヤーが参入しており、Heidiはその中でどう立ち位置を築いているかが問われる。PYMNTSが4月に報じたところによれば、主な競合は以下の通りだ。
| プレイヤー | 主なアプローチ |
|---|---|
| OpenEvidence | 医療文献検索に特化したAI検索エンジン |
| OpenAI / ChatGPT for Clinicians | 汎用LLMベースの臨床支援 |
| AWS | 医療管理業務向けエージェントAI |
これらに対してHeidiが強調するのは、臨床現場での実績と独自モデルへの早期投資だ。Blackbirdのゼネラルパートナー、Michael Tolo氏は「Heidiは独自モデルとトレーニング基盤への早期投資により、世界で最も厳格な臨床環境における下流ワークフローを取り込む権利を獲得した」とコメントしている。文献検索や汎用対話を主軸とする競合と異なり、Heidiは190か国・1億7,500万件超の実診療データを基盤に、スクライブから臨床アクション支援までの一貫したワークフロー統合を目指している点が差別化の核心だ。
詳細はHeidi Lands $340 Million to Push Healthcare AI Beyond Notetaking to Actionを参照していただきたい。