9月22日、Digidayが「Comscore data shows how AI discovery is splintering beyond ChatGPT」と題した記事を公開した。「ChatGPTに最適化すれば十分」という前提で動いていたパブリッシャーやマーケターにとって、この記事が示すデータは見過ごせない警告となっている。AIからのトラフィックやリファラルを収益に結びつけようとする動きが加速する中、プラットフォームの分散は「どこで可視化されるか」という問いをより複雑にしつつある。
ChatGPTのシェアが70%→50%に急落
Comscoreが公開した「Q2 2026 AI Intelligence Report」によると、2026年1月から6月の間にChatGPTのプロンプトシェアは70%から50%に低下した。一方で競合は急速に勢力を拡大している。
- Gemini:シェアが17%から30%へほぼ倍増
- Claude:2%から11%へ急上昇
この調査はComscoreのオプトイン型パネルデータをもとに実施されており、回答者ベースは50万〜100万ユーザー規模だ。
重要なのは、ChatGPTのシェア低下がAI全体の利用縮小を意味しないという点だ。Comscoreのチーフアナリティクス&テクノロジーオフィサーであるSmriti Sharma氏は「AIアシスタントは集合的に消費者行動の一層を形成しつつあり、ユーザーはそれぞれのアシスタントと異なる関係を築いている」と説明する。パイ全体が拡大する中で、プロンプトが複数のプラットフォームに分散しているという構図だ。
実際の利用数で見ると、ChatGPTは2026年6月にデスクトップ会話数1億6800万件を記録し、マルチプラットフォームの訪問者数も1年前の5900万人から9900万人に伸びている。Claudeのデスクトップ会話数は2025年10月の110万件から2026年4月に約4000万件のピークに達し(その後6月には2230万件に落ち着いたものの、10月比で約20倍)、Geminiは過去1年で800万件から8900万件へと拡大した。
「GEO戦略」はマルチプラットフォーム対応が必須に
この分散が意味するのは、パブリッシャーやマーケターが取り組むGEO(Generative Engine Optimization:生成AIエンジン最適化)戦略の見直しだ。GEOとは、従来のSEO(検索エンジン最適化)になぞらえて、生成AI上での情報の見つけられやすさを高めるための取り組みを指す。
コンテンツマーケティング・SEOエージェンシー「iPullRank」の創業者でCEOのMichael King氏はこう指摘する。
「パブリッシャーは『ChatGPTにどう表示されるか』という問いを捨て、『自分たちの読者が実際にどこで質問しているか、そこに自分たちは表示されているか』を問うべきだ。アシスタントごとに可視性を計測し、読者がいる場所の比重を加味する必要がある」
King氏はプラットフォームごとの違いも整理する。「Geminiが伸びているのはGoogle、Android、Workspaceとのバンドルによるもので、チャットボットを探したわけではない一般ユーザーを取り込んでいる。Claudeはナレッジワーカーや技術系ユーザーの間で伸びている。異なる人々が異なる質問をしている」と分析する。これはソーシャルメディア黎明期に各プラットフォームが独自のユーザー行動と文化を形成していった構図に似ているという。
Google AI Overviewの拡大がパブリッシャーへの直撃弾
スタンドアロンのAIチャットボット以外にも、GoogleがPC向け検索結果の上部に表示するAI Overview(AIによる要約回答機能)の普及も見逃せない。
Comscoreのデータによると、AI Overviewが表示されたGoogleデスクトップ検索の割合は、**2025年7月の25.8%から2026年6月には39.4%**に拡大した。AI Overviewが増えるほど、Googleが検索結果ページ上でユーザーの質問に直接回答する機会が増え、パブリッシャーへのGoogle検索経由のリファラルトラフィックがさらに侵食される。
「使われること」と「引用されること」は別物
レポートが示すもう一つの重要な知見が、AIにソースとして使われることと、引用(citation)されることの乖離だ。
旅行情報サービスのTripAdvisorを例に挙げると、AIプラットフォームによる旅行関連のソーシング(情報参照)の**61%を占めているにもかかわらず、実際に引用されたのは21%**にとどまる。
Sharma氏は「AIに使われることとAIで可視化されることはイコールではない。かつてのSEOは『誰かが自分のサイトを見つけたか』を問うものだったが、今のAI計測は『AIが自分を使ったか、引用したか、推薦したか』を問うものになっている」と述べる。
King氏はAIの情報処理を2段階で説明する。「まずアシスタントが複数のサブクエリに展開し、広範なページを引き込む(ソーシング)。次にモデルが合成し、直接依拠した一部のパッセージにのみ引用を付ける。引用だけを指標にすると遅行指標かつ不完全な計測になる」。パブリッシャーはリトリーバルから引用、リファラル、収益までファネル全体を計測する必要があるという。
また、ソーシングで多く使われているにもかかわらず引用が少ない場合、それはライセンス交渉における最大の交渉材料になるとKing氏は指摘する。すでにForbesやTimeなどのメディアは、AI回答エンジンでの引用率を広告主への新たな価値指標として活用しようとしているが、プラットフォーム横断での計測手法はまだ統一されていない。
まとめ
ComscoreデータはAI発見(AI discovery)の地殻変動を可視化している。ChatGPT一強の時代は半年で大きく変わり、Gemini・Claudeへの分散が進む。パブリッシャーに求められるのは、単一のAIプラットフォームへの最適化ではなく、複数のアシスタントにわたる可視性の計測と、ソーシング・引用・トラフィック・収益をつなぐファネル全体の把握だ。
※編集部の考察:日本語メディアへの直接的な影響はまだ限定的だが、GEOという概念自体は国内でもほとんど認知されていないのが現状だ。英語圏でForbesやTimeがAI引用率を広告価値の指標として交渉に使い始めている動きは、国内の主要メディアが数年以内に直面するシナリオとして捉えておく価値がある。ChatGPT偏重のAI戦略を持つ国内パブリッシャーにとっては、今がGEO戦略をゼロから問い直す好機といえる。
詳細はComscore data shows how AI discovery is splintering beyond ChatGPTを参照していただきたい。