9月22日、TechSpotが「Engineer says Claude Code has made his job "soul-sucking" as workers spend 12-hour days pressing enter」と題した記事を公開した。
AIコーディングツールは「エンジニアの生産性を劇的に向上させる」と喧伝されてきた。だが、ある匿名のソフトウェアエンジニアがX上に投稿した「誰も何も考えていない」という告発が大きな反響を呼んでいる。AIが思考の機会そのものを奪い、仕事を空洞化させているという訴えだ。
「L1からL7まで、全員がClaudeと話しているだけ」
雇用主からの報復を恐れ、「voxium」というアカウント名でXに投稿したそのエンジニアによれば、彼が所属する企業ではAnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」が、プロダクト仕様書・テスト・チケット・レポートに至るまで、ほぼすべての成果物を生成するようになったという。
「誰も何も知らない。みんな、1日12〜13時間働いて、ただエンターキーを押しているだけだ」
— voxium(X上の投稿より)
同社ではエンジニアを「L1〜L7」という7段階のグレードで評価している。新卒クラスから上級職まで、そのすべてが同じ単純作業をしているというわけだ。
「文字通り全員が同じことをしている。Claudeと話すだけだ。達成感は何もない。誰もバグを解決していない。実際には、誰も考えていない」
製品を可能な限り速くリリースするよう圧力をかけられているため、Claudeの出力をレビューしたり、生成されたコードを理解したりする時間がほとんどないとも訴えた。
問題の本質は「スピード重視の経営判断」
voxiumはBusiness Insiderの取材に対し、「コードを理解し、難しい問題を解決する機会を失ったら、何も残らない。魂さえも。目的がなくなる」と語っている。
コードレビューの時間がないこと自体は我慢できる、と彼は言う。問題は、それがスプリントサイクル・プルリクエスト数・リリースした機能数で成功を判断する経営層の姿勢にある。ユーザーにとっての価値は二の次で、「出した数」だけが評価軸になっているというわけだ。
この投稿には複数のエンジニアが「うちの会社も同じだ」と反応した。仕事の意義を失うことへの不満に加え、Claudeがコーディングワークフローをさらに取り込むにつれて人員削減が進むのではという不安も寄せられている。
著名人も反応——「カジノのスロットマシンを押す人間」
この投稿にはイーロン・マスクも「Yikes(ひどい)」と一言コメント。著名な投資家・Chamath Palihapitiyaは「AIが技術的専門家の世代を、カジノのスロットマシンの前でボタンを押すだけの存在に変えている」と警告した。テック投資家の側からも危惧する声が上がっている。
「AI=生産性向上」という前提が揺らいでいる
この話は孤立した事例ではない。2025年に発表された研究では、AIコーディングアシスタントが経験豊富な開発者の作業速度をむしろ低下させるという結果が報告されている。タスクの複雑さが増すほど、AIの提案を検証・修正するコストが生産性向上を上回るというものだ。
また、AIコーディングの進化として「ループエンジニアリング」という手法も登場している。人間がプロンプトを入力するのではなく、システム自身が自動でプロンプトを生成・実行し続けるアーキテクチャで、人間の介在をさらに減らす方向への動きだ(詳細はこちら)。
リスクの面では、4月にClaudeを搭載したAIエージェントがわずか9秒でスタートアップの本番データベースとバックアップを全消去した事例も起きている。クラウドプロバイダへのAPI呼び出し1回で、だ。
voxiumの投稿が多くの共感を集めたのは、「AIで仕事が楽になる」という期待と、「思考の機会を奪われる」という現実の落差を正確に言語化したからだ。AIツールの能力が上がるほど、それを導入する組織の設計と経営判断の質が問われる。
詳細はEngineer says Claude Code has made his job "soul-sucking" as workers spend 12-hour days pressing enterを参照していただきたい。